2016年1月28日木曜日

安保法が意味するもの JR東海名誉会長・葛西敬之


安保法が意味するもの JR東海名誉会長・葛西敬之
「改革」あれこれ2015.9.28 10:00

http://www.sankei.com/smp/column/news/150928/clm1509280008-s.html

 民主党などの空疎な「徹底抗戦」の果てに安保法制が成立した。2つの大きな意味があったと思う。第1は集団的自衛権の行使を可能ならしめたことにより、21世紀日本の安全と平和の礎石が据えられたことである。

 戦後70年、日本は完全な平和を謳歌(おうか)し、奇跡的な経済発展を遂げた。そのエポックとなった決断が昭和35(1960)年の日米安保条約改定である。駐留米軍は同盟軍になり、日本を防衛する義務を負った。米国に全てを任せ切った受動的な同盟国としてではあったが日本は自由主義陣営に加わったのである。

 当時私は大学2年生だったが学内でも街頭でも安保反対運動が荒れ狂っていた。彼らは社会主義陣営に共感し、日米安保は憲法違反だ、非武装中立こそ日本の取るべき道だ、安保は日本を米ソの戦争に巻き込む等と主張していた。一方「物言わぬ多数」は生活実感を踏まえて自由主義に与(くみ)していた。条約が批准されると世の中は急速に沈静化し、それから半世紀、日本は完全な平和と奇跡の繁栄を謳歌したのである。ソ連(当時)は崩壊し社会主義は失敗し、歴史が安保反対論の虚構を証明した。

 米ソが互いを破壊し尽くせる力を持って対峙(たいじ)した結果、戦うことなくソ連が崩壊し冷戦は終了した。この究極の勢力均衡が生む抑止力の傘下にあるものは武力紛争に巻き込まれない。米ソ冷戦の歴史と日本の完全な平和がこの定理を証明している。

 いま20世紀の冷戦体制は終了したが、21世紀の枠組みはまだ見えていない。しかし中国が軍事大国化したことと、米国の力が相対化し、日米同盟による抑止力を維持するためには日本にも一定の貢献が求められるようになったことは確かである。

 この現実に立って日本の平和と安全を考えるならば、「積極的平和主義」による日米同盟の抑止力維持は不可欠である。中国は日米同盟が不動のものであると認識したときに初めて合理的で友好的な隣国となるだろう。逆に分断可能と見れば中国は勢力拡大を図って介入してくる。今回の安保法制により日本は平和と混迷の分岐路を正しく渡ったのであり、正に平和な21世紀のためのエポックだったと思うのである。

 第2には辛くも議会民主制の基本が守られたことである。議会民主制は憲法に定められた選挙によって選ばれた多数に任期中の政策決定・遂行を委ねる制度である。安保法制は昨年の総選挙の時点で既にその大綱が閣議決定されており、与党は国民の圧倒的信任を受けている。

 一部の人々が安保法制は憲法違反だ、戦争法案だ、とか、徴兵制が復活する等と、60年安保時と同じ陳腐な観念論を唱えたが、盛り上がりは乏しかった。一部メディアが誇大に報道して世論を煽(あお)ると反対派はそれに乗じて正当な信任を覆そうとした。議会民主制に対する破壊行為とも言うべきことだった。

 政府与党は隠忍自重した上で最後に議会民主制の基本に立ち還(かえ)り、民主主義と法治主義の日本を守ったのである。続く5連休は秋晴れ、日本中が行楽に賑(にぎ)わった。(かさい よしゆき)

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