2016年3月20日日曜日

160317毎日新聞「民主・維新・共産・生活・社民」VS「自民・公明」 「野合」って何ですか?

「民主・維新・共産・生活・社民」VS「自民・公明」 「野合」って何ですか?

毎日新聞 
http://mainichi.jp/articles/20160317/dde/012/010/003000c

シールズの奥田愛基さん(右端)と、安保関連法廃止と選挙協力で野党共闘をアピールする4党幹部=東京・JR新宿駅東口前で13日
シールズの奥田愛基さん(右端)と、安保関連法廃止と選挙協力で野党共闘をアピールする4党幹部=東京・JR新宿駅東口前で13日

 安倍晋三政権を支える自民党の野党批判がとまらない。民主と維新の合流新党は「理念なき野合」、参院選に向けた野党5党の統一候補は「選挙談合」と。野党が一致して求めるのは安全保障関連法の廃止だが、これを理念や政策と認めない姿勢だ。そこまで言うなら問い返したい。与党の自民と公明はどうなのか。そもそも野合って何ですか?【堀山明子】
 「野党は共闘」「選挙に行こう」。日曜日の13日、買い物客でごった返す東京・新宿駅東口で、野党4党のゲストスピーカーを招いた集会でラップ調の軽妙なコールが響いた。マイクを握るのは、昨年夏の安保法案に反対する国会前デモで注目された大学生グループ「SEALDs(シールズ)」の奥田愛基さん(23)。「市民が野党共闘を呼びかけても無理だって言われたけど、でも、できちゃった。新しい政治をつくろう」。野党5党が安保関連法廃止と選挙協力を確認した2月19日の合意は、市民団体が動かしたという自負が言葉ににじんでいた。
 これに野党の側も呼応した。登壇した維新の初鹿明博国対委員長代理が「維新の寿命はあと2週間。政党名なんかどうでもいい。大切なのは、まとまって安倍政権を倒すことだ」と民主党と合流する新党の意義を訴えると拍手がわいた。ちょうど土日、新党名を決める世論調査が行われている最中だったが、両党本部のまとまらない議論には触れず、すでに新党が結成されたかのような口ぶりだ。共産党の志位和夫委員長は「野党共闘は皆さんの声に押されてここまで来た」と市民運動あってこその共闘と力説した。
 実際、シールズなど安保関連法に反対した5団体は昨年12月に「市民連合」を結成して以来、野党共闘を各党に働きかけるだけでなく、統一候補擁立にも直接かかわってきた。この日の集会は市民連合に加わった団体が主催し、3500人(主催者発表)が参加した。プラカードは「立憲民主主義を守れ」など、安保関連法反対を機に始まった標語が目立つ。昨年夏と違って新しいのは「Go Vote(選挙に行こう)」だ。
 茨城県古河市から高校1年生の娘と2人で集会に初参加し、「Go Vote」の紙を手に演説を聴いていた女性会社員(39)は「国会前デモに参加したことがなかったので、集会を一度見てみたかった。民主党の政権交代より今のほうが、市民が主体で政治を変えなければという気持ちの高揚がある」と語った。

 シールズ関西のメンバーで関西学院大学4年の寺田ともかさん(22)は「国会前デモで訴えた国民の声がちゃんと届く政治にしたいという思いが、野党共闘への力になった。デモに抵抗がある人も選挙には行く。政党は党のプライドより国民の声を聴いて方針を決めてほしい」と語る。
 国会前デモから野党共闘支援運動へ、市民の声は脈々とつながっている。安倍政権に、その声は届いているのだろうか。

「民共合作」と批判するけれど…与党にも矛盾

 「野党統一候補=民共合作候補」。今月作成された自民党広報ビラにはこんな見出しが赤字で強調され、野党共闘は「『理念なき民主党』と『革命勢力・共産党』の打算、選挙談合以外の何ものでもありません」と解説する。「民共合作」は、日中戦争当時、抗日戦線での協力を優先し、対立していた中国の国民党と共産党が手を組んだ「国共合作」に絡めて皮肉った表現だ。安倍首相も「民共合作」という表現こそ使わなかったが、13日の自民党大会で「民共勢力との戦いになる」と野党共闘に加わる共産党の存在を際立たせてけん制した。
 また、自民党の谷垣禎一幹事長が「選挙のためだけに大同団結すると、野合のそしりは免れない」と語ったほか、参院選や衆院補選に向け動きが活発化している各選挙区でも、候補者一本化を図る野党に対し、与党側が「野合」のフレーズを使って批判するケースが目立つ。
 「政権が立憲主義をないがしろにする状況に危機感を持ち、野党共闘を求めた市民の存在が見えていない。『民共合作』なんて聞くと、やはり安倍政権は聞く耳がないのだと腹が立ちます。保育園に落ちたママの声を当初は無視したのと、根っこは同じ」と話すのは、熊本県の「安保関連法に反対するパパママの会」共同代表を務める滝本知加さん(33)だ。
 参院熊本選挙区では昨年12月、全国に先駆け、市民が擁立する形で野党統一候補が決まった。「利害が対立し話し合いができなかった政党や労組を市民が橋渡しし、連携できる状況をつくった」と言う。
 野合批判に対し「市民連合」で中心的役割を果たす上智大の中野晃一教授(政治学)は「憲法9条堅持、自衛隊の国際貢献は加憲で慎重に検討するという公明が、解釈改憲で米国の戦争に協力しようとする自民党と連立することこそ野合ではないか。自公に比べれば、野党共闘は国家権力の暴走を止める方向性では一致している」と指摘する。「民共合作」との批判には「国共合作の抵抗に遭った大日本帝国は戦争に負けた。その歴史を分かっていて自民は使っているんですかね」。

「安保法制廃止」一致で十分、風頼みには危うさ

 そもそも野合とは何か。野合でない政党協力はどこにあるのだろうか。
 「国会共闘、民意をつかむ参院選、政権選択を行う衆院選……政党協力にはさまざまなレベルがあり、それに見合った政策の合意ができているかが重要。優先順位の低い政策の違いをあげつらって野合と批判するなら、すべての政党協力が野合になってしまう」。現代日本政治論専攻の一橋大学の中北浩爾教授はこう話し、次期参院選の野党共闘に関しては「政権選択選挙ではないので、安保関連法の廃止が焦点であるならば、それ以外の合意は必要ない」として妥当だと見る。
 ただし、民主と維新の新党は「党を支える党員や労組などを差し置いて世論調査で党名を決めるのは、持続可能性という点で問題がある。世論や市民運動との対話は必要だが、振り回されすぎてもいけない」と風頼みの姿勢を懸念する。さらに「参院選で与党が改憲に必要な3分の2議席を得る可能性を視野に入れれば、新党の綱領は現行憲法の内容をきちんと評価する必要がある。『立憲主義を守る』だけでは、安倍政権が憲法の手続きにのっとって改正を試みた時、党内に亀裂が生じかねない」と疑問を投げかける。
 自公協力も安泰ではない。「創価学会の研究」の著者で首都大学東京の玉野和志教授(社会学)は「公明党の支持基盤である創価学会は、グローバル企業に勤め安倍政権を支持するエリート層と、平和主義や福祉を重視する伝統的な庶民層に分かれる。エリート層が成長神話をけん引して目標になっているうちは自民党と結びつく動機があるが、安倍政権が格差社会の底辺を切り捨てた時、神話は崩れ、政党協力の組み合わせが変わる可能性はある」と指摘。憲法と安保関連法が争点となる参院選では「安倍政権に批判的な庶民層の反応が鈍く、熱心に自民候補を応援しない選挙区も出るだろう」と語る。
 不毛な議論にかまけている余裕はない。「野合ですが、それが何か?」−−。与野党党首の皆さん、そう開き直ってはいかが。

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