2016年9月13日火曜日

160913 動き出す憲法審査会 今こそ足を止め考える時 毎日新聞

動き出す憲法審査会 今こそ足を止め考える時
毎日新聞 2016年9月13日 東京夕刊

http://mainichi.jp/articles/20160913/dde/012/010/002000c

▼青井未帆さん(学習院大教授(憲法学))

「現時点で改憲は必要ないし、具体的に条文を議論する段階とは考えていません」

「憲法は、社会に安定をもたらす法秩序の要として、めったなことでは変えないと位置付けられているのが、大前提の考え方です。だから改憲の方向性が決まっていない今は『なぜ憲法を変えなければならないのか』『改憲の必要はない』といった議論がまず行われるのが筋。条文の検討はずっと後のことです」

「改憲を目指す人々の本音は『占領下で押し付けられた憲法は嫌だ。とにかく変えたい』という願望ありきでは。それは『理由なき改憲』と呼ぶべきものです」

(大災害などの緊急時に衆院議員の任期を延長する案について)
「『必要』と主張する人たちは、『衆院議員の任期満了と大災害が重なったらどうする』などと非常にまれなケースをあげつらっているだけ。憲法が定める参院の緊急集会をベースに、常識的で柔軟な対応をすればいいだけの話です」

「多くの国民は『9条を変えなければ問題ない』と思っているかもしれません。しかし最高法規である憲法が変われば、その影響は法体系全体に及ぶ。法体系が影響を受ければ、人権を保障する法律が影響を受ける場合もあります。実際、自民党の改憲草案は個人よりも国家や家族を重視する内容なので、仮にそのまま成立すれば自由の意味が変容するかもしれません」

▼森田実さん(政治評論家)

「基本的人権の尊重といった普遍的な価値を前提とする今の憲法に大きな不備はない。国民生活の向上のために必要な課題が生じれば、淡々と法整備を進めればいい」

「国会議員は国民の代表である以上、与党議員であっても『首相や大臣のその言動はおかしい』と内閣をチェックするのが当然です。なのに、今の自民党は、首相の独走を許容するという全く異常な事態に陥っている。民意に耳を澄ますのではなく、公認や役職を与える権限を握る首相に『右向け右』の議員ばかり。その状態で、国民のための活発な議論や適切な判断ができるとは考えにくい」

▼高橋哲哉さん(東京大教授(哲学))

「立憲主義では、国民は権力者に対し『この憲法を守れ』という命令をしている。ですが、これは放っておいても自動的に実現するものではない。権力は常に縛られることを嫌いますから。だから国民は、『権力者に憲法を守らせる力』を身に着けないといけない」

「国民は、政治に関心を持って権力者の動きを常に監視せねばなりません。憲法がどれだけ重要なものか、一人一人が理解を深めていくことも重要。憲法を軽視する権力者の誘導があっても流されないような見識が、国民に求められるのです」

「米国大統領みたいに、日本の首相も就任時に『憲法を守って職務遂行をする』と宣誓するように定めてはどうでしょうか」


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