安保法1年 言わねば ならない こと 米国は まだ満足して いない 外交・ 弁護士・ 猿田佐世さん
北朝鮮はこの一年で多数の弾道ミサイルを日本周辺に撃ち込み、核実験を強行した。安倍晋三首相は安全保障関連法の成立で抑止力が高まると、再三、主張してきたのに、実際には機能していない。説明責任を果たすべきだ。軍事に偏らず、金、人、時間などを外交に振り向けることで平和を実現するアプローチをおろそかにしてはならない。
首相は「米国を振り向かせる」ことを外交指針の中心に据えている。安保法を成立させたのも、日米同盟の深化を目的にしていた。
米国は日本に期待していることが一歩一歩進んでいると評価はしているが、満足してはいない。これからは具体的に安保法を運用し、軍事行動に慣れるよう求めてくるだろう。「世界の警察」の地位を保つための戦略の一部を、日本が担ってくれればありがたいと思っているからだ。
安保法制定は中韓両国との緊張を高めたが、安倍政権は一時期に比べてアジア外交に慎重な姿勢で取り組んでいる。韓国とは旧日本軍の慰安婦問題を巡って合意し、中国とは首脳会談を行い、偶発的な軍事衝突を避ける仕組みづくりで一致するなどした。これも、日本と中韓の過度な摩擦を嫌う米国の意向に沿おうとした側面があるのだろう。
ただ、米国と「両思い」になりたいという日本の姿勢には懸念も付きまとう。例えば、中東諸国の人たちは米国に反感を持つ一方、日本に対しては原爆を落とされながらも戦後に発展を遂げた「平和国家」という好意的なイメージを抱いてきた。今後は、米国陣営で戦争する国だという認識を持たれかねない。
<さるた・さよ> 1977年生まれ。日米で弁護士登録。国際人権問題に取り組む。シンクタンク「新外交イニシアティブ(ND)」事務局長。日米両国で政策提言、ロビー活動を展開する。
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