東芝 数千億円規模の損失計上へ

経営再建中の大手電機メーカー東芝は、アメリカを拠点とする原子力関連の会社で、新たに数千億円規模に上る損失を計上する見通しになったことが明らかになりました。主力事業の巨額損失で東芝は資本の増強を含めた抜本的な経営の立て直しを迫られることになりそうです。
東芝のグループでは、去年、アメリカにある原子力事業の子会社、「ウェスチングハウス」が原子力関連の建設などを請け負うアメリカの会社「CB&Iストーン・アンド・ウェブスター」を買収しました。

関係者によりますと、この会社の収益状況をもとに資産価値の見直しを進めた結果、東芝は今年度(2016年度)のグループ全体の決算で巨額の損失を計上する見通しになったということです。損失は、数千億円規模に上る見通しで、精査の状況によっては5000億円規模に達するおそれもあり、詰めの作業を急いでいます。

東芝のアメリカの原子力事業をめぐっては、昨年度(2015年度)の決算で、ウェスチングハウス本体の資産価値を見直した結果、およそ2600億円の損失を計上しており、原子力関連の事業で巨額の損失が相次ぐ異例の事態となっています。

東芝は去年発覚した不正会計問題を受け経営を立て直すため、原子力事業を半導体事業とともに事業の柱として位置づけてきました。しかし、今回、巨額の損失を計上する事態になったことで、東芝は資本の増強を含めた抜本的な経営の立て直しを迫られることになりそうです。

昨年度も巨額の損失

東芝が、アメリカの大手原子力プラントメーカー、「ウェスチングハウス」を買収したのは、世界的に原発の需要が拡大していた2006年、平成18年です。イギリスの会社から東芝などが54億ドル、当時のレートで6000億円余りで買収し、このうち、東芝はウェスチングハウスの77%の株式を保有し、傘下におさめました。

原発のプラントは、「沸騰水型」と「加圧水型」の2種類があり、東芝は「沸騰水型」のプラントを手がけていましたが、この買収によって、「加圧水型」の技術も獲得することになりました。買収の調印後に行った記者会見で、当時の西田厚聰社長は、「原子力発電の分野で世界をリードする。投資は15年から20年で回収する」と述べ、強い自信を示しました。

東芝の傘下に入ったウェスチングハウスは、2年後の2008年、平成20年には、アメリカで大型の原発2基の建設を受注するなど、順調に滑り出したかに見えました。しかし、不正会計の問題が明らかになったあとの去年11月、東芝は、それまで業績を開示していなかったウェスチングハウスについて、突然、巨額の損失を計上していたことを明らかにしました。

その内容は、2012年度からの2年間で、およそ1100億円の減損処理を行っていたことや、ウェスチングハウス単独でも最終損益が赤字に陥っていたというものです。その理由は、東京電力福島第一原子力発電所の事故のあと、事業環境が厳しくなったため、一部の事業の資産価値を低く見直したという説明でした。さらに、昨年度のグループ全体の決算では、資金調達のコストが上昇し収益が圧迫されているとして、2600億円の損失を計上しています。

CB&Iストーン・アンド・ウェブスターとは

「CB&Iストーン・アンド・ウェブスター」は、アメリカの建設会社で原子力関連の設備の整備などを手がけています。去年12月に東芝のグループ会社のウェスチングハウスがこの会社の株式をすべて取得して買収し、完全子会社にしました。

アメリカの証券取引委員会に提出された資料によりますと、買収額は2億2900万ドル、現在の為替レートで見ると、日本円でおよそ270億円となっています。これによって、東芝はアメリカで原子力発電所を建設するプロジェクトを一元的に管理する体制を整えることができたとし、売り上げは、年間で少なくとも2000億円程度、増えると見込んでいました。