2016年2月7日日曜日

160206神戸新聞:首相、改憲項目を参院選で明示 「自民党草案で」、衆院予算委

首相、改憲項目を参院選で明示 「自民党草案で」、衆院予算委

東京新聞 2016年2月5日 19時53分

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2016020501002135.html

 安倍晋三首相は5日の衆院予算委員会で、夏の参院選での争点化を目指す憲法改正の具体的な項目について「選挙では私たちの考えをしっかりと示していくべきだ。どこから変えていくかは、自民党の改憲草案で示したい」と強調した。改憲に関して首相が重ねて意欲を示した形だ。
 党の草案で9条2項に自衛権を明示し「国防軍」の保持を打ち出している点についても「自民党総裁である以上、同じ考えだ」と明言した。
 草案の9条をめぐっては「党全体の議論で、実力組織である自衛隊の存在をしっかり明記すべきだと考えた」と説明。「党の憲法に対する考え方を国民に理解してもらいたい」と語った。
(共同)

画像は20160206神戸新聞

2012年自民党改憲草案

第二章 安全保障
第9条(平和主義)
1 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動としての戦争を放棄し、武力による威嚇及び武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては用いない。
2 前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない。

第9条の2(国防軍)
1 我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする国防軍を保持する。
2 国防軍は、前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
3 国防軍は、第一項に規定する任務を遂行するための活動のほか、法律の定めるところにより、国際社会の平和と安全を確保するために国際的に協調して行われる活動及び公の秩序を維持し、又は国民の生命若しくは自由を守るための活動を行うことができる。
4 前2項に定めるもののほか、国防軍の組織、統制及び機密の保持に関する事項は、法律で定める。
5 国防軍に属する軍人その他の公務員がその職務の実施に伴う罪又は国防軍の機密に関する罪を犯した場合の裁判を行うため、法律の定めるところにより、国防軍に審判所を置く。この場合においては、被告人が裁判所へ上訴する権利は、保障されなければならない。

第9条の3(領土等の保全等)
 国は、主権と独立を守るため、国民と協力して、領土、領海及び領空を保全し、その資源を確保しなければならない。

以下解説
http://satlaws.web.fc2.com/0140.html

1項で「永久に」は削除されています。在外国民の保護については25条の3をご覧ください。
 2項について,Q&Aで「自衛権の行使には、何らの制約もないように規定しました」とされています。
 政府の9条解釈を紹介しておくと、1項で「国際紛争を解決する手段」つまり国策としての戦争、すなわち侵略戦争を放棄し、2項で自衛戦争も禁止され、自衛権行使は個別的であれ集団的であれ,一定の条件の下,国家の自然権として可能(そのための実力は2項の「戦力」に当たらない)というものです。草案の戦争放棄には「国際紛争を解決手段として」という限定が係っていないので、1項で自衛戦争も放棄したことになります。

 国防軍について、9条の2で法律によって内容を決められます。
 9条の2第3項で公の秩序を維持する活動が憲法上可能となり、国内の表現規制等の治安維持活動を国防軍が行うことになります。
 9条の2第5項の「審判所とは、いわゆる軍法会議のことです。」「裁判官や検察、弁護側も、主に軍人の中から選ばれることが想定されます。」とQ&Aにあります。最終的には76条2項により通常の裁判所に上訴できるはずですが、9条の2第5項では検察官の上訴権が抜けていることは事実です。

 9条の3「国民と協力して」は国民が国防しなければならないことを前提とした規定になっています(総論、前文3項、25条の2、102条1項参照)。明確に国民の義務という文言になっていない点につき、Q&Aは「徴兵制について問われることになるので、憲法上規定を置くことは困難であると考えました」としています。「問われることになる」との文言の意図が明確ではありませんが、2通りの読み方を指摘しておきます。ひとつは、国民の国防義務を明確に書きたいけれども、徴兵制をやれるようにしたいわけではないので書けない、という読み方です。もうひとつは、徴兵制について正面から争点になってしまうのは不都合であるので、憲法には明記せず、もし必要なときがくれば法律で徴兵できるような曖昧な条文にしておく、という読み方です。


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