2016年2月3日水曜日

アメリカが「社会民主主義」に変わる?! バーニー・サンダース民主党大統領候補ってどんな人?

アメリカが「社会民主主義」に変わる?! バーニー・サンダース民主党大統領候補ってどんな人?
格差是正・TPP反対・LGBT権利拡大を訴えチョムスキー、N・ヤング、レッチリらも支持
アメリカが「社会民主主義」に変わる?! バーニー・サンダース民主党大統領候補ってどんな人?
1月28日アイオワ州ルーズヴェルト高校にて、バーニー・サンダース民主党大統領候補 via Phil Roede's Photostream
2月1日アイオワ州での党員集会を皮切りに、11月8日に投開票が行われるアメリカ大統領選挙の候補者指名争いがスタートした。アメリカの主要メディアによると、共和党はドナルド・トランプ(69歳)がテッド・クルーズ上院議員(45歳)に敗北。民主党は集計率99%の時点でヒラリー・クリントン前国務長官(68歳)が49.9%、そしてバーニー・サンダース上院議員(74歳)が49.6%と大接戦の末、クリントンが勝利宣言を発表した。
「社会民主主義者」を自認するバーニー・サンダースは、格差是正やTPP反対、LGBTの権利拡大を訴え若者から高い支持を集めている。そしてニール・ヤングやサイモン&ガーファンクルのアート・ガーファンクルが自らの楽曲を選挙運動に使用することを許可しているほか、哲学者ノーム・チョムスキーやアーティストのシェパード・フェアリー、人気ロック・バンドのレッド・ホット・チリ・ペッパーズらもサンダース支持を表明している。
ポーランド系ユダヤ人の移民の子で、社会主義の実践を提唱するイスラエルの集団農業共同体「キブツ」で暮らしたこともあるという経歴を持つサンダースとはどんな人物なのか、彼のステイトメントと人気の秘密についてまとめた。
【政策】所得格差の是正、TPP廃止を掲げる
アメリカ国民は根本的な決断を迫られています。40年にわたる中流家庭の減少と、富裕層とその他の人々の格差を継続させるのか、それとも、雇用を増やし、環境を保護し、医療を全ての人に提供できるようにするために闘うか。
そして、億万長者の政治的権力と経済的便益を引き受ける用意ができているのか、それとも、経済的・政治的独裁に陥り続けなければいけないのか。それこそがもっとも重要な課題です。その答えは、この国の将来を決定します。(以上、バーニー・サンダース公式サイトのステイトメントより意訳)

【バーニー・サンダースが掲げる政策】

・最低時給を15ドルに上げる

・全国民の医療保障&社会保障制度の拡大

・公立大学の授業料無償化

・人種間の平等の実現と公民権の擁護

・警察法、刑務所法、薬品法の改正

・環境問題に取り組み、キーストーンXL計画(米大陸を横断する石油パイプライン計画)に反対する

・富裕層への課税&企業助成政策の廃止

・TPP反対&海外アウトソーシング反対

・崩壊しかかっているインフラの再建

・労働者が組合に入る権利を支援

・病気休暇中の保障を全労働者に

・有給休暇を全労働者に

・家族休暇・医療休暇を全労働者に

・男女の賃金平等化

・質の高い保育サービス

・子供の貧困と若年者失業の削減

・質の高い保育サービス

・子供の貧困と若年者失業の削減

・市民権獲得の道を開くための移民法の改正

・全国民の選挙権の保障

・政治家への企業による大口献金の禁止



■所得格差是正
「350万ドル以上を相続する0.3パーセントの富裕層を対象に『遺産税』を設けます。何百万ものアメリカ人が仕事、家と貯蓄を失う原因となったウォール街の投機家に対する税金も法制化します。そして若者の雇用プログラムに5.5億ドルを投資することにより、仕事に恵まれない若者のために1万人の雇用を生み出します」 
■TPP反対&海外アウトソーシング反対
「NAFTA(北米自由貿易協定)やCAFTA(中米自由貿易協定)、PNTR(対中正常通商法案)などが発効されてから、数百万人の労働者が失業しています。アメリカが製品を買ってほしいなら、この国で製造する必要があります」

■公立大学の授業料と学費ローンの無料化
「若者が両親の収入に関係なく、そして学費ローンの支払いで困ることなく大学で一生懸命学ぶことができるよう闘います。公立大学の授業料を無料化し、政府による学費ローンを停止させ、実質的な金利を引き下げ、必要であれば金利の低いローンに借り換えをすることができるようにします」

■金権政治の廃止
「私は民主主義を、候補が労働者や中流階級、低収入の人々、年輩者、子供たち、病人と貧しい者といった圧倒的多数の人々の声を代弁するためのもの、そして我々が全ての人のために生活を改善することができるか考えを話し合うことができることだと考えています。議会と国が金を使って選挙を管理していることを明らかにするために、憲法改正を提案します」

■LGBTの権利拡大
「多くの州ではまだ、同性愛者であることを理由に解雇することは合法です。トランスジェンダーであるために入居を断ることも合法です。こんなことは受け入れがたく、変えなければなりません。我々は全てのかたちで差別を終えなければなりません」


「TPPは、アメリカの大企業と製薬業界、そしてウォール街のために用意されたものだ。アメリカの労働者に、時給56セントのベトナムの労働者と競争して欲しいとは思わない」(2015年10月放映のNBCのインタビューより)

「私たちの仕事は、人々を分断するのではなく、ひとつにすることです」(応援動画「Vote TOGETHER For Bernie Sanders」より)

サンダースはバーモント州バーリントンの市長を4期16年務め、その後は連邦下院議員を8期16年、その後上院議員となり、2期目となる。1987年のバーリントン市長在任時にはフォーク・ソングをレコーディングしたアルバム『We Shall Overcome』をリリースしたこともある。


サンダース候補の主張は若者に支持されているのは、2011年の「オキュパイ・ウォール・ストリート」の流れを継承していること、オバマ政権に対する左派の不満が理由だと分析されている。


経済学者ロバート・B・ライシュは動画「バーニー・サンダース懐疑論者への回答」のなかで、「アメリカは社会主義者を選挙で選ばないのでは?」という疑問について「問題なのは“金持ちのための社会主義”なのだ」と指摘している。



Bernie Sanders at ISU - 1/25/2016
1月25日アイオワ州立大学にて、バーニー・サンダース民主党大統領候補 via Alex Hanson's Photostream
【賛同者】チョムスキー、ニール・ヤング、シェパード・フェアリーら各界著名人が支持
バーニー・サンダースの公式サイトでは、彼に賛同するアーティストおよび文化的リーダー128人が掲載されている。主なアーティストは以下の通り。
●ミュージシャン
ジェロ・ビアフラ(デッド・ケネディーズ)
ベリンダ・カーライル
ジョン・デンズモア(ドアーズ)
デヴィッド・クロスビー
レッド・ホット・チリ・ペッパーズ
サーストン・ムーア
ボニー・レイット
ジェフ・トゥイーディ(ウィルコ)
ハンス・ジマー など
●俳優
マーガレット・チョウ
ダニー・デヴィート
ゾーイ・クラヴィッツ
エズラ・ミラー
スーザン・サランドン
サラ・シルバーマン など


哲学者ノーム・チョムスキーも「私の見解では、現在の候補者のなかであれば、サンダースが最良の政策を持っている」と表明している。


2月5日にロサンゼルスのエース・ホテルで行われるバーニー・サンダースの応援ライブに出演するレッド・ホット・チリ・ペッパーズのフロントマン、アンソニーは「ヒラリーよりはバーニーが好きだな」と語っている。


サンダースのキャンペーンCMに「アメリカ」の使用を許可したサイモン&ガーファンクルのアート・ガーファンクルは、CNNの番組で「サンダースは富を持つ者と貧しい者の格差にとても怒っているところが好きだ」と彼を支持していることを明かした。



ニール・ヤングも2015年6月に「カナダ国民であるニール・ヤングは、アメリカ大統領候補のバーニー・サンダースを支持します」と明言。2015年6月デンバーでのサンダースの集会では、ヤングがドナルド・トランプに使用を禁じた「Rockin' in the Free World」をバックにサンダースが登場した。


アーティストのジェレミー・メリルが、ストリート・アーティストのシェパード・フェアリーによる代表的作品「Andre the Giant Has a Posse(アンドレ・ザ・ジャイアントはボスだ)」へのオマージュとして「バーニー・サンダースはボスだ」というイラストを発表。その後、シェパード・フェアリー自身も「彼は裕福で権力を持つ人たちではなく、普通の人々のために動いてくれる候補だと思う」とバーニー・サンダース支持を発表した。また、シェパード・フェアリーらアーティストが、サンダースをテーマにしたエキシビション「THE ART OF A POLITICAL REVOLUTION - ARTISTS FOR BERNIE SANDERS」を1月24日から31日までLAのギャラリーで開催した。
BERNIE SANDERS HAS A POSSE
▲アーティスト、ジェレミー・メリルによるバーニー・サンダースのイラスト


1月30日、アイオワで行われた支援コンサートに出演したヴァンパイア・ウィークエンドのボーカリスト、エズラ・クーニグは「サンダースは完璧ではない。しかし2003年に(税制優遇措置問題で対立した)アラン・グリーンスパンを怒鳴りつけたし、イラク戦争を支持しなかった」とツイートした。

▼バーニー・サンダース応援動画「Vote TOGETHER For Bernie Sanders」

▼NBCの番組「MEET THE PRESS」より

▼バーニー・サンダースの発表した1987年のアルバム『We Shall Overcome』より

▼経済学者ロバート・B・ライシュの動画「How to respond to Bernie skeptics? Watch our latest video to find out.」



▼サイモン&ガーファンクルの「アメリカ」が使用されたバーニー・サンダースのキャンペーンCM

▼1月23日、CNNの番組でインタビューに答えるアート・ガーファンクル

▼2015年6月デンバーでの集会より、ニール・ヤングの楽曲とともに登場するバーニー・サンダース

▼1月30日、アイオワでの応援イベントより、バーニー・サンダースのスピーチ(57:00より)

▼1月30日、ニューヨークでのバーニー・サンダース支持者による行進

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