「女性はお飾り」を毎年強調する東証大発会の昭和感
山田道子 / 毎日新聞紙面審査委員 2017年1月16日
http://mainichi.jp/premier/business/articles/20170112/biz/00m/010/020000c?inb=tw
年明け早々、こんな古典的な文句を言うのも気がひけるのだが、4日の夕刊各紙に載った東京証券取引所の大発会の写真。晴れ着姿の若い女性がずらりとならんでほほ笑んでいる。
日経新聞の夕刊だけは「晴れ着姿の女性や市場関係者らが参加して行われた大発会」との写真説明で、壇上でおじさまたちが拍手する姿を正面にとらえて着物の女性は後ろ姿。気を使っていることはうかがえたが、これはこれで東証のメインプレーヤーは男性、女性はお飾りという関係を表していた。他紙は女性がメイン。株価が表示された電光掲示板はほとんど映っておらず、女性がアップという写真を載せている紙面もあった。
この女性たち、東証や証券会社の社員の希望者、それに着物会社の顧客の女性だという。だが、いまだにある地方の銀行の女子行員が、上司から「仕事始めに着物を着てこい」と言われたという話を聞いた。髪の毛を結ってもらう美容院代や着物のレンタル代は会社から出るのだろうか--女性たちの持ち出しだったら、昨年末大ヒットしたドラマ「逃げるは勝ちだが恥だが役に立つ」で話題となった「搾取」ではないか。
社会学者の上野千鶴子さんが1982年に出した「セクシィ・ギャルの大研究-ー女の読み方・読まれ方・読ませ方」という本を思い出した。500枚以上の商業広告をもとに男性が振り付けた「女らしさ」を分析。男たちが広告の中の女性モデルの性的姿態に誘われ、そのモデルが指示する商品を「自分のものにしよう」と購買につなげる狙いがあることなどを解明している。
「世相ブラ」を取り上げるメディアも……
男性が優位に立ち経済力がある世の中では、広告・宣伝と女性が結びつきやすいのだ。その意味であまりにも直裁で愉快でない例がもう一つある。某下着メーカーが発表する「世相ブラ」。その時々の社会的イベントや流行語をブラジャーで表現するものだ。例えばサッカー・ワールド杯では「カップ」をブラのカップにひっかけたり、「マイ箸」ブラはカップの一つがご飯を持った茶碗を模したりした。
1996年5月の羽生善治名人の7冠をたたえた「将棋ブラ」は、実寸大の王将のコマが胸の谷間にアクセサリーであしらわれ、コマに触れると内側につけられたスピーカーが「ウーン参った。やっぱりあなたは一番強くて」という合成音が聞こえてくるとの説明だった。
1996年5月16日付の毎日新聞東京朝刊
これが新聞記事になったのには驚いた。さすがに最近はこの手の世相ブラの記事が経済面に載ることがなくなったが、生き残ったのは東証の大発会のようだ。いまだに女性は飾りもの、若くてきれいなほうがいいという価値観を臆面もなく振りまいているのは珍しい。東証に上場している企業には、政府が音頭を取る男女共同参画に沿って女性登用の計画を作っているところが多いだろうに。
このような時は「人種」で考えるとよく分かる。例えば、アメリカの何らかのオープニングパーティーで黒人だけを着飾らせて拍手させるというシチュエーションがあったらどうか。あるいは、東証の若いイケメンが羽織はかま姿で大発会に並んでいる光景を想像できるだろうか。
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