2018年1月2日火曜日

180101首相「タブーに挑み国民守る」櫻井よしこさん「日本の立ち位置は強力」

首相「タブーに挑み国民守る」 櫻井よしこさん「日本の立ち位置は強力」


新春2018年 安倍晋三首相と語る
記念撮影に臨む(左から)我那覇真子さん、半井小絵さん、安倍晋三首相、櫻井よしこさん、田北真樹子記者(酒巻俊介撮影)
記念撮影に臨む(左から)我那覇真子さん、半井小絵さん、安倍晋三首相、櫻井よしこさん、田北真樹子記者(酒巻俊介撮影)
 平成30(2018)年を迎え、安倍晋三首相は、ジャーナリストの櫻井よしこさん、気象予報士の半井小絵さん、沖縄で活動を続ける我那覇真子さん、産経新聞政治部の田北真樹子記者の女性論客4人を首相公邸に招き、外交・安全保障や憲法改正などについて大いに語った。対談の模様は1月5日午後9時から、櫻井よしこさんが主宰するインターネット番組「言論テレビ」で放映される。


 櫻井 明けましておめでとうございます。
 安倍 おめでとうございます。
 櫻井 平成30年は本当に大事な年になります。安倍首相が政権を奪還して6年目に入り、国際社会における日本の立ち位置は非常に強力なものになりましたが、日本周辺の安全保障環境は非常に厳しいですね。そんな中、昨年秋の衆院選で自民党が大勝したことはよかったと思います。
 安倍 昨年の衆院選には批判もありました。ですが、北朝鮮が「政策を変えるので話し合いたい」と言ってくる状況を作るため、国際社会が連携して圧力を強めなければならない。このことを世界に訴えていくには国民の信任を得ることが大切でした。
 おかげで選挙後のアジア太平洋経済協力会議(APEC)や東アジア首脳会議(EAS)では各国首脳が私の主張に耳を傾けてくれた。国民から力を得て外交力を発揮することができたと実感しました。
 櫻井 今ほど日本が国際社会で存在感を持ったことは過去にないのでは?
 安倍 一番というほど傲慢(ごうまん)ではありませんが、長く政権が続いていることで、多くの首脳と胸襟を開いて話をできる関係になったことは大きいですね。

 半井 首相はプーチン露大統領やトランプ米大統領ら癖のある外国首脳と親しいので「猛獣使い」とも呼ばれているそうですが、何かコツがあるんでしょうか。
 安倍 自然体で対応しているんですけど(笑)。米国は日本が海外から攻撃されたとき、ともに戦ってくれる唯一の同盟国です。どなたが大統領になろうともしっかりと信頼関係を築くことは日本の首相の責任と言ってもよい。幸いトランプ大統領とはお互いに何でも言える関係を作ることができました。ゴルフを2回やって…。これは結構大きいんですよ。多忙な米大統領と半日くらいゆっくりと話ができる。相手の性格も分かりますしね。プーチン大統領とはもう20回会談をし、信頼を重ねていくことができました。
 櫻井 いろんな首脳から、トランプ大統領について問い合わせの電話があると聞きましたが?
 安倍 そういうことはあまりお話できませんが…。欧州連合(EU)との関係も今ほど緊密だったことはありません。昨年12月には日EUの経済連携協定(EPA)交渉が妥結しました。日本のGDPを1%押し上げると予測されており、アベノミクスに新たなエンジンができました。
 櫻井 日本が中心となって価値観を共有する国々と連携できたことは素晴らしいと思います。
 安倍 日本はルール作りがあまり得意ではなかっただけに、中心になれたのは大きいですね。
 田北 北朝鮮情勢が緊迫化する中、安倍政権で安保法制や特定秘密保護法、テロ等準備罪を整備していて本当によかった。米国と関係強化する上で不可欠な法律だと思います。
 安倍 日米関係は、日米史で今が最も強いと申し上げることができます。特定秘密保護法に反対の人たちは「映画が作れなくなる」と批判しましたが、作れなくなった映画があるんでしょうか。しっかりと秘密を守る仕組みができたので、米国から機微な情報を得ることができるようになりました。
 また、安保法制により、米国とお互いに助け合うことができるようになりました。助け合えなければ信頼できませんよね。昨年は自衛艦が米艦の防護を初めて行いました。助け合いが可能になったので3つの米空母打撃群が日本海に入り、かつてない大規模な演習ができた。助け合える同盟が強いことを証明した実例だと思います。
 我那覇 安倍政権はこれまでできなかったことを実現しました。首相が日本のタブー破りの先頭を切っていることで、言論空間の歪んだ沖縄にいる私も勇気をもらっています。次にやらねばならないタブー破りは何でしょうか?
 安倍 日本を守るため、国民の命と暮らしを守るために何をやるべきかを真剣に考えること自体が、タブーの領域だったのでしょうね。これからも国民の命、そして日本を守るために必要な防衛力の姿を追求したいと思っています。
 半井 北朝鮮による拉致問題でいえば、スパイ防止法にも踏み込んでいくお考えはありますか?
 安倍 スパイ防止法を考えているわけでは全くありませんが、わが国を守るために必要なことをもっと率直に議論すべきではないかと思います。沖縄について一言。沖縄の米軍基地負担軽減を最も進めてきたと思っています。北部訓練場という本土復帰後最大の返還を成し遂げ、地位協定も環境と軍属に関する補足協定ができました。
 普天間飛行場移設問題では空中給油機15機を山口・岩国基地に移駐しました。昨年は米軍ヘリから落下物がありました。あってはならないことです。普天間から辺野古に移れば、学校や民家の上で米軍機が飛行することはなくなります。
 我那覇 マスコミは「オール沖縄で反基地だ」と報道しますが、私の住む名護市でも多くの人が米軍基地に理解を示しています。その証拠に沖縄県11市のうち9市は保守系市長なんですよ。
 今日、初めて安倍首相とお会いしましたが、こんなに人相のよい、かっこいい首相が、沖縄の新聞ではいつも怖い顔で登場するんです。私たちは印象操作されてるなと思いまして。
 安倍 …(苦笑)。
 我那覇 政府と国民がマスコミに分断されているんです。お互いの素の顔を知るために何かをしなくてはいけないと思います。ぜひ本当の沖縄を見に来てください。
 安倍 ありがとうございます。私も沖縄が大好きです。米軍基地については安全確保が第一だと何度も申し上げ、米側も努力しています。県民の皆さんのご理解が進むことを期待しています。
 櫻井 首相に期待することには、拉致問題の解決もあります。
 半井 私は「めぐみへの誓い-奪還-」という劇で拉致被害者の田口八重子さん役を演じています。八重子さんが飛行機のタラップから降りて兄の飯塚繁雄さんと抱き合う姿をぜひ見たい。拉致問題の進展はどうでしょうか。
 安倍 拉致問題には初当選以来ずっと向き合ってきました。残念ながらまだ解決に近づくことができませんが、昨年はトランプ大統領が国連演説で米大統領として初めて拉致問題に言及しました。来日の際もご家族の皆さんや曽我ひとみさんと面談した。米国が拉致問題解決にコミットしたことを明確に示してくれたと思っています。
 核・ミサイルだけでなく拉致問題も日米で一緒に取り組んでいきたい。そのためにも国際社会と連携して北朝鮮にしっかり圧力をかけていくことが大切なんです。昨年12月に採択された国連安保理の制裁決議では、石油精製品輸出の9割削減を決めました。北朝鮮の大使館がある国は次々に大使を追放しています。
 櫻井 北朝鮮が話し合う方向に近づいているという感触はありますか?
 安倍 1~2月をよくみていく必要があります。制裁が効いているという感触は、日本だけでなく米中両国や韓国も持っていると思います。
 田北 仮に北朝鮮が対話路線に転じたとき、米中が日本抜きで対話することはあるのでしょうか?
 安倍 北朝鮮が対話を求めるのが、どの国であっても国際社会が連携して対応することが大切です。日本は当事者です。拉致問題もあり、ノドンミサイルは日本を射程に入れています。日本抜きに話が進むことはあり得ません。
 半井 トランプ大統領に拉致問題について説明されたのでしょうか。
 安倍 一昨年11月に米ニューヨークのトランプタワーで初めて会った際に拉致問題を話しました。トランプ大統領だけでなく初めて会う首脳には必ず拉致問題を説明してきました。
 我那覇 同じ日本人が拉致されても、目を向けない国民がいるというのは問題です。
 安倍 大変根深い問題です。昭和52年に横田めぐみさんが拉致されましたが、当時、すでに別の拉致事件が起こっています。
 櫻井 久米裕(ゆたか)さんですね。
 安倍 はい。その時は犯人の目星がついていたんですが、処罰に至らなかった。当時はそういう状況だったんです。もし北朝鮮の犯行だと特定できていれば、めぐみさんは拉致されなかったと思います。実際、「北朝鮮は拉致していない」と主張する国会議員もたくさんいました。拉致問題に取り組む私に「変わった人だ」という視線は自民党にもありました。
 安倍政権が6年目を迎える今も拉致問題を解決できていないのは痛恨の極みですが、政権の使命として解決のためにこれからも全力を傾けていきます。
 櫻井 産経新聞が昭和55年1月に拉致問題を初めて報道しましたが、他の新聞社は報じませんでした。日本は自分たちがおとなしくしていれば他国が害を及ぼすことはないという考えに浸ってきたんでしょうが、国民の意識の変化はお感じになりますか。
 安倍 随分理解は深まったと思いますが、まだ北朝鮮と話し合った方がいいという方はたくさんおられます。
 櫻井 随分長く話しあってきましたよね。
 安倍 北朝鮮と単なる話し合いをしても時間稼ぎに使われてしまうわけです。核開発計画を完全に放棄し、検証可能な形で不可逆的に廃棄していくことにコミットさせる。それを行動に示していくことが必要だと思っています。
 半井 私は2~3年前まで政治にほとんど興味がなく、頭の中は「お花畑」だったんですが、それに気づいてやっぱり現実を見なきゃと思いまして。でも、まだ多くの国民は北朝鮮や中国の脅威という現実に目を向けていません。
 安倍 中国は隣国であり、最大の貿易相手国です。日中が良好な関係を持つことは両国民にとって間違いなくプラスですし、日中関係は間違いなく改善しています。
 その一方で中国が軍事力を拡張しているのも事実です。相当なスピードと言ってもいい。東シナ海や南シナ海では一方的な現状変更を試みています。
 しかし、国際社会が共有するルールにのっとって対応することこそが中国が発展する道になると思います。そのためには日米同盟を基本として国際社会と連携しながら、中国が責任ある勢力として発展するよう促していくことが大切だと思っています。そして「自由で開かれたインド太平洋戦略」という私たちの考え方を国際社会に示していくことが大切だと思います。
 共通の考え方を持つ日米豪印で連携していく態勢は整いつつあります。日豪は準同盟に近い関係になっています。自由、民主主義、基本的人権、法の支配という普遍的価値を共有する国々とともに、この地域を安定させていくことが、中国を含む地域の国々にとって間違いなくプラスになると思っています。
 田北 首相は昨年5月3日、9条を堅持した上で自衛隊を明記する改憲案を提案しましたが、今後の展望をどう描いているのでしょうか?
 安倍 櫻井さんのセミナーで憲法改正に関する私の考え方を述べさせていただきました。残念ながらこれまで憲法議論は進んでこなかったんですね。

 自民党は党是である憲法改正を進めていく責任があります。過去5回の国政選挙で公約に掲げてきましたからね。私はまず一石を投じて議論を活性化させようと思いました。党内議論は活発化し、国民の皆さまにも野党にもご注目をいただいていると思います。
 櫻井 あれはすごいくせ玉でしたからね。
 安倍 政治は現実ですから、いくらやりたいと言っても改憲の発議には衆参でそれぞれ3分の2超の議員の賛成が必要です。相当高いハードルです。その後、国民投票というもっと高いハードルがあります。
 では、国民の皆さんに賛成していただけるところはどこか。私はまず自衛隊の違憲論争に終止符を打つことではないかと思いました。自衛官が息子さんに「お父さん、憲法違反なの?」と言われたというんです。教科書に書いてありますからね。さぞショックだったかと思います。
 櫻井 「命をかけて任務を遂行します」と宣誓して自衛官になる人たちは本当にそのように行動します。それなのに「憲法違反なの?」と子供さんに言われるのは本当に辛い。
 安倍 朝日新聞の調査によると、憲法学者で自衛隊を合憲と言い切る方は2割ちょっとしかおらず、7割以上が違憲の可能性を完全に否定できないというのが現状です。こうした論争に終止符を打つことが私たちの世代の責任ではないでしょうか。
 昨秋の衆院選では初めて4項目に絞って憲法改正したいと考えていることを表明しました。その結果、大勝させていただいたからには当然、党において議論を進めていただけるものと期待しています。
 田北 自民党総裁としてどのようなスケジュールを描いているのですか。
 安倍 スケジュールを含めて私がいま口を出すとややこしくなる危険性があるので…。国会が発議することなので党にお任せしたいと思っています。
 我那覇 沖縄の一県民として「誰が沖縄を守ってくれるのか」と思います。選挙ではいつも基地問題が争点になり、本土の皆さんに「申し訳ありません」と言われるのですが、日本国の安全を沖縄が担っているんだから、むしろ国防を強化すべきです。
 安倍 騒音や事故があるので基地を受け入れてくれている方々が負担を感じることは当然あると思います。ですが、もし日本が攻められたとき、自衛隊と米軍が共同対処して命をかけて沖縄を守っていく。このことはぜひご理解いただきたい。訓練は迷惑になることもありますが、それを受け入れてくれる人がいて初めていざというときに対応できるんです。
 櫻井 首相がリーダーシップを発揮して平成30年を本当に実りある年にしていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。
 半井 頼りにしております。
 安倍 どうぞよろしくお願いします。ありがとうございました。
 櫻井よしこ(さくらい・よしこ)ハワイ大歴史学部卒。クリスチャン・サイエンス・モニター紙東京支局員、アジア新聞財団「DEPTH NEWS」東京支局長、日本テレビのニュースキャスターを経てフリージャーナリスト。国家基本問題研究所理事長。
 半井小絵(なからい・さえ)早稲田大院アジア太平洋研究科修了。平成13年に気象予報士となり、14年からNHKの気象キャスターを9年間担当する。特定非営利活動法人火山防災推進機構客員研究員。「真相深入り! 虎ノ門ニュース」コメンテーター。
 我那覇真子(がなは・まさこ)沖縄県名護市生まれ。高校時代に米国に交換留学。平成24年、早稲田大人間科学部卒。27年に国連人権理事会で翁長雄志沖縄県知事への反論スピーチを行った。「琉球新報、沖縄タイムスを正す県民・国民の会」代表運営委員長。
 田北真樹子(たきた・まきこ)米シアトル大コミュニケーション学部卒。平成8年に産経新聞社に入社。前橋支局などを経て12年から政治部。21~24年にニューデリー支局長。25年から「歴史戦」取材班で慰安婦問題などを取材。政治部首相官邸キャップ。
 この対談は、1月1日午後0時半から、ニッポン放送で放送されます。

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