天声人語自民党の改憲草案は「個人」を「人」に改めている。安倍首相は「さしたる意味はない」実は、この部分には重大な意味が潜む。
「私の在任中に」憲法改正を成し遂げたいという安倍首相の発言が大きく報道された。そう述べた後に、首相はもう一つ見逃すことのできない答弁をしている。一昨日の参院予算委員会だ
▼民主党の大塚耕平氏が自民党の改憲草案を取り上げた。憲法13条は「すべて国民は、個人として尊重される」と定めるが、草案は「個人」を「人」に改めている。このことに何か意味があるのかと大塚氏はただした。首相は「さしたる意味はないという風に承知している」と答えた
▼ならばなぜ変えるのかという疑問が浮かぶが、実は意味がないどころではない。草案のこの部分には重大な意味が潜む。今の13条への否定的な評価である
▼草案作りに携わった前首相補佐官の礒崎陽輔(いそざきようすけ)氏が、自身のホームページに「私見」を書いている。13条は「個人主義を助長してきた嫌いがある」と。公式見解ではないとしても、自民党に根強い発想だろう
▼改憲が必要な理由として随分以前から「行き過ぎた個人主義」が挙げられてきた。安保法制に反対する学生を若手議員が「利己的」と批判した一件は記憶に新しい。草案にうたわれる「公の秩序」や「家族の尊重」とともに、礒崎氏のいう「自民党の思想」を形作っている
▼こうした背景からすれば、さして意味はないとの答弁は不可解だ。理解不足なのか。野党は首相の憲法観をさらに問うべきだ。首相は議員同士で議論すればいいと逃げ腰だが、改憲を実現したいと繰り返す以上、答える責任がある。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S12240102.html?rm=150
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