2016年9月17日土曜日

160917 朝日新聞 沖縄知事、完敗判決に「あぜん」 辺野古埋め立てめぐり

沖縄知事、完敗判決に「あぜん」 辺野古埋め立てめぐり
2016年9月17日 朝日新聞
http://digital.asahi.com/sp/articles/ASJ9J454QJ9JTIPE00W.html?rm=755

辺野古訴訟、国が勝訴 知事の承認取り消し、高裁認めず
特集:沖縄はいま
 「これまで地方自治や民主主義を守ろうと話してきたが、三権分立という意味でも大きな禍根を残すのではないか」。福岡高裁那覇支部の判決後に会見した翁長氏は、用意したコメントを読み上げる前に、感情を押し殺すように話した。「あぜん」という言葉を何度も繰り返し、上告期限の23日までに「上告する」と明言した。
 県庁内でも、敗訴自体への覚悟はあった。埋め立て承認はそもそも県自身が認めたもの。知事が代わったとはいえ、県自らが「あの承認は誤りだった」として取り消すことが認められるには「ハードルは低くない」(県幹部)との受け止めが主流だった。ただ、判決内容は、承認の取り消しの要件といった法律論にとどまると想定していた。
 しかし下された判決は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設計画の妥当性にまで踏み込んだ。「(北朝鮮の中距離ミサイル)ノドンの射程外となるのは、我が国では沖縄などごく一部」といった沖縄の「地理的優位性」や、「海兵隊の航空基地を沖縄本島から移設すれば機動力、即応力が失われる」など、国側の主張をほぼそのまま認定。「(辺野古の)埋め立て事業の必要性は極めて高い」と指摘した。
 「辺野古反対は県民の民意」という翁長氏の訴えに対しても「(辺野古に)反対する民意には沿わないにしても、基地負担の軽減を求める民意に反するとは言えない」とした。翁長氏を支える与党県議の一人は「政治家以上に政治家のようなことを言った判決だ」。
 ログイン前の続き翁長氏は「確定判決には従う」と明言しており、最高裁で敗れれば承認取り消しの撤回には応じる方針だ。ただし、県幹部はすでに、その後への備えを各部署に指示。「次の手」の洗い出しを始めている。
 その一つが、知事権限をフル活用して徹底抗戦を続ける案。例えば、裁判に負けて埋め立て承認の効力が復活しても、国がその後、工法や設計の変更申請をしてきた場合、翁長氏が承認しなければ工事を続けられなくなる。県幹部によると、来年3月末で期限が到来する海底の岩礁破砕許可を更新しないことなども検討されているという。
 翁長氏は会見をこう締めくくった。「辺野古に新基地は絶対に造らせない。長い長い闘いになろうかと思う」(吉田拓史)
■政権「国の主張認められた」
 「国の主張が認められたことは歓迎したい。問題の根源は普天間の危険除去と固定化を避けることだ」。菅義偉官房長官は「国勝訴」の判決が出た後の記者会見で、そう胸を張った。
 安倍政権は普天間の移設計画を進めるため、最終的に最高裁で勝訴し、司法のお墨付きを得たうえで来春にも辺野古の埋め立てを再開するシナリオを描く。法務省幹部は今回の高裁判決について「国の主張がみんな認められた」と分析。首相官邸の幹部は、来年2月ごろと想定する最高裁の判決にも「国が負けることはない」と自信を深める。
 政権は、普天間以外の基地で負担軽減を進める姿勢をアピールし、翁長氏に揺さぶりもかける。特に力を入れるのが、沖縄県東村高江周辺で進められているヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の移設工事だ。ヘリパッド移設は、同村などにある米軍北部訓練場の一部を返還する条件となっており、「返還が実現すれば、県内の基地面積が約2割減少する」と強調。官邸幹部は「基地負担の軽減が進めば、翁長氏は辺野古移設で抵抗を続けるのが難しくなるだろう」と指摘する。
 ただ、政権の足元も盤石ではない。
 「注文はたった一つ、早く片付けてほしいということに尽きる」。鶴保庸介・沖縄・北方担当相は16日午前の記者会見で、こう発言した。移設を急ぐ政権の強硬姿勢を反映した発言とも受け取られかねず、沖縄側の反発を招く可能性もある。
 8月の内閣改造人事では鶴保氏をはじめ、沖縄の基地政策に携わる顔ぶれが交代。これまで沖縄の基地問題には深く関わってこなかった稲田朋美防衛相の起用には、沖縄側から警戒の声も上がる。官邸幹部は「県民の理解がなければ基地問題の決着は難しい。丁寧に手順を踏みながら、埋め立て工事を軌道に乗せたい」と話す。(山下龍一)
■沖縄県が取り得る「承認取り消し」以外の主な対抗手段
・埋め立て工事の工法や設計の変更申請を認めない
・来年3月に切れる埋め立て海域の「岩礁破砕」許可を更新しない
・工事の前提となっているサンゴの移植を認めない
     ◇
■三好規正(のりまさ)・山梨学院大法科大学院教授(行政法)の話
 分権改革によって国と地方自治体は対等な関係に位置づけられたが、その観点が欠落している。公有水面の埋め立てが適切かどうかの審査も知事に幅広い裁量権があるのに、判決は「裁量権があるのは国。知事はそれに従いなさい」という考えだ。一般論では知事は埋め立てをめぐり国防・外交に関する審査もできると言及しつつ、その余地もほとんど認めなかった。知事は専門家を入れた検証を経て埋め立ての承認を取り消したが、裁判所の審理は論証が粗い印象だ。
     ◇
■仲地博・沖縄大学長(地方自治論)の話
 辺野古の基地建設をやめれば普天間飛行場による被害が継続すると明言し、沖縄の「地理的優位性」を認めるなど、国の言い分をそのままのんだ判決。沖縄に米軍基地があることを当たり前のことと疑わない態度は「構造的差別」と言われるが、その差別も追認した形だ。沖縄の平和と環境保全、自治への配慮は見られない。判決が、辺野古移設に反対する県民の運動に及ぼす影響は限定的。これにより運動が停滞する可能性は小さく、むしろ結束を強める作用を持つだろう。「辺野古か普天間か」という二者択一を県に迫っているような内容で、県敗訴の判決を書くのにここまで言及する必要があったのか。

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