「一丁目一番地で裏切った人が…」共産・志位氏に聞く
聞き手・石松恒
朝日新聞 2017年12月28日3時12分
https://digital.asahi.com/sp/articles/ASKDT6V2FKDTUTFK019.html?rm=344
野党勢力が細分化されるなかで、「野党共闘」はどこに向かうのか――。共闘を引っ張ってきた共産党は先の衆院選で、野党の共倒れを避けようと、自発的に小選挙区の候補者を取り下げた。その結果、野党全体の議席数は増えたが、共産は21から12に激減した。次の参院選に向け、「共闘と党の躍進の両立」をめざすことにしたという志位和夫委員長に聞いた。
――共産党にとって衆院選は厳しい結果でした。
「野党が共闘して勝利を、という努力の最中に、民進党が希望の党と合流して、重大な逆流が持ち込まれた。それを乗り越えるため、67の小選挙区で候補者を取り下げた結果、共産、立憲民主、社民3党では公示前の38から69に伸びた。一方的(に候補者を取り下げる)対応をやったことに悔いはなく、正しかったと確信している」
「野党共闘と党の躍進は両立できる」と衆院選を総括しましたが、本当にできますか。
「可能だ。今度の衆院選でも、市民と野党の共闘が安倍政権に代わる受け皿だと広く有権者に伝わる戦いができたところでは、両立する結果が出ている。無所属の野党統一候補を各党が支援した新潟3、4区では野党候補が勝ち、共産党も比例票を伸ばした」
「党の力不足は率直に認めなければならない。『共産党は政策はいいけどちょっと』という人が多く、いろんな誤解もある。『他に入れるところがないから』ではなく、綱領、理念、歴史、丸ごと共産党のよさを伝え、積極的な支持者を広げる取り組みをはじめた。SNSを使ったサポーター制度やしんぶん赤旗の電子版もはじめる。党独自の努力が必要だと痛感している」
――共産党への疑問が解けないのはなぜですか。
「つぶれたソ連のような覇権主義・専制主義の体制をめざすのか、中国のような1党制をめざすのか、という誤解がかなり広くある。実際にはソ連や中国の干渉をはねのけてきた自主独立の歴史がある。自由と民主主義を将来にわたって継承、発展させると綱領に明記している。誤解を解くには我々の側の努力がいる」
――そのために党の自己改革が必要だと。
「そうです。私や小池晃書記局長、党三役も参加して、党への疑問や意見にこたえる双方向の対話集会を全国津々浦々でやっていく。安保法制廃止をめざして2015年9月から共闘をすすめてきたが、それを前にすすめるうえでも党のよさを丸ごと伝える活動がいよいよ大事だ」
――思い切って党名を変えたらどうですか。
「変えるつもりはない。人類の歴史は資本主義で終わりでなく、社会主義・共産主義にすすむという理想を刻んだ名前だ。党名を変えるときは、国民に顔向けできない誤りをやったときだ。平和と民主主義を命がけで守り抜いてきた95年の歴史に自信を持っている」
――綱領はどうですか?
「いま変えなければならないと感じるところはない。むしろ内外情勢に非常になじみ、綱領のめざす方向がいよいよ力を発揮していると感じている」
――19年の参院選では「一方的な対応は取らない」と決めました。候補者の取り下げには応じないということですか。
「次の参院選では、互いに譲り合い支援しあう、相互支援の本格共闘をめざす。一方的な対応はやらないと、先の中央委員会総会で決めた。総会決定は党大会決定につぐ重い決定で、執行部や委員長である私も決定や実践に責任を負う。共闘相手の政党にも、ぜひ乗り越えてもらいたいところだ」
――16年参院選も結局は候補者を降ろしました。
「共闘でたたかう最初の選挙であり、まず成功体験を積むことが大事だと考えた。次の参院選は、市民と野党の共闘をさらに発展させ、32の1人区で野党統一候補を実現する。自公を破る戦いを全国的に展開する決意でのぞむが、一方的な対応はやらない」
――相互支援や共通公約で合意できなければ候補者は降ろさないと。
「そうです」
――与党を利する結果になりませんか。
「そうならないようにやりましょうと言っている」
――前回は1人区のうち31選挙区を他党に譲りました。
「次はお互い納得できる形にする。1人区の候補者をどう配分するかは、直近の国政選挙の比例票が一つの目安になる」
――民進は希望や立憲との再結集をめざしているが、希望とは組めますか。
「野党共闘の『一丁目一番地』は安保法制の廃止と立憲主義の回復。こんな憲法違反の政治を横行させたら日本の政治は土台から崩れる、と。この一丁目一番地で裏切った人たちがつくった政党が希望の党だ。基本的な評価が変わることは現状ではない」
――衆院選後、ネット上では志位さんの引責辞任の情報が駆け回った。党執行部の責任を問う声は出ませんでしたか。
「まったくなかった。選挙後の総括でいろんな意見を聞き、アンケートも取ったが、そういう声はない。共闘は私たち執行部だけがやっているものではない。『この道しかない』というのは、二つの国政選挙に取り組んだみんなの気持ちじゃないか。共産党が議席を減らしたからと、安易に共闘を捨てたら、それこそ多くの人に批判されることになる」
(聞き手・石松恒)
0 件のコメント:
コメントを投稿