2016年1月11日月曜日

「全員正社員、待遇格差なし」を実践 イケア・ジャパン人事本部長に聞く

  

中日新聞 2016年1月11日
http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2016011102000004.html

 雇用形態の違いによる待遇格差を是正するために、職務が同じなら同じ給与にする「同一労働同一賃金」の導入が必要とされている。正社員とパートの区別をなくし、すべての従業員に労働時間に応じた給与を支払う制度を1年前に導入した北欧家具・インテリア製造販売「イケア・ジャパン」の泉川玲香・人事本部長に、導入の狙いを聞いた。

 -日本の企業は、正社員と非正規雇用の間に大きな待遇格差がある。

 イケアは、すべての従業員をコワーカー(ともに働く人)と呼んでいます。皆がいわゆる正社員で、雇用期間の定めがない、無期雇用です。このうち、子育てや介護などのため短時間勤務を選んだのは約千七百人。週に十二時間働く人も、フルタイム(同社の週労働時間三十九時間)の人も、待遇は平等です。

 -パート従業員も無期雇用なのか。

 以前は雇用期間が六カ月や一年のパートがいましたが、期待する水準に達した人は正社員と同じように無期雇用にすることにしたら、結果的に99%がコワーカーになりました。

 -なぜ無期雇用に?

 有期雇用の人の契約を切ることは以前もほとんどありませんでしたが、働く側は「契約を切られたらどうしよう」と心配になるのが普通です。それではいい仕事ができません。永久にここで働けると思っていただき、会社と労働者の長期的な関係性を持ちたいと考えています。

 人生では、子どもを産んだり、介護をしたりして短い労働時間にしたい時期もあれば、長く働けるときもある。それぞれのライフステージに合わせた働き方をしてほしい。

 -待遇の平等とは何を指すのか。

 全員が社会保険(厚生年金、健康保険など)に加入し、ボーナスや有給休暇、退職後に支給される個人年金は、労働時間に応じて金額や日数の差が出るだけです。短時間勤務でも社長との待遇格差はありません。

 -基本給に住宅手当や家族手当などが足される給与体系ではないのか。

 手当はありません。短時間勤務では、同じ職務に就いているフルタイムの人が受け取る額を時給換算します。たとえば、週十二時間契約の場合は、フルタイム勤務者の「39分の12」になります。どの契約時間でもこのように計算します。

 -その他の効果は?

 ポジションによって、やらなければならない仕事は決められていますが、以前は仕事が不十分であっても、現場は「パートだから仕方ない」と見なす雰囲気がありました。今は全員がコワーカーになったので、会社が求める職務水準は同じになりました。

 -会社の人件費負担は増したのか。

 短時間勤務が七割ですから、会社としてはかなり大きな投資です。しかし、新しい店を建てるのと同じように、コストではなく、投資だと考えています。同一労働同一賃金をやりたくてやったというよりは、平等や、それぞれの生き方を尊重したいと考えました。人の成長は、イケアの成長につながると信じています。

(聞き手・稲熊美樹)

 <イケア・ジャパン>スウェーデン発祥の会社で、日本では2002年創業。国内は8店舗で従業員約2700人(昨年11月時点)。もとはパートと正社員は別の賃金体系だったが、15年に同一労働同一賃金を実現。本社は千葉県船橋市。

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