2017年12月22日金曜日

生活保護切り下げ、「クリスマスなくていい」とシングルマザーから怒り続出

生活保護切り下げ、「クリスマスなくていい」とシングルマザーから怒り続出

AERA 2017/12/22

https://dot.asahi.com/amp/aera/2017122100078.html

 厚生労働省が生活保護費を引き下げる案を打ち出した。食費や光熱費などの「生活扶助費」を最大5%減額する方針だ。生活保護基準の切り下げは、経済的に苦しい家庭の子どもへの就学援助や、介護保険料の減免、税制、最低賃金の水準など、受給者だけではなく、私たちの日々の暮らしにも影響を与える。実は、誰にとってもひとごとではない。

 なかでも懸念されるのがシングルマザーなどひとり親世帯への影響だ。生活扶助の減額に加え、「母子加算」を2割削減し月額平均2万1000円から1万7000円に、3歳児未満の子どもへの「児童養育加算」を月額平均1万5000円から1万円に。さらにクラブ活動などにあてる「学習支援費」を定額支給から実費のみの支給に変更する。

「子ども自身が自分の生活をきりつめなければいけないと毎日気にしながら生きている。義務教育期間にこういうことをしていいのかなって、すごくおかしいなって思うんです」

 そう言うのは12月19日、この引き下げ案に反対する大学教授・弁護士らが衆院第一議員会館で開いた院内集会に参加した生活保護受給者のシングルマザー。冬休みが始まれば、子どもに1日3食を家で食べさせなければならないが、どう食費を捻出するか頭が痛い。

「贅沢なんかしていないです。クリスマスプレゼントなんか買わないですよ? なんにもないけど、とりあえず生きているだけでありがたいって思わなきゃいけないって自分に言い聞かせています」(女性)

 NPO法人「チャリティーサンタ」の調査によれば、シングルマザーの36.9%、約3人に1人が経済的困窮などを背景に「クリスマスなんてなくてもいい、来ないでほしい」と思ったことがあると回答したという。生活保護受給の母子世帯ならなおさらだ。

 北九州市議の村上さとこさん(52)は、イルミネーションやイベントで華やぐ街をみるたびに強く思う。


「市議としては町づくりも大切ですが、そのにぎわいに参加できず孤立と困窮に苦しむ人もいることを忘れてはいけない」

 それは自身の過去にも重なる。約15年前、村上さんも貧困に苦しみ、生活保護を受けながら2人の子どもを育てるシングルマザーだったからだ。

「クリスマスだって朝も夜も働いていました。にぎわう場所はみじめになるし、より孤独を感じるので避けていました。そもそも交通費も惜しいので外出ができなかった。子どもたちを遊びに連れて行った記憶がないんです」(村上さん)

 会社員の夫と結婚し、関東で専業主婦として子育てをしていた村上さん。生活が一変したのは、夫がリストラされ、暴力をふるうようになってからだ。被害は徐々にエスカレートし、殴られて耳の鼓膜が破れることも。離婚の手続きを進めながら、夫から逃れるため当時小学1年の長女と幼稚園に通っていた次女を連れて東京へ引っ越した。昼は派遣の事務員、夜はファミレスなど飲食店でアルバイトしたが、それでも月々の収入は約20万円と苦しい生活だった。やがて派遣切りされるのが不安でアルバイトを三つかけもちするように。正社員になりたいとも思ったが、面接のためにはアルバイトを休まねばならない。その分の時給が惜しくて出来なかったという。

 子どもたちの食事や洋服も切り詰めた。今でも覚えているのは大雪が降った日のことだ。年に数回しか履かない長靴はもったいなくて買えない。子どもたちは雨の日も運動靴をぐちゃぐちゃにして通っていたが、その日はさすがに無理だと村上さんが判断。学校を休ませ、村上さんは仕事へ向かった。

「子どもたちは学校が休めて無邪気に楽しそうだったけど、親としては申し訳なくてつらくて。当時は安い長靴を探そうと思うような時間的余裕も精神的余裕もなかったんです。朝も夜も休日もなく働いていましたから」(村上さん)

 その後、派遣切りにあったのと同時に長女が入院。バイトの掛け持ちと病院の付き添いは両立できず、生活保護を受けることになった。受給期間は約7カ月。その間ヘルパーの講座に通い資格を取得した。非正規のヘルパーとアルバイトを掛け持ちする生活で、なんとか生計を立て直したという。今は再婚し、長女も次女も大学に進学、新たに三女も出産した。


「生活保護を受給できなければ生きていけなかった。子どもの病気も治せたし、落ち着いて家族の今後の生活や自分のキャリアについて考えられたのも助かりました。生活保護には感謝の気持ちしかありません。貧困の連鎖を断ち切るのが政治の役割なはず。まずは生活保護以下の水準で生活している約3千万人を支援することが大切。母子家庭を狙い撃ちするような今回の削減案には反対です」(村上さん)

 しかし、昨年の北九州市議選に立候補するまで生活保護を受給していたことは10年以上、夫以外に誰にも話していなかったという。「生活保護なんて恥ずかしい」という自己責任論に絡めとられていたからだ。だが、北九州市で男性が「おにぎりを食べたい」と書き残して餓死した事件など、行政の「水際作戦」が明るみに出た。生活保護受給者へのバッシングが高まる中、経験者が声をあげ、生活保護は国民の権利だと伝えることが大切だと今は思い直したという。自身が周囲から孤立した体験から、生活保護受給者もルームシェアできるような制度改革が必要だと考えている。

 前出の院内集会に参加した立憲民主党の池田真紀衆院議員もシングルマザーとして生活保護を受給していた経験がある。当時から福祉事務所の対応や制度の運用実態に疑問を感じていたという。

「今回の基準引き下げ問題について、厚労省の説明で本当に納得のいくものは一つもなかった。国民がただ生きるだけではなくて、安心と笑顔を勝ち取らなければいけないと思っています」(池田さん)

 引き下げを検討した厚労省の生活保護基準部会は、客観的な数字にこだわり、最後まで当事者の声を聞かなかったという。来年1月召集の通常国会で国の予算案審議が始まる。彼女たちのような体験者の切実な声が、議論に反映されるよう願っている。(AERA編集部・竹下郁子)

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