小林よしのり
BLOGOS 2017年01月20日
http://lite.blogos.com/article/206527/
最近、東京新聞が面白い。
1月19日「英国はどこへ行くのか」という見出しで社説を書いている。
イギリスがEU市場に残留するということは、移民の流入を認めなければならない、移民に自国民と同様の手厚い社会保障を適用しなければならないと、この社説は正直に解説する。
「EU法によって英国民ではなくEU市民となることを一方的に迫られるのである」とも書いている。イギリスは主権回復の道を選んだのだ。
特にこの社説で驚いたのは、「自由貿易は『善』、保護主義は『悪』とする新自由主義経済を謳歌してきたのが米英両国だ。そこでいち早く揺り戻しが起こった意味を考えるべきだろう」
と書いていることだ。
この態度は、朝日新聞とも、産経新聞とも違う。
「行き過ぎたグローバル化は格差を生み、先進国の賃金を下げ、雇用を奪った」と正確に書いている。
「賃金水準や雇用の安定化を図る合理的な保護主義があっていいのではないか」とまで踏み込んで書いているのだから素晴らしい。
毎日新聞などやめて、東京新聞を取るべきでしょう。
歴史認識や憲法・国防では左翼っぽいが、その他の問題では、うなずくことが大変多い。
他のどの新聞とも違うのは「権力のポチ」ではないという特色である。
これはメディアの最も重要な価値なのだ。
EU市場脱退へ 英国はどこへ行くのか
2017年1月19日 東京新聞【社説】
http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2017011902000128.html
英国は経済の生命線であるEU市場にとどまるよりも、国民投票で示された移民制限など主権回復を優先させる道を選んだ。トランプ米大統領誕生とも通底する英国の決断の意味を見つめるべきだ。
EU市場は域内人口が五億人を超え、米国と比肩する経済規模だ。関税なしで貿易でき、人やカネの往来も自由で規制やルールが同じ単一市場は計り知れない経済上のメリットがある。
英国は世界の金融センター、シティーを有し、この巨大な単一市場にいるがゆえに世界中から企業や資本が集まり、発展を享受してきた。ドイツに次ぐ欧州連合(EU)第二の経済大国となり、貿易もEU市場が五割近くを占める。
それでもメイ首相は十七日の演説で「欧州単一市場にとどまることはできない」「部分的にEUのメンバーになるような中途半端なことは目指さない」と宣言した。EUからの完全撤退である。
それはなぜなのか。EU市場に残留するかぎり、人の自由な移動、つまり移民の流入を認めなければならない。自国民と同様の手厚い社会保障を移民にも適用しなければならない。EU法によって英国民でなくEU市民となることを一方的に迫られるのである。
昨年六月の国民投票の民意は逆だった。僅差ではあったが、自国民の雇用を奪う移民の流入を制限し、EU法やEU官僚から主権を回復すべきだとの声だった。
自由な経済活動によって国が富み、国民は恩恵を受けるはずだった。しかし、実は疎外された人たちが多かったのだ。富裕層や権力者らばかりが利益を享受することに労働者、中間層の不満は募った。それが「予想外の結果」を生んだのは米大統領選と類似する。
自由貿易は「善」、保護主義は「悪」とする新自由主義経済を謳歌(おうか)してきたのが米英両国だ。そこでいち早く揺り戻しが起こった意味を考えるべきだろう。
本来、自由貿易は経済成長を促し、その果実で痛みを受けた人を支援するのが理想だが、そうはならなかった。行き過ぎたグローバル化は格差を生み、先進国の賃金を下げ、雇用を奪った。
トランプ次期米大統領が就任前から打ち出した国境税や企業の生産拠点への強引な介入は「悪い保護主義」だが、賃金水準や雇用の安定化を図る合理的な保護主義があっていいのではないか。英国の離脱交渉は、新たな経済モデルを問い直す試金石となるだろう。
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