2016年3月9日水曜日

【薄れゆく危機感】福島原発事故の深刻さを思い起こそう:カルディコット博士からの警告

http://useful-info.com/caldicott-warning-fukushima-reminder

【薄れゆく危機感】福島原発事故の深刻さを思い起こそう:カルディコット博士からの警告


写真(放射性セシウムによる土壌汚染) 出典:IPPNW-Report "Health consequences resulting from Fukushima Update 2015"
写真(放射性セシウムによる土壌汚染) 出典:IPPNW-Report “Health consequences resulting from Fukushima Update 2015”
 2016年1月4日、安倍内閣総理大臣の年頭記者会見が行われました。
 冒頭発言と質疑応答を通じて、福島原発事故への言及は皆無でした。意外かもしれませんが、日本では今なお原子力緊急事態宣言が発令中であり、何千万という日本国民が放射性物質による健康被害にさらされています。この重い事実を安倍総理はすっかり忘れてしまったのでしょうか?見て見ぬふりをしているとしか思えません。
 電力会社・メーカー・政治家・官僚・学者・マスコミで構成される原発マフィアは健康被害も含めた事実の隠ぺいに熱心です。
出典:原子力村の住民一覧
出典:原子力村の住民一覧
 彼らの努力?の甲斐もあり、国民の大多数は福島原発事故のことを忘却しつつあります。忘れていない人も口に出すことを躊躇しているようです。その場の空気が、原発問題への言及を妨げているのでしょうか?
 先日書店に行った時も、福島原発事故に関連する書籍が極端に少なくなっていることに気づきました。2011年ごろは、原発事故特集のためにかなりのスペースが割かれ、関連文献が紹介されていましたが、いつの間にかほとんど消えてしまったようです。福島原発事故以前は、原発の問題を論じることは日本ではタブーだったのですが、その暗黒時代に戻ってしまったようです。
 しかし、福島原発事故はいまだに収束しておらず、放射性物質は毎日漏れ続け、廃炉作業も目途が立たず、多くの国民の健康が蝕まれ続けています。人間の五感では感知できませんが、放射性物質による脅威は厳然として存在し続けているのです。今回は、原発事故の深刻さを思い出すために、海外の専門家の情報を紹介いたします。
 ノーベル平和賞を受賞したIPPNW(核戦争防止国際医師会議)の生みの親で、医師のヘレン・カルディコット博士が2012年11月19日、東京都内で講演を行いました。福島原発事故発生から、1年8か月経過した時のものですが、内容的には今でも日本人が心に留めねばならないことばかりです。講演の様子を以下のYouTubeビデオでご覧ください。
「移住費用は国が負担すべき」カルディコット博士(9分38秒):日本語字幕付き
 上記YouTubeビデオの日本語字幕を以下に転載いたします。
転載始め
****************************
本日は子どもを看る小児科医の立場から、福島の事故について医療的な側面からお話しします。
福島の事故は、人類の歴史上最悪の産業事故です。3つの炉が連続してメルトダウンする人類史上初の極めて深刻な事故でした。莫大な量の放射性物質が放出されました。
ひとつ幸運だったのは最初の数日間、風が太平洋に向かって吹いたことです。そのあと風向きが変わり、南の方向に放射性物質が拡散しきました。その間、日本政府はSPEEDIによって、放射性物質の拡散評価を持っていました。しかし、パニックを避けるためという理由で、国民に情報を与えませんでした。それにより、中には最も放射線の高い方向へ逃げる人が出てしまいました。
私自身、チェルノブイリ事故の推移をずっと追ってきましたが、その中で言えるのは、ロシア政府は日本政府よりも、もっと積極的に人を避難させて国民を守ったということです。
政府も東電も理解していないことですが、子供の放射性物質に対する感受性は大人の10~20倍あるのです。放射線被曝に由来するガンにかかるリスクは、男の子と女の子を比べると、女の子の方が2倍になります。成人と胎児では、胎児の方が何千倍というリスクの高さになります。
福島県には200万人の人が住んでいます。線量の高い福島市にも25万人が住んでいます。
日本政府が子どもを線量の高い地域に住むのを許していることに驚いています。ロシア政府はチェルノブイリ事故の際、福島と同じ水準の汚染地域から子供どもたちを避難させました。日本政府が、東電や原子力産業から強い影響を受けたり、時にはコントロールされたりすることを私は知っています。
政治家の皆さんは、医療的・科学的な知識をあまり深くは持っていません。
子ども・妊婦・出産ができる年齢の方々が、福島などの高線量の地域にいることは、医療的に見て極めて深刻な問題です。
子どもたちは今後の長い人生の中でがんになる可能性がでてくるのですが、5~17年の長期間潜伏し、がんになることが広島や長崎の経験からわかっています。
福島県では18歳以下の子どもたち8万人の検査をしたと聞きました。甲状腺の超音波検査をしたということです。検査の結果、40%の子供に甲状腺になんらかの異常が見つかりました。このような数値は、小児科の見地からすると、極めて稀な話です。
今後必ず甲状腺のがんにかかる子どもたちが出てくると思われますが、既に12歳の男の子で甲状腺がんが見つかっていますし、16歳の女の子もがんの可能性が高く、さらに検査を受けています。
チェルノブイリでがんが出はじめたのが、事故後5年ぐらい経ってからでしたが、日本で既に症状が出ているということは、子どもたちは相当高い線量を受けたのです。チェルノブイリよりも高い線量です。
医師としての立場から見ると、政府は国民よりも東京電力を守ることに注力しているようです。
線量の高い地域にいる子どもたちや妊婦、子どもを産める若い女性の方たちを、その地域から避難させることは極めて重要だと考えます。また、その移住のための費用は国が負担するべきなのです。そういった弱い立場にある人たちよりも、東電を守るために予算を使うのが、今の日本の政治ではないでしょうか。
放射性元素は食物の中に蓄積します。きのこ・ほうれん草・お米・お茶・魚。放射性物質は、味はしません。匂いもしないし、目にも見えません。福島から来る汚染された食品を人々は口にしていますが、残念ながら日本には放射性を帯びた食品に実質的には規制がありません。放射性物質セシウム137によって汚染された食品を食べていると、何年か後に悪性の脳腫瘍や筋肉腫がんになるという可能性が出てきます。
福島県の学校や幼稚園では、放射性物質を含んだ食事を子どもに与えていますが、これは医療的には非道徳的です。
福島からの食品は毎週すべて検査をする必要があります。検査をしていない福島からの食品は販売をしてはいけません。太平洋の魚からは高いレベルの放射線量が検知されています。これは放射性物質が大量に海に投棄され放出されたからですが、太平洋に放出された放射性物質は、人類史上最高の量なのです。
私は400人の一般市民に講演させていただきましたが、彼らは一体どうしたらいいのかを知りたいという気持ちで必死でした。福島で何が起きているのかを、一般の人に知らせる責任がメディアにはありますが、今のところ全体的に見て、その責任は果たされていません。
福島の事故はまだ終わっていません。40年の時間をかけてクリーンアップするということですが、それは科学的に不可能です。
セシウム137は300年残ります。福島など汚染地域も汚染されたままです。食品や人の汚染も、300年かあるいはそれ以上続きます。
今回の事故がどれだけ長くかかるものか、その現実を政府は理解していないのです。
疫学的に見ても白血病やがん、あるいは先天性の異常は、今後70年以上にわたって次々に出てくるのではないかと思います。そういった現状を、実は原子力産業も知っているのではないでしょうか。なぜなら、福島に、がんに対応するための大きな施設を作ろうとしているからです。
また福島原発の処理作業員についても、記録が公表されていません。作業員の放射線被害の状態は記録され、公の情報として出される必要がありますが、それが可能になっていくかどうかは、メディアによるところが大きいです。
そして最も重要な点、多くの日本人に知ってもらいたい点ですが、もし福島でマグニチュード7以上の地震が発生したら、使用済み核燃料プールのある4号機が崩壊する可能性があります。その場合、チェルノブイリの10倍の放射性物質が放出されると予想されます。
もしそのようなことが起こると、日本の大半の部分が終わってしまいます。それほどの大事であるにもかかわらず、多くの国民がその現実に気づいていません。もし4号機に崩壊事故があった場合、東京からも避難しなければならないと政治家の方はおっしゃっていますが、それほど多くの人を一体どうやって避難させるんでしょうか。
外国企業やアメリカのNRCの助け、海外専門家からの支援を受けることを、日本の政府も東電も認めていませんが、4号機の補強をするために、その協力を仰ぐべきだと考えます。現在、東電がクレーン設置して使用済み燃料を取り出そうとしていますが、その作業には2年かかるということです。それを待つ2年の間に何が起きてもおかしくありません。
最後に申し上げたいのは、がれきの問題です。放射能で汚染された地域のがれきを、他の地域で焼却すると聞いています。焼却するということは、灰が出ます。その灰を広めるということは、犯罪的な行為です。
****************************
転載終わり
注釈)
 東京電力は2014年12月20日、福島第1原子力発電所4号機の使用済み核燃料プールから全ての核燃料を取り出す作業を終えたと発表しました。重要工程の一つが完了しましたが、放射線量の高い1~3号機からの核燃料取り出しはについては目途が立っていません。
 以下、ヘレン・カルディコット博士のプロフィール(出典:ヘレン・カルディコット財団)
*******************
オーストラリア・メルボルン出身の小児科医。
これまで53年にわたり、オーストラリアとアメリカの医学界に貢献し、またその間、ハーバード大学の医学部において、遺伝的嚢胞性線維症の治療。さらには、ハーバード大学医学部教員として小児科をめざす医学生の育成にあたる。
レーガン大統領時代の1980年、核戦争の脅威からくる医学的影響に心を寄せるようになっていったのをきっかけに、グローバル予防医学の臨床実践へと専門を移す。
また、「医学的見知から、原子力発電並びに核戦争がもたらす人体への影響」について、人々の認識を向上させることを主たる目的として、医師としての社会的責任を追及するための組織(総称PSR)を設立する。世界各国から23,000人の医師たちがメンバーとして集結。
1985年、この組織は、「核戦争防止国際医師会議」(IPPNW)の傘下の元、ノーベル平和賞を受賞。
その後、ヘレン・カルディコット財団を設立し、各職種に就く者の立場から「核」の存在を憂い、「放射能」が女性や子供たちに及ぼす人体的影響に関する研究結果をアピールし続ける中で、2011年3月の東日本大震災が発生し、「東京電力福島第一原子力発電所」の惨事が起こる。
以後、「フクシマ」の女性や子供たちを「放射能被曝」から救済すべく、世界各国の専門家を集結させ奔走している。
*******************
 カルディコット博士は、2014年3月8日にも日本で講演を行っており、親身な警告をして下さっています。下記にリンクを貼りますので参考にしてください。
以上

0 件のコメント:

コメントを投稿