社説 籠池氏の招致 自民党は何が怖いのか
毎日新聞
自民党と公明党は、いつまで逃げの姿勢を続けるつもりなのか。
大阪市の学校法人「森友学園」の国有地取得問題に関し、野党が求めている同学園の籠池泰典氏ら関係者の参考人招致を与党が拒んでいる。
だが、拒否の理由は理屈が立たない。学園側が開設を目指していた小学校の設置認可申請を取り下げ、籠池氏が理事長辞任を表明したことで自民党には「参考人招致は必要なくなった」との声があるが、これで幕引きするわけにはいかない。
自民党の竹下亘国会対策委員長は「民間人の招致は慎重であるべきだ」と言う。確かにそうだ。ただし、虚偽の陳述をすれば罰せられる証人喚問も含め、民間人を国会に呼んだ例は過去にも多数ある。
ましてや今回は国民の財産である国有地が格安の価格で売却されたという問題だ。解明しないのは国会の責任放棄といっていい。
これまでの国会質疑で財務省は「適正な手続きだった」と繰り返している。一方で同学園と近畿財務局との交渉記録は破棄したという。ではなぜ破棄したかと聞けば「適正で問題がないからだ」と答弁する。
これで納得しろという方が無理だ。だから関係者から話を聞く必要がある。ところが野党が求めている財務局担当者ら公務員の招致も自民党は応じようとしない。
菅義偉官房長官は「違法性のない事案に関わる参考人招致は慎重に」と語った。しかし、学園側から政治家に口利き依頼はなかったのかという疑問のみならず、不可解な点は次々と明らかになっている。
建築費の額が異なる工事請負契約書を国土交通省、大阪府、関西エアポートに提出していた点をはじめ違法性が疑われている問題は数多い。
自民党からは「違法なら捜査当局に任せればいい」との声も聞くが、既に捜査が始まっている場合には、国会に関係者を呼んでも「捜査中だから答えられない」と証言を拒まれる例が過去には多い。国政に関わる事案について、違法性があるかどうかを、まずただすのも立法府・国会の役割だ。
竹下氏は「テレビや週刊誌が取り上げるから国会で議論しようというのは違う」とも語った。本当にそう考えているとすれば、問題の深刻さを分かっていないというほかない。
籠池氏は突如、小学校の設置認可申請を取り下げたが、言い分は一方的だ。より国会招致が必要になったにもかかわらず、自民党には「籠池氏は何を言い出すか分からない」との不安が強まっているようだ。
結局、招致を拒む理由はそれかもしれない。やましい所がないなら招致を認めればいいだけの話だ。
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