2016年12月12日月曜日

161211毎日新聞 TPP承認 次へ備えたステップに

TPP承認 次へ備えたステップに

毎日新聞 
 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)が参院本会議で可決、承認された。
 保護主義を唱えるトランプ次期米大統領が離脱を明言し、発効は困難な情勢だ。しかし、日本として自由貿易を推進する姿勢が変わらないと示したことには意義がある。
 国会承認を踏まえて政府はトランプ氏に翻意を働きかけてほしい。同時に他の自由化交渉も進め、自由貿易体制の再構築を目指すべきだ。
 政府は当初、今国会でTPPの承認を得て、米国の手続きを後押しすることを狙った。だが、トランプ氏の大統領選勝利で状況は一変した。

 承認に反対の野党は審議続行を批判した。安倍晋三首相は「審議をやめれば、TPPは終わる」との認識を示し、トランプ氏と「腰を据えて協議したい」と語った。
 首相は成長戦略の柱の一つにTPPを据えてきた。簡単にあきらめたくないという思いもあるだろう。しかし、そうした政治的思惑を超えた意義をTPPは持つ。
 12カ国が参加するTPPは貿易や投資で高水準の自由化を図る。アジア太平洋地域の包括的な通商ルールとなり、域内全体の成長に資する。
 トランプ氏はTPPの代わりに2国間協定を結びたい考えだ。「米国第一」という主張を踏まえると、米国に都合のいい要求を突きつけてくる可能性がある。また、TPP参加国には米国抜きの発効を求める声もある。いずれも、アジア太平洋地域に高度な共通ルールを導入するTPPの趣旨を骨抜きにしてしまう。
 日本は、今回の承認をステップにしてTPP以外の自由貿易交渉も加速し、トランプ氏に再考を迫れる環境を整えるべきだ。
 別の自由化の枠組みとして東アジア地域包括的経済連携(RCEP)がある。中国が主導し、日韓やインドなど16カ国が交渉中だ。米国は加わらず、自由化目標は低い。日本は水準を高める役割も担ってほしい。
 日本は欧州連合(EU)との経済連携協定も年内の大筋合意を目指している。日本の農産物関税などで対立点が残るが、大局的観点から前進させる必要がある。
 一方、TPPは承認されたが、農業対策では課題を残した。自由化に対する農家の不安は根強い。TPP発効が難しくても自由貿易交渉を進めるうえで対策は欠かせない。
 国会審議でも焦点となったが、トランプ氏への対応に質疑が集中し、問題点が掘り下げられなかった。
 政府は農家の所得向上策として全国農業協同組合連合会(JA全農)の改革案を決めたが、実効性に疑問が残る。農業強化の将来像を明確にして懸念解消に努めるべきだ。

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