180504 伊勢崎 賢治
日本がいつまでもアメリカと「対等」になれない本当の理由
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55550
180503 伊勢崎 賢治
憲法9条が日本を危険にさらしてる!? 護憲のジレンマを超える方法
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/55545
170530 伊勢崎 賢治
安倍「加憲」で全世界が知ることとなる日本の「身勝手な論理」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51870
endhiblog
2016年抱負「習慣を変える」「すぐやる」 好きな言葉「心が開いているときだけこの世は美しい」(ゲーテ格言詩) 手塚富雄「いきいきと生きよ」より
2018年5月7日月曜日
2018年4月17日火曜日
180417火垂るの墓批評
https://m.facebook.com/story.php?story_fbid=1791017290937724&id=100000884116760
【「火垂るの墓」 ジブリで最も暗い作品が今も持つ重要性】
4/16(月) 18:56
BBC News
ヘザー・チェン記者
《日本アニメ界の巨人スタジオジブリは、「となりのトトロ」など明るい内容の名作で知られるが、同社が30年前に発表した、第2次世界大戦時を舞台にした「火垂るの墓」は、今も強く心に響くメッセージを持っている。
野坂昭如氏による1967年の同名小説を原作とし、今月5日に死去した伝説的なアニメーション監督でスタジオジブリの共同創設者、高畑勲氏が製作したアニメ映画は、第2次世界大戦末期の日本で必死に生き延びようとする、孤児の兄妹の物語だ。
映画の冒頭から結末は予告されている。独りぼっちの少年、清太は三宮駅で餓死する。所持品から清掃員が見つけたのは、ドロップ缶に入った少量の灰と骨のかけらだった。何の変哲もない缶は近くの野原に投げ捨てられ、空に向かった清太の魂は4歳の妹、節子の魂と再開する。
2人をホタルの群れが囲み、物語は始まる。「昭和20年9月21日夜、僕は死んだ」――清太の声による、耳に残るナレーションが入る。
ジブリ作品の一つではあるものの、「火垂るの墓」は一般的な子供向け映画とは全く違う。明るい気持ちにさせるそれまでの作品とは一線を画し、多くの人が観るのをためらうような悲惨な物語だ。しかし、映画評論家で歴史家の故ロジャー・イーバート氏は、「戦争映画として最も偉大な作品の一つ」だと称賛した。
2000年に書かれた批評で、イーバート氏は、「アニメ映画はその最初期から、子供たちや家族のための『漫画』だった。しかし、それらの映画が存在するのは安全地帯に限られ、涙は誘っても悲しみを味わせることはなかった。『火垂るの墓』による感情体験は、アニメに対する考えを変えさせるほど力強い」と述べた。
第2次世界大戦末期に激しさを増した米軍による空襲は、主人公たちが住む神戸も襲う。
戦争に悲劇は付き物だが、この映画が描く物語の力強さには、高畑監督自身の経験がかかわっている。戦争時に少年だった監督は、当時住んでいた岡山市で大規模な空襲に遭った。
細やかな描写と印象派的な効果によって、高畑監督は戦争が人々に与える影響をリアルによみがえらせている。
米国の編集者で、日本のマンガ・アニメ業界を論じた「Japanamerica(ジャパナメリカ)」の著者、ローランド・ケルツ氏は、「火垂るの墓」のワンシーンについて、非常に悲劇的ながら「心が奪われるような美しさ」があると話す。
ケルツ氏は、「漁師の集団が、湾の向こうで炎に包まれた神戸の街を見つめている。空をなめるように炎が上がるなか、漁師たちの後ろ姿が映し出される」と語る。「惨劇の静けさ。誰も動かないが、彼らの衝撃が伝わってくる。まさにシェルショック状態を表したシーンで、恐ろしいと同時にものすごく美しい」
戦争を生き延びるシンガポール国立大学・日本研究学科のリム・ベン・チュウ准教授は、「火垂るの墓」は現在でも色あせないどころか、重要性がこれまで以上に高まっていると指摘する。
リム氏は、「『火垂るの墓』が注目すべき映画なのは、さまざまなメッセージを含むなかで、命の大切さを強調している点が挙げられる。取り返しのつかない悲劇、戦争中の日本人が耐えなくてならなかった苦難を描いているが、観る人はなぜ第2次世界大戦が起きてしまったのかを自ら問う必要がある」と述べた。
「過去の日本の軍国主義を知ることも、映画中の出来事に対するより良い理解を助け、すべての戦争に対する一般的な人間感情を培う。それは将来の戦争を予防する、より効果的な方法になる」
前出のケルツ氏はこうも語っている。「『火垂るの墓』には、二義性や人生への後悔など豊かな物語性がある。その点だけで今も色あせていない。切羽詰った状況での英雄性や気高さの欠如の物語であり、その点では、ほぼアンチハリウッド映画だ」
「ハリウッド映画なら、困難なときにはヒーローが必要だと信じさせようとするだろう。高畑勲は反対の弱さを表現する。困難なときに最も必要なのは謙虚さ、忍耐、自己抑制だと。それによって生き延びられるのだと」
希望の象徴「火垂るの墓」は、ジブリ映画としては最も暗い映画の一つだと言われているかもしれないが、熱心なファンたちは、「不当な評価を受けている」とするこの作品や、作品から得られる身につまされる教訓について、議論に再び火をつけるのをやめなかった。発表から30年がたった今でも、議論は活発だ。多くの人々にとって、戦争が人々に与える影響は今も、人々から強い反応を生む。
YouTubeのユーザーのとある「火垂るの墓」ファンは、「アニメが過剰な表情や、性的なコンテンツ、陳腐な10代の恋愛ばかりだと思っている人は、『火垂るの墓』を観るといい。自分の間違いが完璧に証明されるだろう」とコメントしている。
米掲示板サイト「レディット」ユーザーのあるファンは、ホタルが象徴するものについて語っている。「ホタルには、主人公たちの街を焼いた焼夷(しょうい)弾と希望と忍耐力を表す二重の意味が込められていて、いつまでも心に残る映画の象徴になっている」。
ジブリのファンのレベッカ・リーさんはフェイスブックに、「トランプ政権が誕生し、世界中で多くの人がナショナリズムに染まるなかで、この映画の必要性はこれまでになく高まっている」と書いた。
「この映画は第2次世界大戦の隠喩で、2人の登場人物が死ぬというだけの映画ではない。『火垂るの墓』は、盲目的で反省のないナショナリズムや、それに従った人々の苦い結末について語っている。この映画は悲しいから傑作なのではなく、得られる教訓によって傑作になっている」》
(英語記事 Grave of the Fireflies: The haunting relevance of Studio Ghibli's darkest film)
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6279249
【「火垂るの墓」 ジブリで最も暗い作品が今も持つ重要性】
4/16(月) 18:56
BBC News
ヘザー・チェン記者
《日本アニメ界の巨人スタジオジブリは、「となりのトトロ」など明るい内容の名作で知られるが、同社が30年前に発表した、第2次世界大戦時を舞台にした「火垂るの墓」は、今も強く心に響くメッセージを持っている。
野坂昭如氏による1967年の同名小説を原作とし、今月5日に死去した伝説的なアニメーション監督でスタジオジブリの共同創設者、高畑勲氏が製作したアニメ映画は、第2次世界大戦末期の日本で必死に生き延びようとする、孤児の兄妹の物語だ。
映画の冒頭から結末は予告されている。独りぼっちの少年、清太は三宮駅で餓死する。所持品から清掃員が見つけたのは、ドロップ缶に入った少量の灰と骨のかけらだった。何の変哲もない缶は近くの野原に投げ捨てられ、空に向かった清太の魂は4歳の妹、節子の魂と再開する。
2人をホタルの群れが囲み、物語は始まる。「昭和20年9月21日夜、僕は死んだ」――清太の声による、耳に残るナレーションが入る。
ジブリ作品の一つではあるものの、「火垂るの墓」は一般的な子供向け映画とは全く違う。明るい気持ちにさせるそれまでの作品とは一線を画し、多くの人が観るのをためらうような悲惨な物語だ。しかし、映画評論家で歴史家の故ロジャー・イーバート氏は、「戦争映画として最も偉大な作品の一つ」だと称賛した。
2000年に書かれた批評で、イーバート氏は、「アニメ映画はその最初期から、子供たちや家族のための『漫画』だった。しかし、それらの映画が存在するのは安全地帯に限られ、涙は誘っても悲しみを味わせることはなかった。『火垂るの墓』による感情体験は、アニメに対する考えを変えさせるほど力強い」と述べた。
第2次世界大戦末期に激しさを増した米軍による空襲は、主人公たちが住む神戸も襲う。
戦争に悲劇は付き物だが、この映画が描く物語の力強さには、高畑監督自身の経験がかかわっている。戦争時に少年だった監督は、当時住んでいた岡山市で大規模な空襲に遭った。
細やかな描写と印象派的な効果によって、高畑監督は戦争が人々に与える影響をリアルによみがえらせている。
米国の編集者で、日本のマンガ・アニメ業界を論じた「Japanamerica(ジャパナメリカ)」の著者、ローランド・ケルツ氏は、「火垂るの墓」のワンシーンについて、非常に悲劇的ながら「心が奪われるような美しさ」があると話す。
ケルツ氏は、「漁師の集団が、湾の向こうで炎に包まれた神戸の街を見つめている。空をなめるように炎が上がるなか、漁師たちの後ろ姿が映し出される」と語る。「惨劇の静けさ。誰も動かないが、彼らの衝撃が伝わってくる。まさにシェルショック状態を表したシーンで、恐ろしいと同時にものすごく美しい」
戦争を生き延びるシンガポール国立大学・日本研究学科のリム・ベン・チュウ准教授は、「火垂るの墓」は現在でも色あせないどころか、重要性がこれまで以上に高まっていると指摘する。
リム氏は、「『火垂るの墓』が注目すべき映画なのは、さまざまなメッセージを含むなかで、命の大切さを強調している点が挙げられる。取り返しのつかない悲劇、戦争中の日本人が耐えなくてならなかった苦難を描いているが、観る人はなぜ第2次世界大戦が起きてしまったのかを自ら問う必要がある」と述べた。
「過去の日本の軍国主義を知ることも、映画中の出来事に対するより良い理解を助け、すべての戦争に対する一般的な人間感情を培う。それは将来の戦争を予防する、より効果的な方法になる」
前出のケルツ氏はこうも語っている。「『火垂るの墓』には、二義性や人生への後悔など豊かな物語性がある。その点だけで今も色あせていない。切羽詰った状況での英雄性や気高さの欠如の物語であり、その点では、ほぼアンチハリウッド映画だ」
「ハリウッド映画なら、困難なときにはヒーローが必要だと信じさせようとするだろう。高畑勲は反対の弱さを表現する。困難なときに最も必要なのは謙虚さ、忍耐、自己抑制だと。それによって生き延びられるのだと」
希望の象徴「火垂るの墓」は、ジブリ映画としては最も暗い映画の一つだと言われているかもしれないが、熱心なファンたちは、「不当な評価を受けている」とするこの作品や、作品から得られる身につまされる教訓について、議論に再び火をつけるのをやめなかった。発表から30年がたった今でも、議論は活発だ。多くの人々にとって、戦争が人々に与える影響は今も、人々から強い反応を生む。
YouTubeのユーザーのとある「火垂るの墓」ファンは、「アニメが過剰な表情や、性的なコンテンツ、陳腐な10代の恋愛ばかりだと思っている人は、『火垂るの墓』を観るといい。自分の間違いが完璧に証明されるだろう」とコメントしている。
米掲示板サイト「レディット」ユーザーのあるファンは、ホタルが象徴するものについて語っている。「ホタルには、主人公たちの街を焼いた焼夷(しょうい)弾と希望と忍耐力を表す二重の意味が込められていて、いつまでも心に残る映画の象徴になっている」。
ジブリのファンのレベッカ・リーさんはフェイスブックに、「トランプ政権が誕生し、世界中で多くの人がナショナリズムに染まるなかで、この映画の必要性はこれまでになく高まっている」と書いた。
「この映画は第2次世界大戦の隠喩で、2人の登場人物が死ぬというだけの映画ではない。『火垂るの墓』は、盲目的で反省のないナショナリズムや、それに従った人々の苦い結末について語っている。この映画は悲しいから傑作なのではなく、得られる教訓によって傑作になっている」》
(英語記事 Grave of the Fireflies: The haunting relevance of Studio Ghibli's darkest film)
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6279249
2018年1月3日水曜日
180101朝生元旦スペシャル 気になることを動画で伝える
朝生元旦スペシャル 気になることを動画で伝える
https://www.facebook.com/gomizeromirai/videos/1961707360536058/
1月1日 11:00 ·
1-5朝生元旦スペシャル 47分08秒
いきなり村本発言 沖縄を見捨てるな! 20180101
たった10分で沖縄終了、村本は、メディアの在り方を問題提起するも、話題からはずされた?
以下のリンクからも視聴できます
http://www.dailymotion.com/video/x6chfum
1-5朝生元旦スペシャル 47分08秒
https://www.facebook.com/gomizeromirai/videos/1961707360536058/
2-5朝生元旦スペシャル 1時間44秒
https://www.facebook.com/gomizeromirai/videos/1961910327182428/
3-5朝生元旦スペシャル 43分52秒
https://www.facebook.com/gomizeromirai/videos/1961957150511079/
http://www.dailymotion.com/video/x6chli3
4-5朝生元旦スペシャル 39分15秒
https://www.facebook.com/gomizeromirai/videos/1962178077155653/
5-5朝生元旦スペシャル 55分25秒
https://www.facebook.com/gomizeromirai/videos/1961797703860357/
http://www.dailymotion.com/video/x6chijc
なんで改憲しなきゃならない?村本頑張るも集中砲火!
憲法9条と自衛隊20180101
朝まで生テレビ!-今回のテーマ2017年12月31日(日)
深夜1:00~5:50
激論! “平成30年”日本の未来
ド~見る?!“平成”の世界と日本
ド~変わった?!世界と日本
そして、私たちはどこへ向かうのか…
ド~する?!米朝緊張と日本の安全
緊迫する米朝とニッポン!
ド~なる?!国民の安全
これでいいのか?!日本外交・安全保障
ド~なる?!憲法改正と自衛隊
ド~なる?!憲法9条
ド~なる?!戦後平和主義
番組開始から30回目の年越しに
いま、改めて問う“日本・日本人”
番 組 進 行:渡辺 宜嗣(テレビ朝日)
村上 祐子(テレビ朝日)
司 会:田原 総一朗
パネリスト:片山さつき(自民党・参議院議員)
長妻昭(立憲民主党・衆議院議員)
井上達夫(東京大学大学院教授)
落合陽一(筑波大学学長補佐・准教授、メディア・アーティスト)
猿田佐世(「新外交イニシアティブ」事務局長、弁護士)
瀬口清之(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹、元日銀北京事務所長)
津田大介(ジャーナリスト、メディア・アクティビスト)
中林美恵子(早稲田大学教授、元米連邦議会職員)
三浦瑠麗(国際政治学者、東京大学政策ビジョン研究センター講師)
村本大輔(お笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」)
森本敏(拓殖大学総長、防衛大臣政策参与)
李相哲(龍谷大学教授)
https://www.facebook.com/gomizeromirai/videos/1961707360536058/
1月1日 11:00 ·
1-5朝生元旦スペシャル 47分08秒
いきなり村本発言 沖縄を見捨てるな! 20180101
たった10分で沖縄終了、村本は、メディアの在り方を問題提起するも、話題からはずされた?
以下のリンクからも視聴できます
http://www.dailymotion.com/video/x6chfum
1-5朝生元旦スペシャル 47分08秒
https://www.facebook.com/gomizeromirai/videos/1961707360536058/
2-5朝生元旦スペシャル 1時間44秒
https://www.facebook.com/gomizeromirai/videos/1961910327182428/
3-5朝生元旦スペシャル 43分52秒
https://www.facebook.com/gomizeromirai/videos/1961957150511079/
http://www.dailymotion.com/video/x6chli3
4-5朝生元旦スペシャル 39分15秒
https://www.facebook.com/gomizeromirai/videos/1962178077155653/
5-5朝生元旦スペシャル 55分25秒
https://www.facebook.com/gomizeromirai/videos/1961797703860357/
http://www.dailymotion.com/video/x6chijc
なんで改憲しなきゃならない?村本頑張るも集中砲火!
憲法9条と自衛隊20180101
朝まで生テレビ!-今回のテーマ2017年12月31日(日)
深夜1:00~5:50
激論! “平成30年”日本の未来
ド~見る?!“平成”の世界と日本
ド~変わった?!世界と日本
そして、私たちはどこへ向かうのか…
ド~する?!米朝緊張と日本の安全
緊迫する米朝とニッポン!
ド~なる?!国民の安全
これでいいのか?!日本外交・安全保障
ド~なる?!憲法改正と自衛隊
ド~なる?!憲法9条
ド~なる?!戦後平和主義
番組開始から30回目の年越しに
いま、改めて問う“日本・日本人”
番 組 進 行:渡辺 宜嗣(テレビ朝日)
村上 祐子(テレビ朝日)
司 会:田原 総一朗
パネリスト:片山さつき(自民党・参議院議員)
長妻昭(立憲民主党・衆議院議員)
井上達夫(東京大学大学院教授)
落合陽一(筑波大学学長補佐・准教授、メディア・アーティスト)
猿田佐世(「新外交イニシアティブ」事務局長、弁護士)
瀬口清之(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹、元日銀北京事務所長)
津田大介(ジャーナリスト、メディア・アクティビスト)
中林美恵子(早稲田大学教授、元米連邦議会職員)
三浦瑠麗(国際政治学者、東京大学政策ビジョン研究センター講師)
村本大輔(お笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」)
森本敏(拓殖大学総長、防衛大臣政策参与)
李相哲(龍谷大学教授)
2018年1月2日火曜日
180101首相「タブーに挑み国民守る」櫻井よしこさん「日本の立ち位置は強力」
首相「タブーに挑み国民守る」 櫻井よしこさん「日本の立ち位置は強力」
平成30(2018)年を迎え、安倍晋三首相は、ジャーナリストの櫻井よしこさん、気象予報士の半井小絵さん、沖縄で活動を続ける我那覇真子さん、産経新聞政治部の田北真樹子記者の女性論客4人を首相公邸に招き、外交・安全保障や憲法改正などについて大いに語った。対談の模様は1月5日午後9時から、櫻井よしこさんが主宰するインターネット番組「言論テレビ」で放映される。
◇
櫻井 明けましておめでとうございます。
安倍 おめでとうございます。
櫻井 平成30年は本当に大事な年になります。安倍首相が政権を奪還して6年目に入り、国際社会における日本の立ち位置は非常に強力なものになりましたが、日本周辺の安全保障環境は非常に厳しいですね。そんな中、昨年秋の衆院選で自民党が大勝したことはよかったと思います。
安倍 昨年の衆院選には批判もありました。ですが、北朝鮮が「政策を変えるので話し合いたい」と言ってくる状況を作るため、国際社会が連携して圧力を強めなければならない。このことを世界に訴えていくには国民の信任を得ることが大切でした。
おかげで選挙後のアジア太平洋経済協力会議(APEC)や東アジア首脳会議(EAS)では各国首脳が私の主張に耳を傾けてくれた。国民から力を得て外交力を発揮することができたと実感しました。
櫻井 今ほど日本が国際社会で存在感を持ったことは過去にないのでは?
安倍 一番というほど傲慢(ごうまん)ではありませんが、長く政権が続いていることで、多くの首脳と胸襟を開いて話をできる関係になったことは大きいですね。
半井 首相はプーチン露大統領やトランプ米大統領ら癖のある外国首脳と親しいので「猛獣使い」とも呼ばれているそうですが、何かコツがあるんでしょうか。
安倍 自然体で対応しているんですけど(笑)。米国は日本が海外から攻撃されたとき、ともに戦ってくれる唯一の同盟国です。どなたが大統領になろうともしっかりと信頼関係を築くことは日本の首相の責任と言ってもよい。幸いトランプ大統領とはお互いに何でも言える関係を作ることができました。ゴルフを2回やって…。これは結構大きいんですよ。多忙な米大統領と半日くらいゆっくりと話ができる。相手の性格も分かりますしね。プーチン大統領とはもう20回会談をし、信頼を重ねていくことができました。
櫻井 いろんな首脳から、トランプ大統領について問い合わせの電話があると聞きましたが?
安倍 そういうことはあまりお話できませんが…。欧州連合(EU)との関係も今ほど緊密だったことはありません。昨年12月には日EUの経済連携協定(EPA)交渉が妥結しました。日本のGDPを1%押し上げると予測されており、アベノミクスに新たなエンジンができました。
櫻井 日本が中心となって価値観を共有する国々と連携できたことは素晴らしいと思います。
安倍 日本はルール作りがあまり得意ではなかっただけに、中心になれたのは大きいですね。
田北 北朝鮮情勢が緊迫化する中、安倍政権で安保法制や特定秘密保護法、テロ等準備罪を整備していて本当によかった。米国と関係強化する上で不可欠な法律だと思います。
安倍 日米関係は、日米史で今が最も強いと申し上げることができます。特定秘密保護法に反対の人たちは「映画が作れなくなる」と批判しましたが、作れなくなった映画があるんでしょうか。しっかりと秘密を守る仕組みができたので、米国から機微な情報を得ることができるようになりました。
また、安保法制により、米国とお互いに助け合うことができるようになりました。助け合えなければ信頼できませんよね。昨年は自衛艦が米艦の防護を初めて行いました。助け合いが可能になったので3つの米空母打撃群が日本海に入り、かつてない大規模な演習ができた。助け合える同盟が強いことを証明した実例だと思います。
我那覇 安倍政権はこれまでできなかったことを実現しました。首相が日本のタブー破りの先頭を切っていることで、言論空間の歪んだ沖縄にいる私も勇気をもらっています。次にやらねばならないタブー破りは何でしょうか?
安倍 日本を守るため、国民の命と暮らしを守るために何をやるべきかを真剣に考えること自体が、タブーの領域だったのでしょうね。これからも国民の命、そして日本を守るために必要な防衛力の姿を追求したいと思っています。
半井 北朝鮮による拉致問題でいえば、スパイ防止法にも踏み込んでいくお考えはありますか?
安倍 スパイ防止法を考えているわけでは全くありませんが、わが国を守るために必要なことをもっと率直に議論すべきではないかと思います。沖縄について一言。沖縄の米軍基地負担軽減を最も進めてきたと思っています。北部訓練場という本土復帰後最大の返還を成し遂げ、地位協定も環境と軍属に関する補足協定ができました。
普天間飛行場移設問題では空中給油機15機を山口・岩国基地に移駐しました。昨年は米軍ヘリから落下物がありました。あってはならないことです。普天間から辺野古に移れば、学校や民家の上で米軍機が飛行することはなくなります。
我那覇 マスコミは「オール沖縄で反基地だ」と報道しますが、私の住む名護市でも多くの人が米軍基地に理解を示しています。その証拠に沖縄県11市のうち9市は保守系市長なんですよ。
今日、初めて安倍首相とお会いしましたが、こんなに人相のよい、かっこいい首相が、沖縄の新聞ではいつも怖い顔で登場するんです。私たちは印象操作されてるなと思いまして。
安倍 …(苦笑)。
我那覇 政府と国民がマスコミに分断されているんです。お互いの素の顔を知るために何かをしなくてはいけないと思います。ぜひ本当の沖縄を見に来てください。
安倍 ありがとうございます。私も沖縄が大好きです。米軍基地については安全確保が第一だと何度も申し上げ、米側も努力しています。県民の皆さんのご理解が進むことを期待しています。
櫻井 首相に期待することには、拉致問題の解決もあります。
半井 私は「めぐみへの誓い-奪還-」という劇で拉致被害者の田口八重子さん役を演じています。八重子さんが飛行機のタラップから降りて兄の飯塚繁雄さんと抱き合う姿をぜひ見たい。拉致問題の進展はどうでしょうか。
安倍 拉致問題には初当選以来ずっと向き合ってきました。残念ながらまだ解決に近づくことができませんが、昨年はトランプ大統領が国連演説で米大統領として初めて拉致問題に言及しました。来日の際もご家族の皆さんや曽我ひとみさんと面談した。米国が拉致問題解決にコミットしたことを明確に示してくれたと思っています。
核・ミサイルだけでなく拉致問題も日米で一緒に取り組んでいきたい。そのためにも国際社会と連携して北朝鮮にしっかり圧力をかけていくことが大切なんです。昨年12月に採択された国連安保理の制裁決議では、石油精製品輸出の9割削減を決めました。北朝鮮の大使館がある国は次々に大使を追放しています。
櫻井 北朝鮮が話し合う方向に近づいているという感触はありますか?
安倍 1~2月をよくみていく必要があります。制裁が効いているという感触は、日本だけでなく米中両国や韓国も持っていると思います。
田北 仮に北朝鮮が対話路線に転じたとき、米中が日本抜きで対話することはあるのでしょうか?
安倍 北朝鮮が対話を求めるのが、どの国であっても国際社会が連携して対応することが大切です。日本は当事者です。拉致問題もあり、ノドンミサイルは日本を射程に入れています。日本抜きに話が進むことはあり得ません。
半井 トランプ大統領に拉致問題について説明されたのでしょうか。
安倍 一昨年11月に米ニューヨークのトランプタワーで初めて会った際に拉致問題を話しました。トランプ大統領だけでなく初めて会う首脳には必ず拉致問題を説明してきました。
我那覇 同じ日本人が拉致されても、目を向けない国民がいるというのは問題です。
安倍 大変根深い問題です。昭和52年に横田めぐみさんが拉致されましたが、当時、すでに別の拉致事件が起こっています。
櫻井 久米裕(ゆたか)さんですね。
安倍 はい。その時は犯人の目星がついていたんですが、処罰に至らなかった。当時はそういう状況だったんです。もし北朝鮮の犯行だと特定できていれば、めぐみさんは拉致されなかったと思います。実際、「北朝鮮は拉致していない」と主張する国会議員もたくさんいました。拉致問題に取り組む私に「変わった人だ」という視線は自民党にもありました。
安倍政権が6年目を迎える今も拉致問題を解決できていないのは痛恨の極みですが、政権の使命として解決のためにこれからも全力を傾けていきます。
櫻井 産経新聞が昭和55年1月に拉致問題を初めて報道しましたが、他の新聞社は報じませんでした。日本は自分たちがおとなしくしていれば他国が害を及ぼすことはないという考えに浸ってきたんでしょうが、国民の意識の変化はお感じになりますか。
安倍 随分理解は深まったと思いますが、まだ北朝鮮と話し合った方がいいという方はたくさんおられます。
櫻井 随分長く話しあってきましたよね。
安倍 北朝鮮と単なる話し合いをしても時間稼ぎに使われてしまうわけです。核開発計画を完全に放棄し、検証可能な形で不可逆的に廃棄していくことにコミットさせる。それを行動に示していくことが必要だと思っています。
半井 私は2~3年前まで政治にほとんど興味がなく、頭の中は「お花畑」だったんですが、それに気づいてやっぱり現実を見なきゃと思いまして。でも、まだ多くの国民は北朝鮮や中国の脅威という現実に目を向けていません。
安倍 中国は隣国であり、最大の貿易相手国です。日中が良好な関係を持つことは両国民にとって間違いなくプラスですし、日中関係は間違いなく改善しています。
その一方で中国が軍事力を拡張しているのも事実です。相当なスピードと言ってもいい。東シナ海や南シナ海では一方的な現状変更を試みています。
しかし、国際社会が共有するルールにのっとって対応することこそが中国が発展する道になると思います。そのためには日米同盟を基本として国際社会と連携しながら、中国が責任ある勢力として発展するよう促していくことが大切だと思っています。そして「自由で開かれたインド太平洋戦略」という私たちの考え方を国際社会に示していくことが大切だと思います。
共通の考え方を持つ日米豪印で連携していく態勢は整いつつあります。日豪は準同盟に近い関係になっています。自由、民主主義、基本的人権、法の支配という普遍的価値を共有する国々とともに、この地域を安定させていくことが、中国を含む地域の国々にとって間違いなくプラスになると思っています。
田北 首相は昨年5月3日、9条を堅持した上で自衛隊を明記する改憲案を提案しましたが、今後の展望をどう描いているのでしょうか?
安倍 櫻井さんのセミナーで憲法改正に関する私の考え方を述べさせていただきました。残念ながらこれまで憲法議論は進んでこなかったんですね。
自民党は党是である憲法改正を進めていく責任があります。過去5回の国政選挙で公約に掲げてきましたからね。私はまず一石を投じて議論を活性化させようと思いました。党内議論は活発化し、国民の皆さまにも野党にもご注目をいただいていると思います。
櫻井 あれはすごいくせ玉でしたからね。
安倍 政治は現実ですから、いくらやりたいと言っても改憲の発議には衆参でそれぞれ3分の2超の議員の賛成が必要です。相当高いハードルです。その後、国民投票というもっと高いハードルがあります。
では、国民の皆さんに賛成していただけるところはどこか。私はまず自衛隊の違憲論争に終止符を打つことではないかと思いました。自衛官が息子さんに「お父さん、憲法違反なの?」と言われたというんです。教科書に書いてありますからね。さぞショックだったかと思います。
櫻井 「命をかけて任務を遂行します」と宣誓して自衛官になる人たちは本当にそのように行動します。それなのに「憲法違反なの?」と子供さんに言われるのは本当に辛い。
安倍 朝日新聞の調査によると、憲法学者で自衛隊を合憲と言い切る方は2割ちょっとしかおらず、7割以上が違憲の可能性を完全に否定できないというのが現状です。こうした論争に終止符を打つことが私たちの世代の責任ではないでしょうか。
昨秋の衆院選では初めて4項目に絞って憲法改正したいと考えていることを表明しました。その結果、大勝させていただいたからには当然、党において議論を進めていただけるものと期待しています。
田北 自民党総裁としてどのようなスケジュールを描いているのですか。
安倍 スケジュールを含めて私がいま口を出すとややこしくなる危険性があるので…。国会が発議することなので党にお任せしたいと思っています。
我那覇 沖縄の一県民として「誰が沖縄を守ってくれるのか」と思います。選挙ではいつも基地問題が争点になり、本土の皆さんに「申し訳ありません」と言われるのですが、日本国の安全を沖縄が担っているんだから、むしろ国防を強化すべきです。
安倍 騒音や事故があるので基地を受け入れてくれている方々が負担を感じることは当然あると思います。ですが、もし日本が攻められたとき、自衛隊と米軍が共同対処して命をかけて沖縄を守っていく。このことはぜひご理解いただきたい。訓練は迷惑になることもありますが、それを受け入れてくれる人がいて初めていざというときに対応できるんです。
櫻井 首相がリーダーシップを発揮して平成30年を本当に実りある年にしていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。
半井 頼りにしております。
安倍 どうぞよろしくお願いします。ありがとうございました。
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櫻井よしこ(さくらい・よしこ)ハワイ大歴史学部卒。クリスチャン・サイエンス・モニター紙東京支局員、アジア新聞財団「DEPTH NEWS」東京支局長、日本テレビのニュースキャスターを経てフリージャーナリスト。国家基本問題研究所理事長。
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半井小絵(なからい・さえ)早稲田大院アジア太平洋研究科修了。平成13年に気象予報士となり、14年からNHKの気象キャスターを9年間担当する。特定非営利活動法人火山防災推進機構客員研究員。「真相深入り! 虎ノ門ニュース」コメンテーター。
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我那覇真子(がなは・まさこ)沖縄県名護市生まれ。高校時代に米国に交換留学。平成24年、早稲田大人間科学部卒。27年に国連人権理事会で翁長雄志沖縄県知事への反論スピーチを行った。「琉球新報、沖縄タイムスを正す県民・国民の会」代表運営委員長。
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田北真樹子(たきた・まきこ)米シアトル大コミュニケーション学部卒。平成8年に産経新聞社に入社。前橋支局などを経て12年から政治部。21~24年にニューデリー支局長。25年から「歴史戦」取材班で慰安婦問題などを取材。政治部首相官邸キャップ。
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この対談は、1月1日午後0時半から、ニッポン放送で放送されます。
180101しんぶん赤旗新春痛快対談 志位和夫 浜矩子
日本共産党しんぶん赤旗
2018年1月1日(月)
日曜版新年合併号 新春痛快対談
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2018-01-01/2018010101_01_0.html
市民が社会動かす時代
"おとな"の共産党に期待 同志社大学大学院教授 浜矩子さん
おおらかに力合わせましょう 日本共産党委員長 志位和夫さん
安倍政権への歯に衣(きぬ)着せぬ批評が評判の浜矩子さん(同志社大学大学院教授)と日本共産党の志位和夫委員長の2018年新春対談。総選挙結果と市民と野党の共闘、安倍晋三首相の政策批判から未来社会論まで大いに語り合いました。
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志位 あけまして、おめでとうございます。
浜 おめでとうございます。
志位 浜さんには、昨年の都議選、総選挙で何度も激励のメッセージをいただき、心から感謝を申し上げます。
浜 総選挙では安倍政権を追い込みましたね。多くのメディアは「自公勢力の圧勝・大勝」と報じましたが、不正確です。選挙前と比べ、わずかながら自公勢力は小さくなりました。安倍さんにとっては大誤算でした。「市民と立憲野党の共闘」から、立憲民主党が生まれたことも貴重です。彼らが野党第1党になり空気が変わりました。共産党の尽力で共闘体制ができたおかげです。
「グリーンモンスター」(小池百合子・希望の党前代表)が墓穴を掘ったこともあり、意外と楽しい選挙でした。(笑)
志位 私もだいたい同じような見方です(笑)。まず自公の「3分の2」は、いろんな仕掛けがあって、かろうじて拾ったものです。とくに小選挙区制です。自民党の比例代表での得票率は33%なのに61%の議席を得た。これは「虚構の多数」ですね。そして何と言っても希望の党の出現で野党共闘が分断されたことが、安倍さんの最大の「援軍」になった。安倍さんは小池百合子さんに足を向けて寝られないでしょう。(笑)
共産党が議席を減らしたのは大変残念です。私たちの力不足です。次は力をつけて絶対に勝とうと決意しています。
市民と野党の共闘では共産、立憲、社民の3野党と市民連合が政策合意を結んでたたかい、3野党全体では38議席から69議席に増えました。次につながる大事な成果を得たと思います。
浜 おっしゃる通りですね。共産党が議席を失われたのは痛恨でしょうし、その巻き返しは当然だと思います。ただ市民の目から見ると、あのときの共産党の対応が本当にありがたかった。自分のところはさておき、市民連合が「闇の軍団」=安倍自公政権と対峙(たいじ)することに全精力をあげてくれたことはとてもよかったです。
志位 そう評価していただきますと心強い限りで、感謝いたします。
「闇の軍団」の国会乗っ取り止めたことは共闘の成果
総選挙 共産党の貢献
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(写真)しい・かずお=1990年に書記局長、93年衆院選で初当選(衆院議員9期目)、2000年から幹部会委員長。著書に『戦争か平和か 歴史の岐路と日本共産党』、『綱領教室』全3巻(いずれも新日本出版社)など
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(写真)はま・のりこ=エコノミスト。三菱総合研究所初代英国駐在員事務所所長、同社政策・経済研究センター主席研究員などを経て2002年から現職。近著に『世界経済の「大激転」混迷の時代をどう生き抜くか』(PHPビジネス新書)、『どアホノミクスの断末魔』(角川新書)など
志位 今度の総選挙は、市民と野党の共闘が崩壊の危機にひんするという波乱にとんだ展開となりました。私たちの対応としては二つの点が大事だったと思っています。
第一は、解散の日(9月28日)に、希望の党に民進党が丸ごと合流するという動きになったその日に、私たちが二つのメッセージを発信したということです。
一つは「逆流と断固たたかう」ということです。希望の党は「自民党の補完勢力」だと批判し、“民進党候補が希望に行った場合は、共産党は候補者を立てる”と宣言しました。もう一つは「共闘を絶対にあきらめない」ことです。“共闘の立場に立つ方々とはしっかり連携する”と表明しました。
このメッセージは、全国の市民連合のみなさんとも響き合い、“希望の党に行っても希望はない”(笑)と民進党候補への説得が行われました。共闘の立場に立つ流れがうまれ、立憲民主党が結党されました。
第二は、共闘を再構築する過程で、私たちが安倍政権の暴走政治を許さないという大局にたって、67の小選挙区で候補者を降ろし共闘体制をつくる決断をしたことです。逆流を乗り越え共闘を前に進める貢献となったと思います。
浜 市民の目から見るともう絶対に巻き戻されたくない。この流れを崩さないように、共産党が“おとな”の大局観と視線をもってうまく運んでいってくれることをすごく期待しています。
立憲民主党は内部でもいろんなことがありながら、薄氷を踏むように歩んでいる感じがします。そこをうまく“おとな”が手引きをしてくれるという構図があるというのは安心感がありますね。
志位 あのときの対応は、日本政治の歴史的な分かれ道での、大局に立った決断でした。もし野党共闘つぶしが成功していれば、自公と希望の保守二大改憲推進勢力=「闇の軍団」で国会が乗っ取られてしまった。それを断固阻止するくさびをガンと打ち込んだ。これは、次につながる結果だと思います。
安倍流「働き方改革」は19世紀以前への時代逆行
おぞましい雇用大改悪
浜 次につなげるという点では、今度の通常国会で、おぞましい安倍流「働き方改革」が議論されていくことになります。どうつぶし、押し戻すのか。これから本当のたたかいになっていきます。
志位 そうですね。「働き方改革」といいますが、財界にとって都合のいい働かせ方を強要する―「働かせ方大改悪」が正体ですね。いくら働いても残業代を払わない「残業代ゼロ」法案をまた持ち出そうとしています。残業時間の上限規制を行うと言いながら、過労死ラインの月80時間~100時間という残業も合法化しようとしている。「同一労働同一賃金」と言いますが、実際に出そうとしている法案では、企業が能力や貢献度を判断して、「違いに応じた支給」を容認する方向であり、格差固定化を容認するものとなっています。
浜 まったくそうです。安倍政権の「働き方改革実行計画」には“同一労働同一賃金も長時間労働の是正も「労働生産性の向上」のためにやる”ということが明確に書いてあります。労働者の権利を実現するという視点はみじんもありません。
志位 とくに「残業代ゼロ制度」―「高度プロフェッショナル制度」は、労働時間規制の概念そのものを外してしまうもので、異次元の雇用ルールの破壊です。
浜 猛烈な時代逆行です。19世紀以前の働き方を「働き方改革」と称して実現しようとしています。
「残業代ゼロ制度」を正当化しようと彼らは“時間で制約をかけることは、労働者の能力を開花させることをじゃましている”という論理を持ち出していますね。これは19世紀にだされたマルクスの『資本論』で書かれている資本家の論理――“彼らの働く自由を奪ってはならない”と同じです。こんな論理を21世紀に平気で持ち出してくることに、がく然とします。
志位 おっしゃるように猛烈な時代逆行です。労働時間規制は19世紀のイギリスの工場法の10時間労働制から始まった。それが8時間労働制となり、労働者の権利を守る一番の要になってきました。資本家たちは労働時間規制に反対したけれど、導入してみたらイギリス資本主義に空前の繁栄の時代が訪れた。労働時間の短縮で労働者階級が健康を取り戻し元気になったからです。それが土台となり、空前の繁栄となったのです。逆にいえば、労働者の権利を切り縮めるようなことをやれば、資本主義社会そのものが成り立たなくなります。
浜 間違いなくそうですね。経団連と安倍政権は歴史から何も学んでいない気がします。「異次元金融緩和」とかお金の世界で悪さをしているだけでなく、今度は「人づくり革命」と称して人間にまで手をつけようとしている。「人づくり革命」と「生産性革命」を車の両輪にして、“一億総お国のための活躍社会”をつくろうとしている。許しがたく、絶対に押し戻していかなければと思います。
「規制緩和」で企業劣化
志位 企業の不祥事が続き、ついに経団連会長の出身企業・東レにまで品質管理の不正が起きました。なぜこうも不祥事が続くのか。その根本を考えると労働の「規制緩和」があります。いま働く人の3人に1人が非正規雇用で、女性と若者では2人に1人です。派遣や期間社員などの使い捨て労働が大企業の中枢でも横行しています。働く人を粗末にしたことが巡り巡って企業の首を絞め、劣化につながっているのです。
浜 その通りです。その流れに拍車をかけたのが、安倍政権の「稼ぐ力を取り戻す」という言い方です。労働者使い捨て型の経営を強化し、効率も生産性も上げ、安上がりに成果を出す方向に「企業統治」を構築せよ、と企業を追い立てています。そのなかで不正が起きています。「企業統治」とは本来は、企業が稼ぐことばかり考え、社会的な責任を忘れてはいけないという考えです。
志位 私は、「稼ぐ力」は、大企業は十分すぎるほどあると。(笑)
浜 そうです。あんなに内部留保を。稼ぎまくって。(笑)
政権がもたらす呼吸困難で日本経済は窒息死に陥る
志位 大企業の内部留保は400兆円を超えました。上場企業のトップ100社の有価証券報告書を調べてみますと、この4年間で利益を11兆円も増やしている。その配分について分析すると、50%が内部留保の積み増しに回り、44%が株主に回っていて、労働者にはたったの3%です。いくら「稼ぐ力」があっても労働者のところに回らない。長時間労働や不安定雇用で労働市場を荒廃させてしまったからです。
この巨額の内部留保をいかにして暮らしと経済に還元させるか。私たちは人間らしく働けるルールをつくるべきだと主張しています。残業時間に「週15時間、月45時間」といったきちんとした法的規制をかけ、非正規社員を正社員にする規制強化をはかり、大企業と中小企業の対等な取引ルールをつくっていく。そのことで、大企業に滞留している内部留保400兆円を働く人や中小企業に回るようにしていく。内需・消費が活発になり、経済の好循環が起こると思うんです。
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浜 いまの日本の状況をみると、私はこのままであれば、まさにおっしゃったようなメカニズムで、企業は本当は回すべきカネをため込むということをやり、稼ぐばかりで還元しない。政策がもたらす呼吸困難によって日本経済が窒息死に至る。そのプロセスに入っている気がしています。
株式市場をみれば、日本銀行が大多数の大企業の安定大株主になっている。日銀が許容する範囲でしか株価が動かない。こんなものは株式市場とは言いません。お金がまわる市場を、中央銀行の公的な介入で死に至らしめるのは、統制経済につながるファシズム体制です。資本主義としても民主主義としても許されません。まともに機能しない経済活動のしわ寄せは人びとの生活にきます。
志位 GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)と日本銀行のカネで株を買い支えて、主要な大企業の筆頭株主が日銀になっている。これは資本主義のメカニズムとしても…。
浜 絶対にありえないです。
志位 上場企業の大株主500人の保有株式時価総額をみると、この5年間で、9・9兆円から26・3兆円に2・7倍にもなっている。公的なカネで株価をつり上げ、富裕層はもうかったけど、庶民には何一ついいことはありません。
経団連の榊原定征(さだゆき)会長は、総選挙が終わった翌日、“自民党は安定多数をとったんだから国民に痛みを伴う改革をやれ”と、「社会保障改革」と「消費税増税」の号令をかけました。国民に対しては医療も介護も生活保護もすべて削って激痛を強いながら、自分たちはぬくぬくとお金をため込み、次から次へと不祥事を起こす。「痛みを伴う改革」は大企業の経営陣にこそ必要ですよ。
浜 まさにそうですよね。
グローバル時代の生き方を憲法はちゃんと書いている
21世紀に力持つ条文
浜 安倍首相が変えようとしている日本国憲法は、ものすごく最先端的で21世紀的なものだと思うんですね。憲法は21世紀のグローバル時代に、人々が共にどう生きるべきかを語ってくれています。とくに前文です。「日本国民は…諸国民との協和による成果と…」という一節の「協和」は、グローバル時代の生き方のキーワードです。
「日本国民は…平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」という一節には、相互信頼への深い確信があります。これがなければ、簡単にヒト・モノ・カネが国境を超える時代を共に生きていくことはできません。
もう一つ、面白いのが、「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」というフレーズです。これをだれに読ませるべきかは、みなさんすぐに分かりますよね。(笑)
グローバル化時代に企業はうまく対応できていません。必死に内部留保をため込んだり、人を安上がりにこき使ったりするのも「グローバル時代は、こうしないと勝ち組になれない」という視野狭窄(きょうさく)的な認識がもたらすパニック対応です。
しかし本来のグローバル時代の生き方はそうではない。だれも一人では生きていけない時代です。「お互いさま」「おかげさま」の関係で、支えあい、助け合う。そんなフレームをみんなでつくっていく時代なのです。
それが日本国憲法にはちゃんと書いてある。最先端なんです。それを「古い」「時代遅れだ」といって変えようとするのは信じられない。そういう言い方こそが、今の時代が見えていないのだと思います。
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志位 その通りですね。同じことは憲法9条にも言えると思います。9条には、「二度と戦争はしない」という決意だけでなく、「世界平和の先駆けになる」という意気込みが込められています。グローバルな広がりを持っていますよね。
浜 そうですね。
志位 世界をみると、紛争は平和的に解決するというのが、圧倒的な流れになっています。とくに注目している地域が二つあります。
一つは、東南アジアです。東南アジア諸国連合(ASEAN)が、東南アジア友好協力条約(TAC)を結び、平和の地域共同体をつくっている。TACは、どんなもめごとも話し合いで解決する、武力行使は絶対にダメという条約です。かつてはいろいろな戦乱があった地域ですが、いまでは「紛争を戦争にしない」という点で徹底しています。ASEANはTACを域外諸国とも結んで世界規模のネットワークをつくっている。これはまさに9条の精神と響きあう流れです。
もう一つは、ラテンアメリカです。ASEANと同じような中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)という平和の地域共同体の枠組みがあります。これも9条と精神は同じだと思います。
この二つの平和の地域共同体は、両方とも非核地帯になっています。「核兵器のない世界」をつくるという点でも、とても先進的なのです。
昨年、私は、2回ニューヨークに行き、国連本部で行われた核兵器禁止条約の交渉会議に参加しました。ここでも、核兵器禁止条約の採択にむけて、CELACとASEANは、非同盟諸国、欧州の中立国などとともに、大きな役割を果たしました。
世界では9条に響き合う流れが広がってきており、9条は時代の最先端をいっています。それなのに、この憲法を変えるというのは実に愚かです。絶対に許してはなりません。
浜 その通りですね。
安倍首相のトランプ米大統領追随は異様
日米首脳 危険な関係
志位 世界の動きで、私がたいへんに危険だと思っているのは、トランプ米大統領と安倍首相の2人の関係です。
トランプ氏は「アメリカ・ファースト」といいますが、これは他国に手を出さないということではありません。シリア攻撃を強行した。アフガニスタンへの米軍を増派した。エルサレムをイスラエルの首都と認定した。北朝鮮に対しても「すべての選択肢はテーブルの上にある」といって先制攻撃もありうると。「自国のために世界中に手を出す」ということなのです。
だから世界の首脳は、みんなトランプ氏と距離をもって付き合っています。メイ英首相もエルサレム首都認定では反対していますし、マクロン仏大統領もメルケル独首相も反対です。こんなときも安倍首相だけは一言も批判しない。北朝鮮問題で「すべての選択肢がテーブルにある」というトランプ氏を支持している首脳は、世界でも安倍首相だけだと思います。
浜 安倍さんには、「いうべきことをいう」という感性はないと思いますね。何をいうべきかもわかっていない。トランプ氏の「アメリカ・ファースト」は、おっしゃる通り、ちょっかい出すところには出すという構えを含むものです。完璧に自国のことのみに専念する。だから自国の利益貫徹を邪魔する者どもはやっつける。そういう発想ですね。そして安倍さんはというと、17年1月の施政方針演説で「世界の真ん中で輝く国創り」といいました。自分が世界の太陽になるのだというわけですよ。
志位 浜さんは、それを厳しく批判されていましたね。私は、浜さんの批判を読んで、ヒトラーが「世界の冠たるドイツ」といったことを思い出しました。
浜 そうですね。トランプ氏は、米国が居心地よく生きていけるのであれば、何を犠牲にしてもいいと。かたや安倍さんは、日本が「世界の真ん中で輝く国創り」。お互いに自分のことしか考えない者同士の相思相愛みたいなものです。いうべきことをいいながら、深い信頼で結ばれるのが本当の友情です。それにはおとなの知性と感性が必要ですが、この2人には、それがみじんもありません。
志位 本当にそう思います。私がいま一番心配しているのは、北朝鮮問題です。北朝鮮の核・ミサイル開発はもとより断固反対ですが、戦争だけは絶対に起こしてはなりません。ペリー元米国防長官は、核戦争になった際の被害は、韓国は朝鮮戦争の10倍に、日本は第2次世界大戦に匹敵すると警告しています。対話による平和解決が唯一の方策です。
ところが安倍首相は「すべての選択肢はテーブルの上にある」というトランプ氏を支持すると言い切っている。万一、トランプ大統領が先制攻撃の道を選んだら日本はどうなるのか。戦争法=安保法制を発動して、戦争をいっしょにやることになる。恐ろしいことです。甚大な犠牲が出ます。
浜 ほんとうにそうですよね。もう少しおとなになってもらわないと困ります。無理でしょうけど。
志位 トランプ氏は衝動的、無軌道に危険なことを言います。「北朝鮮を完全に破壊する」とか。ティラーソン米国務長官などからは、ともかく対話を探るというメッセージも出されている。そんなときでも安倍首相は一貫してトランプ氏をあおっている。たいへんに悪い役割を果たしていると思いますね。
浜 無責任ですよね。首相をやってはいけない人ですね。
志位 お引き取りを願うしかないです。
“状況は変えられる”目の当たりにした
市民と野党の共闘
浜 どうやって退陣していただくか。戦略を練るべきだと思います。市民との連帯、連合、共闘を盛り上げていくことがポイントだと思いますね。
志位 市民と野党の共闘には、すでに4年におよぶ歴史があります。最初は2014年の沖縄のたたかいです。「オール沖縄」という枠組みが初めてでき、名護市長選、知事選、総選挙で勝つことができました。知事選では自民党県連幹事長を務めたこともある翁長雄志さんを候補者にして、一緒にたたかいました。このとき翁長さんがおっしゃったのが「これからは保守は革新に敬意をもち、革新も保守に敬意をもち、力をあわせていきましょう」という言葉でした。感動しました。
15年1月の「党旗びらき」のあいさつで、“沖縄で起こったことは、全国で起こりうるという強い予感を抱きました”と話しました。この年に安保法制=戦争法案反対の空前の市民のたたかいが起こり、一人ひとりの市民が自由に声をあげて立ち上がりました。
浜 そうでしたね。
志位 労働組合の動員が中心だった60年安保闘争のときとも違った自発的な立ち上がりでした。その中で起きたのが「野党は共闘」のコールでした。そこで共産党もこれまでの方針を変えなければと考え、安保法制=戦争法が強行された15年9月19日に「戦争法(安保法制)廃止の国民連合政府をつくろう。そのために野党で選挙協力を行おう」と呼びかけました。この共闘は市民のたたかいが生み出したものなんです。
浜 そうですね。
志位 市民のたたかいが生み出した共闘ですから、進める力も市民のたたかいだと思います。とくに今は、安倍政権による9条改定を許さないという一点で空前のたたかいを起こすことが、共闘を進める一番の力になると思っています。
浜 あの安保法制のときに起きた動きが今、ぐっと広がっていますよね。「21世紀型市民革命」が起きているとつくづく思います。市民という言葉が持っている響きを体現した運動が全国津々浦々で、9条の会だとか実にたくさんあり、艱難(かんなん)辛苦の中、生き生きと活動されています。
志位 総選挙で希望の党が出てきたとき、そっちに行ってしまおうとする民進党の人たちを共闘の道に戻す力が働きました。これも2年間の共闘の積み重ねがあったからです。そこに自信をもって次につなげていきたいと思っています。
浜 この間の展開は“状況は変わるんだ”ということをはっきりしめしていますよね。良識ある人ほど「この閉塞(へいそく)的な現状は変えられないのでは」と思いがちですが、状況は変えられる。不可能は可能になる。奇跡は起こる。その一端を目の当たりにしているといっても過言ではないと思うんです。
志位 一緒に共闘をやるなかで、お互いに変わっていくというのが実感です。野党統一の候補で最初は「共闘」という言葉をいわなかった人も、当選後には「共闘の力で勝利できた」とおっしゃった方もいる。
浜 なるほど。
志位 共闘では、お互いに違いがあって当たり前です。しかし、たたかう中で、違いを違いとして認め合い、一致点で協力する、相手をリスペクト(尊重)する精神―おおらかな精神でやっていけば、前途は開けてくると思っています。
浜 「おおらか」というのは、すごく良い言葉ですね。トランプさんも安倍さんも、おおらかじゃない(笑)。おおらかに互いを認め合えるということは、ゆとりがあるということ。おとなだということでもあります。よい意味で、強き者たちです。一方、闇の軍団は基本的に臆病者の集団。怖くてしょうがないから、抑えにかかる。ある意味でかわいそうな人たちです。奇跡を担われているみなさんは、あらゆる場面でたくさんの奇跡を起こしていただきたいと思っています。
志位 共闘の問題で一つお話ししたいのは、これまでは共産党が、一部を除いて、一方的に候補者を降ろすという対応をしてきましたが、次の参院選ではあくまで相互推薦・相互支援の共闘をめざすということを決めました。そうしてこそ一番力が出る。共闘相手にもそこを乗り越えてほしいと思うんですね。
浜 その通りだと思います。うまく力がでる共闘には互恵性がとても重要です。お互いに恩恵を施し合える形をどう築き上げていくか。それが丈夫で長持ちの大原則だと思います。丈夫で長持ちスタイルに向けて共闘のあり方も進化する。これはとても重要なポイントだと思います。進化するから深化する共闘。これは素晴らしい。
志位 いま始まっている市民と野党の共闘は、日本の政治で初めてのものです。先ほどおっしゃられた「奇跡」を起こしながら、未踏の領域を切り開きたい。難しいことも起きてくるでしょうが、負けないで、おとなの対応で一歩一歩進んでいきたいと思っています。
「格差と貧困」深まる矛盾 世界に二つの潮流が生まれた
「99%の連帯」が大切
浜 「21世紀の市民革命」のテーマの一つとして格差と貧困の問題があると思います。米国では1%の富裕層が全米の富の4割を独占しています。日本は蓄積された富の大きさでみても、とてつもなく豊かな経済社会ですよね。そのなかで相対的貧困率は先進国とは思えない高さです。この「豊かさのなかの貧困」、富の偏在問題をどう解消していくのか、対応していかなければならないと思います。
志位 今の日本社会を分析してみると、富裕層に富が集中し、貧困層が拡大しているだけでなく、所得が500万~1千万円ぐらいの中間層も減っています。安倍政権の5年間で実質賃金は年間12万円も減り、1世帯当たりの家計消費も年間20万円も減った。中間層がどんどんやせ細り、疲弊していっているのが、今の日本社会です。
米国と一緒です。中間層の疲弊がはっきり出て、そのゆがみがトランプ大統領の誕生につながった。日本も同じような構造になってきていると思いますね。日本でも「99%」という結集はできると思うんです。
浜 そうですね。ご指摘のように、いまや日本にも「貧困の中の豊かさ」、つまり多数が貧困の中で一握りの人びとの豊かさが突出する姿に近づいているのだとすれば、確かに、結集がむしろやりやすくなってきているのかもしれない。ただそうであればあるほど、日本版トランプ大統領を産み落とすという方向にいかないようにしないと。疲弊する中間層がトランプ氏を産み落とした。日本でもそうした偽ポピュリズムの横行跋扈(ばっこ)や国粋主義への心酔の拡散が起きないようにするためには、どうするか。そこが切迫したテーマになってきますね。
志位 そのためにも「99%の連帯」が大切だと思うんです。米国ではトランプ氏が出てきたけど、「民主的社会主義者」を名乗るサンダース上院議員も大統領選挙で大健闘した。イギリスでも、ジェレミー・コービンさんという「社会主義者」を名乗る最左派の政治家がイギリス労働党の党首になった。スペインでは、「ポデモス」という左派系の新政党が躍進しています。ギリシャでは「シリザ」(急進左派連合)が政権についています。トランプ的な排外主義の流れと、本当の意味での人民主義の流れの両方が出てきています。後者との連帯を大いに強めたいと考えています。
浜 そうですね。そこに救いがある。その意味で日本においては、いままさに「市民と野党の共闘」が人間性を尊重する人本主義に向かう道を開いてくれるはずです。
志位 日本での共闘も人民の権利を守りたたかう国際的な流れの中にある。自らが担い手となって民主主義をつくっていく「参加型の民主主義」という世界の流れに大いに学んでいきたいですね。
浜さんは「真のコミュニズムを実現できれば、21世紀は打開の世紀となるかも」と書いてますね
未来社会を語り合う
志位 浜さんは「真のコミュニズムを実現させることができれば、21世紀は人類にとって打開の世紀となるかもしれない」(「東京」17年8月13日付)とお書きになっていますね。
私たちがめざす未来社会とは、生産手段を個々の資本家の手から社会の手に移すことで、生産の目的を「利潤第一」から「社会と人間の発展」に移す。この変革によって労働時間を抜本的に短縮し、すべての人間に自由で全面的な発展を保障する。各人が自由にできる時間を使い、自らの能力を全面的に開花させる。そのことによって社会全体がさらに力をえて発展し、ますます労働時間が短くなるという好循環が生まれる。マルクスは、未来社会について、「各人の自由な発展が、万人の自由な発展の条件であるような一つの結合社会」(『共産党宣言』)と言いましたが、この「自由な発展」が一番のカギなんです。
若い人にその話をすると「ぜひつくりたい」となります。長時間・使い捨て労働でひどい目にあっていますから。「人間の自由」「人間の解放」をとことん突き詰めたのが、「真のコミュニズム」だと私は思っているんです。
浜 そうですね。コミュニティー(共同体)とは本来そういうもののはずですよね。「魂の解放を得た人びとの共存の場所」であって、「解き放たれた知性が輝く場所」ということですね。
志位 浜さんがいうと文学的だ(笑)。コミュニティーもコミュニズムも語源はラテン語で「コムニス」(共同)。私はトーク集会で「コミュニティーセンターは直訳すると『共産センター』になる」と話しています。(笑)
浜 グローバリズム時代の本当の生き方ではないかと思います。それこそ「日本国憲法の前文には『真のコミュニズム』が語られている」と安倍首相にいってやったら、ビビるでしょうね。(笑)
2018年どう臨む
志位 浜さんの著書を読むと、言葉に非常に敏感で、批判的によく吟味されていて共感を覚えます。例えば「アベノミクス」という用語をはやらせてはいけないということで「アホノミクス」といわれてますね。“あれは経済学じゃない”とおっしゃりたいんだと思います。「戦争法」を「平和安全法制」といい、「共謀罪」も「テロ等準備罪」と言い換える。言葉を置き換えて国民を欺くのが彼らの特徴です。辞典を作ったらいいと思うんですよね。
浜 『アホノミクス用語辞典』(笑)
志位 浜さんは言葉の問題を敏感にズバッとつかみだし、批判する。みていて痛快です。私たちもそういう発信力をもっと身につけ、ごまかしを打ち破っていく必要があります。
浜 国会審議や討論会で政治家が使う言葉と論理の「品質」劣化が著しい。耳をふさぎたくなるレベルです。知性に裏打ちされた議論ができる中身をお持ちなのは、共産党だと思います。「品質」を管理する人には資格が必要です。“無資格者”がやってはいけない。共産党は資格を持った「品質管理責任者」として政治の知的だらしなさをせき止めてほしいですね。相手が相手ですから難しいことではありますが。(笑)
志位 政治の世界では、正確なファクト(事実)、ロジック(論理)、ワード(言葉)を使って、立場は違っても誠実な議論をするべきだと思います。小泉(純一郎元首相)さん以降、まともな議論が難しくなり、安倍さんになってますます困難を極めています。(笑)
浜 完全崩壊ですね。(笑)
志位 こちらが議論のレベルを下げれば国民の政治不信を招きます。「品質管理」をしっかりやって、日本の政治を良くしていくのが私たちの仕事だと思っています。
浜 私の今年の抱負は「アホノミクス」を一段と普及させ、「アベノミクス」という用語を人びとに忘れてもらうことですね(笑)。そして、安倍さんご本人も志位さんとの国会論戦で「アホノミクス」とポロッといってしまう(笑)。その実現をめざして頑張ります。(笑)
志位 もし安倍さんがそう答弁したら、いまその用語の頭には「ど」がついているんですよって、付け加えますよ。(笑)
浜 昨年は「市民と立憲野党の共闘」という言葉が生まれ、「市民」という概念が社会の前面に出てきた。今年はこの「市民」という言葉を掲げ、「21世紀の市民革命」がさらに広がり深まっていくことに、どう貢献できるかを追求していきたい。そして「アホノミクス」を徹底的にやっつけ倒していきます。(笑)
志位 今年は全国的選挙が想定されない年になると思います。私たちとしては、憲法9条改定を食い止め、国会発議を絶対に阻止する。そのためにも安倍9条改憲に反対する3000万人署名をやり遂げたい。「働かせ方大改悪」をはじめとする暮らし破壊の暴走を止め、日本の政治をまともな方向に切り替えるために、いろいろな分野でたたかいを発展させていきたいと思っています。
共産党自身の努力としては、「共産党が好きだから支持する」という積極的支持者を広げていきたい。私たちがめざしている未来社会を丁寧に伝えていきたいです。
浜 「真のコミュニズム」ですね。(笑)
志位 そうです(笑)。そうして19年の参院選と統一地方選で新しい躍進を勝ち取りたい。そのために頑張りたいと思います。ありがとうございました。
浜 ありがとうございました。
2018年1月1日(月)
日曜版新年合併号 新春痛快対談
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2018-01-01/2018010101_01_0.html
市民が社会動かす時代
"おとな"の共産党に期待 同志社大学大学院教授 浜矩子さん
おおらかに力合わせましょう 日本共産党委員長 志位和夫さん
安倍政権への歯に衣(きぬ)着せぬ批評が評判の浜矩子さん(同志社大学大学院教授)と日本共産党の志位和夫委員長の2018年新春対談。総選挙結果と市民と野党の共闘、安倍晋三首相の政策批判から未来社会論まで大いに語り合いました。
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志位 あけまして、おめでとうございます。
浜 おめでとうございます。
志位 浜さんには、昨年の都議選、総選挙で何度も激励のメッセージをいただき、心から感謝を申し上げます。
浜 総選挙では安倍政権を追い込みましたね。多くのメディアは「自公勢力の圧勝・大勝」と報じましたが、不正確です。選挙前と比べ、わずかながら自公勢力は小さくなりました。安倍さんにとっては大誤算でした。「市民と立憲野党の共闘」から、立憲民主党が生まれたことも貴重です。彼らが野党第1党になり空気が変わりました。共産党の尽力で共闘体制ができたおかげです。
「グリーンモンスター」(小池百合子・希望の党前代表)が墓穴を掘ったこともあり、意外と楽しい選挙でした。(笑)
志位 私もだいたい同じような見方です(笑)。まず自公の「3分の2」は、いろんな仕掛けがあって、かろうじて拾ったものです。とくに小選挙区制です。自民党の比例代表での得票率は33%なのに61%の議席を得た。これは「虚構の多数」ですね。そして何と言っても希望の党の出現で野党共闘が分断されたことが、安倍さんの最大の「援軍」になった。安倍さんは小池百合子さんに足を向けて寝られないでしょう。(笑)
共産党が議席を減らしたのは大変残念です。私たちの力不足です。次は力をつけて絶対に勝とうと決意しています。
市民と野党の共闘では共産、立憲、社民の3野党と市民連合が政策合意を結んでたたかい、3野党全体では38議席から69議席に増えました。次につながる大事な成果を得たと思います。
浜 おっしゃる通りですね。共産党が議席を失われたのは痛恨でしょうし、その巻き返しは当然だと思います。ただ市民の目から見ると、あのときの共産党の対応が本当にありがたかった。自分のところはさておき、市民連合が「闇の軍団」=安倍自公政権と対峙(たいじ)することに全精力をあげてくれたことはとてもよかったです。
志位 そう評価していただきますと心強い限りで、感謝いたします。
「闇の軍団」の国会乗っ取り止めたことは共闘の成果
総選挙 共産党の貢献
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(写真)しい・かずお=1990年に書記局長、93年衆院選で初当選(衆院議員9期目)、2000年から幹部会委員長。著書に『戦争か平和か 歴史の岐路と日本共産党』、『綱領教室』全3巻(いずれも新日本出版社)など
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(写真)はま・のりこ=エコノミスト。三菱総合研究所初代英国駐在員事務所所長、同社政策・経済研究センター主席研究員などを経て2002年から現職。近著に『世界経済の「大激転」混迷の時代をどう生き抜くか』(PHPビジネス新書)、『どアホノミクスの断末魔』(角川新書)など
志位 今度の総選挙は、市民と野党の共闘が崩壊の危機にひんするという波乱にとんだ展開となりました。私たちの対応としては二つの点が大事だったと思っています。
第一は、解散の日(9月28日)に、希望の党に民進党が丸ごと合流するという動きになったその日に、私たちが二つのメッセージを発信したということです。
一つは「逆流と断固たたかう」ということです。希望の党は「自民党の補完勢力」だと批判し、“民進党候補が希望に行った場合は、共産党は候補者を立てる”と宣言しました。もう一つは「共闘を絶対にあきらめない」ことです。“共闘の立場に立つ方々とはしっかり連携する”と表明しました。
このメッセージは、全国の市民連合のみなさんとも響き合い、“希望の党に行っても希望はない”(笑)と民進党候補への説得が行われました。共闘の立場に立つ流れがうまれ、立憲民主党が結党されました。
第二は、共闘を再構築する過程で、私たちが安倍政権の暴走政治を許さないという大局にたって、67の小選挙区で候補者を降ろし共闘体制をつくる決断をしたことです。逆流を乗り越え共闘を前に進める貢献となったと思います。
浜 市民の目から見るともう絶対に巻き戻されたくない。この流れを崩さないように、共産党が“おとな”の大局観と視線をもってうまく運んでいってくれることをすごく期待しています。
立憲民主党は内部でもいろんなことがありながら、薄氷を踏むように歩んでいる感じがします。そこをうまく“おとな”が手引きをしてくれるという構図があるというのは安心感がありますね。
志位 あのときの対応は、日本政治の歴史的な分かれ道での、大局に立った決断でした。もし野党共闘つぶしが成功していれば、自公と希望の保守二大改憲推進勢力=「闇の軍団」で国会が乗っ取られてしまった。それを断固阻止するくさびをガンと打ち込んだ。これは、次につながる結果だと思います。
安倍流「働き方改革」は19世紀以前への時代逆行
おぞましい雇用大改悪
浜 次につなげるという点では、今度の通常国会で、おぞましい安倍流「働き方改革」が議論されていくことになります。どうつぶし、押し戻すのか。これから本当のたたかいになっていきます。
志位 そうですね。「働き方改革」といいますが、財界にとって都合のいい働かせ方を強要する―「働かせ方大改悪」が正体ですね。いくら働いても残業代を払わない「残業代ゼロ」法案をまた持ち出そうとしています。残業時間の上限規制を行うと言いながら、過労死ラインの月80時間~100時間という残業も合法化しようとしている。「同一労働同一賃金」と言いますが、実際に出そうとしている法案では、企業が能力や貢献度を判断して、「違いに応じた支給」を容認する方向であり、格差固定化を容認するものとなっています。
浜 まったくそうです。安倍政権の「働き方改革実行計画」には“同一労働同一賃金も長時間労働の是正も「労働生産性の向上」のためにやる”ということが明確に書いてあります。労働者の権利を実現するという視点はみじんもありません。
志位 とくに「残業代ゼロ制度」―「高度プロフェッショナル制度」は、労働時間規制の概念そのものを外してしまうもので、異次元の雇用ルールの破壊です。
浜 猛烈な時代逆行です。19世紀以前の働き方を「働き方改革」と称して実現しようとしています。
「残業代ゼロ制度」を正当化しようと彼らは“時間で制約をかけることは、労働者の能力を開花させることをじゃましている”という論理を持ち出していますね。これは19世紀にだされたマルクスの『資本論』で書かれている資本家の論理――“彼らの働く自由を奪ってはならない”と同じです。こんな論理を21世紀に平気で持ち出してくることに、がく然とします。
志位 おっしゃるように猛烈な時代逆行です。労働時間規制は19世紀のイギリスの工場法の10時間労働制から始まった。それが8時間労働制となり、労働者の権利を守る一番の要になってきました。資本家たちは労働時間規制に反対したけれど、導入してみたらイギリス資本主義に空前の繁栄の時代が訪れた。労働時間の短縮で労働者階級が健康を取り戻し元気になったからです。それが土台となり、空前の繁栄となったのです。逆にいえば、労働者の権利を切り縮めるようなことをやれば、資本主義社会そのものが成り立たなくなります。
浜 間違いなくそうですね。経団連と安倍政権は歴史から何も学んでいない気がします。「異次元金融緩和」とかお金の世界で悪さをしているだけでなく、今度は「人づくり革命」と称して人間にまで手をつけようとしている。「人づくり革命」と「生産性革命」を車の両輪にして、“一億総お国のための活躍社会”をつくろうとしている。許しがたく、絶対に押し戻していかなければと思います。
「規制緩和」で企業劣化
志位 企業の不祥事が続き、ついに経団連会長の出身企業・東レにまで品質管理の不正が起きました。なぜこうも不祥事が続くのか。その根本を考えると労働の「規制緩和」があります。いま働く人の3人に1人が非正規雇用で、女性と若者では2人に1人です。派遣や期間社員などの使い捨て労働が大企業の中枢でも横行しています。働く人を粗末にしたことが巡り巡って企業の首を絞め、劣化につながっているのです。
浜 その通りです。その流れに拍車をかけたのが、安倍政権の「稼ぐ力を取り戻す」という言い方です。労働者使い捨て型の経営を強化し、効率も生産性も上げ、安上がりに成果を出す方向に「企業統治」を構築せよ、と企業を追い立てています。そのなかで不正が起きています。「企業統治」とは本来は、企業が稼ぐことばかり考え、社会的な責任を忘れてはいけないという考えです。
志位 私は、「稼ぐ力」は、大企業は十分すぎるほどあると。(笑)
浜 そうです。あんなに内部留保を。稼ぎまくって。(笑)
政権がもたらす呼吸困難で日本経済は窒息死に陥る
志位 大企業の内部留保は400兆円を超えました。上場企業のトップ100社の有価証券報告書を調べてみますと、この4年間で利益を11兆円も増やしている。その配分について分析すると、50%が内部留保の積み増しに回り、44%が株主に回っていて、労働者にはたったの3%です。いくら「稼ぐ力」があっても労働者のところに回らない。長時間労働や不安定雇用で労働市場を荒廃させてしまったからです。
この巨額の内部留保をいかにして暮らしと経済に還元させるか。私たちは人間らしく働けるルールをつくるべきだと主張しています。残業時間に「週15時間、月45時間」といったきちんとした法的規制をかけ、非正規社員を正社員にする規制強化をはかり、大企業と中小企業の対等な取引ルールをつくっていく。そのことで、大企業に滞留している内部留保400兆円を働く人や中小企業に回るようにしていく。内需・消費が活発になり、経済の好循環が起こると思うんです。
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浜 いまの日本の状況をみると、私はこのままであれば、まさにおっしゃったようなメカニズムで、企業は本当は回すべきカネをため込むということをやり、稼ぐばかりで還元しない。政策がもたらす呼吸困難によって日本経済が窒息死に至る。そのプロセスに入っている気がしています。
株式市場をみれば、日本銀行が大多数の大企業の安定大株主になっている。日銀が許容する範囲でしか株価が動かない。こんなものは株式市場とは言いません。お金がまわる市場を、中央銀行の公的な介入で死に至らしめるのは、統制経済につながるファシズム体制です。資本主義としても民主主義としても許されません。まともに機能しない経済活動のしわ寄せは人びとの生活にきます。
志位 GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)と日本銀行のカネで株を買い支えて、主要な大企業の筆頭株主が日銀になっている。これは資本主義のメカニズムとしても…。
浜 絶対にありえないです。
志位 上場企業の大株主500人の保有株式時価総額をみると、この5年間で、9・9兆円から26・3兆円に2・7倍にもなっている。公的なカネで株価をつり上げ、富裕層はもうかったけど、庶民には何一ついいことはありません。
経団連の榊原定征(さだゆき)会長は、総選挙が終わった翌日、“自民党は安定多数をとったんだから国民に痛みを伴う改革をやれ”と、「社会保障改革」と「消費税増税」の号令をかけました。国民に対しては医療も介護も生活保護もすべて削って激痛を強いながら、自分たちはぬくぬくとお金をため込み、次から次へと不祥事を起こす。「痛みを伴う改革」は大企業の経営陣にこそ必要ですよ。
浜 まさにそうですよね。
グローバル時代の生き方を憲法はちゃんと書いている
21世紀に力持つ条文
浜 安倍首相が変えようとしている日本国憲法は、ものすごく最先端的で21世紀的なものだと思うんですね。憲法は21世紀のグローバル時代に、人々が共にどう生きるべきかを語ってくれています。とくに前文です。「日本国民は…諸国民との協和による成果と…」という一節の「協和」は、グローバル時代の生き方のキーワードです。
「日本国民は…平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」という一節には、相互信頼への深い確信があります。これがなければ、簡単にヒト・モノ・カネが国境を超える時代を共に生きていくことはできません。
もう一つ、面白いのが、「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」というフレーズです。これをだれに読ませるべきかは、みなさんすぐに分かりますよね。(笑)
グローバル化時代に企業はうまく対応できていません。必死に内部留保をため込んだり、人を安上がりにこき使ったりするのも「グローバル時代は、こうしないと勝ち組になれない」という視野狭窄(きょうさく)的な認識がもたらすパニック対応です。
しかし本来のグローバル時代の生き方はそうではない。だれも一人では生きていけない時代です。「お互いさま」「おかげさま」の関係で、支えあい、助け合う。そんなフレームをみんなでつくっていく時代なのです。
それが日本国憲法にはちゃんと書いてある。最先端なんです。それを「古い」「時代遅れだ」といって変えようとするのは信じられない。そういう言い方こそが、今の時代が見えていないのだと思います。
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志位 その通りですね。同じことは憲法9条にも言えると思います。9条には、「二度と戦争はしない」という決意だけでなく、「世界平和の先駆けになる」という意気込みが込められています。グローバルな広がりを持っていますよね。
浜 そうですね。
志位 世界をみると、紛争は平和的に解決するというのが、圧倒的な流れになっています。とくに注目している地域が二つあります。
一つは、東南アジアです。東南アジア諸国連合(ASEAN)が、東南アジア友好協力条約(TAC)を結び、平和の地域共同体をつくっている。TACは、どんなもめごとも話し合いで解決する、武力行使は絶対にダメという条約です。かつてはいろいろな戦乱があった地域ですが、いまでは「紛争を戦争にしない」という点で徹底しています。ASEANはTACを域外諸国とも結んで世界規模のネットワークをつくっている。これはまさに9条の精神と響きあう流れです。
もう一つは、ラテンアメリカです。ASEANと同じような中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)という平和の地域共同体の枠組みがあります。これも9条と精神は同じだと思います。
この二つの平和の地域共同体は、両方とも非核地帯になっています。「核兵器のない世界」をつくるという点でも、とても先進的なのです。
昨年、私は、2回ニューヨークに行き、国連本部で行われた核兵器禁止条約の交渉会議に参加しました。ここでも、核兵器禁止条約の採択にむけて、CELACとASEANは、非同盟諸国、欧州の中立国などとともに、大きな役割を果たしました。
世界では9条に響き合う流れが広がってきており、9条は時代の最先端をいっています。それなのに、この憲法を変えるというのは実に愚かです。絶対に許してはなりません。
浜 その通りですね。
安倍首相のトランプ米大統領追随は異様
日米首脳 危険な関係
志位 世界の動きで、私がたいへんに危険だと思っているのは、トランプ米大統領と安倍首相の2人の関係です。
トランプ氏は「アメリカ・ファースト」といいますが、これは他国に手を出さないということではありません。シリア攻撃を強行した。アフガニスタンへの米軍を増派した。エルサレムをイスラエルの首都と認定した。北朝鮮に対しても「すべての選択肢はテーブルの上にある」といって先制攻撃もありうると。「自国のために世界中に手を出す」ということなのです。
だから世界の首脳は、みんなトランプ氏と距離をもって付き合っています。メイ英首相もエルサレム首都認定では反対していますし、マクロン仏大統領もメルケル独首相も反対です。こんなときも安倍首相だけは一言も批判しない。北朝鮮問題で「すべての選択肢がテーブルにある」というトランプ氏を支持している首脳は、世界でも安倍首相だけだと思います。
浜 安倍さんには、「いうべきことをいう」という感性はないと思いますね。何をいうべきかもわかっていない。トランプ氏の「アメリカ・ファースト」は、おっしゃる通り、ちょっかい出すところには出すという構えを含むものです。完璧に自国のことのみに専念する。だから自国の利益貫徹を邪魔する者どもはやっつける。そういう発想ですね。そして安倍さんはというと、17年1月の施政方針演説で「世界の真ん中で輝く国創り」といいました。自分が世界の太陽になるのだというわけですよ。
志位 浜さんは、それを厳しく批判されていましたね。私は、浜さんの批判を読んで、ヒトラーが「世界の冠たるドイツ」といったことを思い出しました。
浜 そうですね。トランプ氏は、米国が居心地よく生きていけるのであれば、何を犠牲にしてもいいと。かたや安倍さんは、日本が「世界の真ん中で輝く国創り」。お互いに自分のことしか考えない者同士の相思相愛みたいなものです。いうべきことをいいながら、深い信頼で結ばれるのが本当の友情です。それにはおとなの知性と感性が必要ですが、この2人には、それがみじんもありません。
志位 本当にそう思います。私がいま一番心配しているのは、北朝鮮問題です。北朝鮮の核・ミサイル開発はもとより断固反対ですが、戦争だけは絶対に起こしてはなりません。ペリー元米国防長官は、核戦争になった際の被害は、韓国は朝鮮戦争の10倍に、日本は第2次世界大戦に匹敵すると警告しています。対話による平和解決が唯一の方策です。
ところが安倍首相は「すべての選択肢はテーブルの上にある」というトランプ氏を支持すると言い切っている。万一、トランプ大統領が先制攻撃の道を選んだら日本はどうなるのか。戦争法=安保法制を発動して、戦争をいっしょにやることになる。恐ろしいことです。甚大な犠牲が出ます。
浜 ほんとうにそうですよね。もう少しおとなになってもらわないと困ります。無理でしょうけど。
志位 トランプ氏は衝動的、無軌道に危険なことを言います。「北朝鮮を完全に破壊する」とか。ティラーソン米国務長官などからは、ともかく対話を探るというメッセージも出されている。そんなときでも安倍首相は一貫してトランプ氏をあおっている。たいへんに悪い役割を果たしていると思いますね。
浜 無責任ですよね。首相をやってはいけない人ですね。
志位 お引き取りを願うしかないです。
“状況は変えられる”目の当たりにした
市民と野党の共闘
浜 どうやって退陣していただくか。戦略を練るべきだと思います。市民との連帯、連合、共闘を盛り上げていくことがポイントだと思いますね。
志位 市民と野党の共闘には、すでに4年におよぶ歴史があります。最初は2014年の沖縄のたたかいです。「オール沖縄」という枠組みが初めてでき、名護市長選、知事選、総選挙で勝つことができました。知事選では自民党県連幹事長を務めたこともある翁長雄志さんを候補者にして、一緒にたたかいました。このとき翁長さんがおっしゃったのが「これからは保守は革新に敬意をもち、革新も保守に敬意をもち、力をあわせていきましょう」という言葉でした。感動しました。
15年1月の「党旗びらき」のあいさつで、“沖縄で起こったことは、全国で起こりうるという強い予感を抱きました”と話しました。この年に安保法制=戦争法案反対の空前の市民のたたかいが起こり、一人ひとりの市民が自由に声をあげて立ち上がりました。
浜 そうでしたね。
志位 労働組合の動員が中心だった60年安保闘争のときとも違った自発的な立ち上がりでした。その中で起きたのが「野党は共闘」のコールでした。そこで共産党もこれまでの方針を変えなければと考え、安保法制=戦争法が強行された15年9月19日に「戦争法(安保法制)廃止の国民連合政府をつくろう。そのために野党で選挙協力を行おう」と呼びかけました。この共闘は市民のたたかいが生み出したものなんです。
浜 そうですね。
志位 市民のたたかいが生み出した共闘ですから、進める力も市民のたたかいだと思います。とくに今は、安倍政権による9条改定を許さないという一点で空前のたたかいを起こすことが、共闘を進める一番の力になると思っています。
浜 あの安保法制のときに起きた動きが今、ぐっと広がっていますよね。「21世紀型市民革命」が起きているとつくづく思います。市民という言葉が持っている響きを体現した運動が全国津々浦々で、9条の会だとか実にたくさんあり、艱難(かんなん)辛苦の中、生き生きと活動されています。
志位 総選挙で希望の党が出てきたとき、そっちに行ってしまおうとする民進党の人たちを共闘の道に戻す力が働きました。これも2年間の共闘の積み重ねがあったからです。そこに自信をもって次につなげていきたいと思っています。
浜 この間の展開は“状況は変わるんだ”ということをはっきりしめしていますよね。良識ある人ほど「この閉塞(へいそく)的な現状は変えられないのでは」と思いがちですが、状況は変えられる。不可能は可能になる。奇跡は起こる。その一端を目の当たりにしているといっても過言ではないと思うんです。
志位 一緒に共闘をやるなかで、お互いに変わっていくというのが実感です。野党統一の候補で最初は「共闘」という言葉をいわなかった人も、当選後には「共闘の力で勝利できた」とおっしゃった方もいる。
浜 なるほど。
志位 共闘では、お互いに違いがあって当たり前です。しかし、たたかう中で、違いを違いとして認め合い、一致点で協力する、相手をリスペクト(尊重)する精神―おおらかな精神でやっていけば、前途は開けてくると思っています。
浜 「おおらか」というのは、すごく良い言葉ですね。トランプさんも安倍さんも、おおらかじゃない(笑)。おおらかに互いを認め合えるということは、ゆとりがあるということ。おとなだということでもあります。よい意味で、強き者たちです。一方、闇の軍団は基本的に臆病者の集団。怖くてしょうがないから、抑えにかかる。ある意味でかわいそうな人たちです。奇跡を担われているみなさんは、あらゆる場面でたくさんの奇跡を起こしていただきたいと思っています。
志位 共闘の問題で一つお話ししたいのは、これまでは共産党が、一部を除いて、一方的に候補者を降ろすという対応をしてきましたが、次の参院選ではあくまで相互推薦・相互支援の共闘をめざすということを決めました。そうしてこそ一番力が出る。共闘相手にもそこを乗り越えてほしいと思うんですね。
浜 その通りだと思います。うまく力がでる共闘には互恵性がとても重要です。お互いに恩恵を施し合える形をどう築き上げていくか。それが丈夫で長持ちの大原則だと思います。丈夫で長持ちスタイルに向けて共闘のあり方も進化する。これはとても重要なポイントだと思います。進化するから深化する共闘。これは素晴らしい。
志位 いま始まっている市民と野党の共闘は、日本の政治で初めてのものです。先ほどおっしゃられた「奇跡」を起こしながら、未踏の領域を切り開きたい。難しいことも起きてくるでしょうが、負けないで、おとなの対応で一歩一歩進んでいきたいと思っています。
「格差と貧困」深まる矛盾 世界に二つの潮流が生まれた
「99%の連帯」が大切
浜 「21世紀の市民革命」のテーマの一つとして格差と貧困の問題があると思います。米国では1%の富裕層が全米の富の4割を独占しています。日本は蓄積された富の大きさでみても、とてつもなく豊かな経済社会ですよね。そのなかで相対的貧困率は先進国とは思えない高さです。この「豊かさのなかの貧困」、富の偏在問題をどう解消していくのか、対応していかなければならないと思います。
志位 今の日本社会を分析してみると、富裕層に富が集中し、貧困層が拡大しているだけでなく、所得が500万~1千万円ぐらいの中間層も減っています。安倍政権の5年間で実質賃金は年間12万円も減り、1世帯当たりの家計消費も年間20万円も減った。中間層がどんどんやせ細り、疲弊していっているのが、今の日本社会です。
米国と一緒です。中間層の疲弊がはっきり出て、そのゆがみがトランプ大統領の誕生につながった。日本も同じような構造になってきていると思いますね。日本でも「99%」という結集はできると思うんです。
浜 そうですね。ご指摘のように、いまや日本にも「貧困の中の豊かさ」、つまり多数が貧困の中で一握りの人びとの豊かさが突出する姿に近づいているのだとすれば、確かに、結集がむしろやりやすくなってきているのかもしれない。ただそうであればあるほど、日本版トランプ大統領を産み落とすという方向にいかないようにしないと。疲弊する中間層がトランプ氏を産み落とした。日本でもそうした偽ポピュリズムの横行跋扈(ばっこ)や国粋主義への心酔の拡散が起きないようにするためには、どうするか。そこが切迫したテーマになってきますね。
志位 そのためにも「99%の連帯」が大切だと思うんです。米国ではトランプ氏が出てきたけど、「民主的社会主義者」を名乗るサンダース上院議員も大統領選挙で大健闘した。イギリスでも、ジェレミー・コービンさんという「社会主義者」を名乗る最左派の政治家がイギリス労働党の党首になった。スペインでは、「ポデモス」という左派系の新政党が躍進しています。ギリシャでは「シリザ」(急進左派連合)が政権についています。トランプ的な排外主義の流れと、本当の意味での人民主義の流れの両方が出てきています。後者との連帯を大いに強めたいと考えています。
浜 そうですね。そこに救いがある。その意味で日本においては、いままさに「市民と野党の共闘」が人間性を尊重する人本主義に向かう道を開いてくれるはずです。
志位 日本での共闘も人民の権利を守りたたかう国際的な流れの中にある。自らが担い手となって民主主義をつくっていく「参加型の民主主義」という世界の流れに大いに学んでいきたいですね。
浜さんは「真のコミュニズムを実現できれば、21世紀は打開の世紀となるかも」と書いてますね
未来社会を語り合う
志位 浜さんは「真のコミュニズムを実現させることができれば、21世紀は人類にとって打開の世紀となるかもしれない」(「東京」17年8月13日付)とお書きになっていますね。
私たちがめざす未来社会とは、生産手段を個々の資本家の手から社会の手に移すことで、生産の目的を「利潤第一」から「社会と人間の発展」に移す。この変革によって労働時間を抜本的に短縮し、すべての人間に自由で全面的な発展を保障する。各人が自由にできる時間を使い、自らの能力を全面的に開花させる。そのことによって社会全体がさらに力をえて発展し、ますます労働時間が短くなるという好循環が生まれる。マルクスは、未来社会について、「各人の自由な発展が、万人の自由な発展の条件であるような一つの結合社会」(『共産党宣言』)と言いましたが、この「自由な発展」が一番のカギなんです。
若い人にその話をすると「ぜひつくりたい」となります。長時間・使い捨て労働でひどい目にあっていますから。「人間の自由」「人間の解放」をとことん突き詰めたのが、「真のコミュニズム」だと私は思っているんです。
浜 そうですね。コミュニティー(共同体)とは本来そういうもののはずですよね。「魂の解放を得た人びとの共存の場所」であって、「解き放たれた知性が輝く場所」ということですね。
志位 浜さんがいうと文学的だ(笑)。コミュニティーもコミュニズムも語源はラテン語で「コムニス」(共同)。私はトーク集会で「コミュニティーセンターは直訳すると『共産センター』になる」と話しています。(笑)
浜 グローバリズム時代の本当の生き方ではないかと思います。それこそ「日本国憲法の前文には『真のコミュニズム』が語られている」と安倍首相にいってやったら、ビビるでしょうね。(笑)
2018年どう臨む
志位 浜さんの著書を読むと、言葉に非常に敏感で、批判的によく吟味されていて共感を覚えます。例えば「アベノミクス」という用語をはやらせてはいけないということで「アホノミクス」といわれてますね。“あれは経済学じゃない”とおっしゃりたいんだと思います。「戦争法」を「平和安全法制」といい、「共謀罪」も「テロ等準備罪」と言い換える。言葉を置き換えて国民を欺くのが彼らの特徴です。辞典を作ったらいいと思うんですよね。
浜 『アホノミクス用語辞典』(笑)
志位 浜さんは言葉の問題を敏感にズバッとつかみだし、批判する。みていて痛快です。私たちもそういう発信力をもっと身につけ、ごまかしを打ち破っていく必要があります。
浜 国会審議や討論会で政治家が使う言葉と論理の「品質」劣化が著しい。耳をふさぎたくなるレベルです。知性に裏打ちされた議論ができる中身をお持ちなのは、共産党だと思います。「品質」を管理する人には資格が必要です。“無資格者”がやってはいけない。共産党は資格を持った「品質管理責任者」として政治の知的だらしなさをせき止めてほしいですね。相手が相手ですから難しいことではありますが。(笑)
志位 政治の世界では、正確なファクト(事実)、ロジック(論理)、ワード(言葉)を使って、立場は違っても誠実な議論をするべきだと思います。小泉(純一郎元首相)さん以降、まともな議論が難しくなり、安倍さんになってますます困難を極めています。(笑)
浜 完全崩壊ですね。(笑)
志位 こちらが議論のレベルを下げれば国民の政治不信を招きます。「品質管理」をしっかりやって、日本の政治を良くしていくのが私たちの仕事だと思っています。
浜 私の今年の抱負は「アホノミクス」を一段と普及させ、「アベノミクス」という用語を人びとに忘れてもらうことですね(笑)。そして、安倍さんご本人も志位さんとの国会論戦で「アホノミクス」とポロッといってしまう(笑)。その実現をめざして頑張ります。(笑)
志位 もし安倍さんがそう答弁したら、いまその用語の頭には「ど」がついているんですよって、付け加えますよ。(笑)
浜 昨年は「市民と立憲野党の共闘」という言葉が生まれ、「市民」という概念が社会の前面に出てきた。今年はこの「市民」という言葉を掲げ、「21世紀の市民革命」がさらに広がり深まっていくことに、どう貢献できるかを追求していきたい。そして「アホノミクス」を徹底的にやっつけ倒していきます。(笑)
志位 今年は全国的選挙が想定されない年になると思います。私たちとしては、憲法9条改定を食い止め、国会発議を絶対に阻止する。そのためにも安倍9条改憲に反対する3000万人署名をやり遂げたい。「働かせ方大改悪」をはじめとする暮らし破壊の暴走を止め、日本の政治をまともな方向に切り替えるために、いろいろな分野でたたかいを発展させていきたいと思っています。
共産党自身の努力としては、「共産党が好きだから支持する」という積極的支持者を広げていきたい。私たちがめざしている未来社会を丁寧に伝えていきたいです。
浜 「真のコミュニズム」ですね。(笑)
志位 そうです(笑)。そうして19年の参院選と統一地方選で新しい躍進を勝ち取りたい。そのために頑張りたいと思います。ありがとうございました。
浜 ありがとうございました。
2017年12月30日土曜日
枝野幸男"菅官房長を高く評価する理由"
枝野幸男"菅官房長を高く評価する理由"
「菅さんは歴代の3本の指に入る」
http://president.jp/articles/-/24078?display=b
野党第一党の党首となった枝野幸男氏の動向が注目されている。今年10月、総選挙投票日の20日前に民進党所属の枝野氏は、「立憲民主党」の設立を表明。小池百合子都知事率いる希望の党の惨敗を尻目に54議席を獲得。だが、国会では自民党とその他大勢という一強多弱の構図は同じ。立憲民主党の目指す道とは――。
「あれっと思ったのは結党の当日、10月3日です」
立憲民主党 代表 枝野幸男氏
――どなたが立憲民主党と命名されたのですか。
【枝野】私です。
――党名には、どういう思いがこもっているのでしょうか。
【枝野】立憲主義を守るというのが、結党の経緯で、重要な立ち位置・柱だと思いました。立憲主義があまりにも忘れ去られていることへの危機感が背景にあり、それで「立憲」という言葉を改めて掲げないと、という思いです。
――安倍政権では立憲主義がないがしろにされているという考えですか。
【枝野】明らかにないがしろにされていると思います。少なくともそれまで政府見解でも否定されていた集団的自衛権の解釈変更は、立憲主義で許されている範囲、憲法解釈の変更で許される範囲を超えている。立憲主義は憲法による権力の制約をしている。安倍政権では憲法に縛られている側(権力=政府)が自分を縛っている憲法の解釈を不合理に緩めたといえます。これでは縛っている意味がない。権力が権力たる正当性の根拠は、憲法で与えられており、その憲法を守らなければ、権力としての正当性がないということです。
――突然の結党で、準備不足だったと思います。選挙期間中に手ごたえを感じたのは、いつごろからですか。
【枝野】あれっと思ったのは、結党の当日、10月3日です。その前日に私1人で結党の記者会見をやり、翌朝、東京都の選挙管理委員会に総務省あての設立届を提出し、夕方、有楽町で初めての街頭演説をやりました。ほとんど準備も告知もしていないのに、たくさんの人が集まっていた。しかも幅広い層の人で、その熱がすごかったんです。僕はそのときに1番手ごたえを感じた。悲壮感でいっぱいだった記者会見から、頑張れば一定の結果を出せるという確信を持たせてくれました。
――選挙で多く支持された理由をどう分析していますか。
【枝野】国民の顕在化されていなかったニーズ――政治に対する不信・不満というものに応える、あるいは応えてくれるのではないかと期待される存在と、認めていたのではと思っています。
民進党などは政権を取ることが目的化しているかのように受け止められていたのだと思います。政党の合従連衡が繰り返される中で、それぞれの政党の主張、立ち位置があいまいになっていたのではないか。それに対して立憲民主党は明確な主張を掲げ、いわゆる野党同士の数合わせへのアンチテーゼの立ち位置にあると受け止められた。それが、国民の潜在的な期待に応えることにつながったと思っています。
「私は宏池会、石橋湛山の流れにある。“左派”ではない」
――立憲民主党の理念あるいは立ち位置を、再確認させてください。
(右)菅義偉官房長官(共同通信イメージズ=写真)
【枝野】1つ目は立憲主義を回復させる。2つ目は、いわゆる草の根の民主主義、まっとうな民主主義を取り戻す。民主主義とは、たまたま議会で多数派を取った者が、選挙民から白紙委任をされたことではないのです。個別のテーマになると、議会の多数派の意思と民意がずれるのはむしろ普通なのだから、しっかりとその草の根の声に耳を傾けて、政治を進めるべきです。3つ目は、トリクルダウン型(富裕層がさらに豊かになれば、しずくがこぼれ落ちて全体も豊かになるという考え方)の経済社会運営ではなくて、ボトムアップ型の経済再生を図る。
――立ち位置というと、どうしても右派、左派、あるいは中道という言い方のほうが、わかりやすい。そういう捉え方は古いのでしょうか。
【枝野】私は、そういう概念とは別次元に立っていると思っています。右か左かではなくて、上からか下からかというのが、国際的に見ても、21世紀の対立軸だと思います。
つまり、豊かなものをより豊かにしてトリクルダウンを起こすという考え方か、むしろ社会を下から支えて押し上げる。つまり、格差を小さくしていくことによって、消費も拡大していき、経済を成長させていくボトムアップ型かが、この対立軸だと思います。
――それならば「中道左派」みたいな言い方のほうが、わかりやすいのでは。
【枝野】日本における左派の定義は、国際的なものとは違うと思います。それに所得分配政策は、それこそ自民党の保守本流もやってきた。その分配政策に重要度を置くという意味では、私自身は宏池会(池田勇人元首相が設立した自民党の派閥)の思想的な流れにある。あるいは石橋湛山(第55代首相)の流れにあると、自分は思っています。彼らを左派とは言わないですよね。
――憲法改正論議が本格化します。これに対する基本的な姿勢は。
【枝野】憲法がいい方向に変わるのであって、なおかつ変える必要があるのであれば、それには積極的に取り組みます。悪く変わることに対しては、断固として戦います。少なくとも憲法第9条違反の法律をつくってそれを追認するようなことは、立憲主義論としてありえない。今の集団的自衛権の考え方は、自衛権行使の限界が不明確かつ広範にすぎる。したがって「立法論」としてもありえないという立場です。
自民と同じ「自衛力強化」「米軍との関係強化」
――国民の大多数が自衛隊の存在自体については認めていると思います。単純に自衛隊の存在を明記することにも反対ですか。
【枝野】単純に明記してしまうと、今回以上に解釈が変わります。例えば9条第3項に自衛隊なり自衛権を認めると書き込めば、1項、2項、ほとんど無効化します。したがって、フルスペックの集団的自衛権が可能になると解釈するのが、普通です。そもそもが、集団的自衛権の一部行使を認めているのですから、自衛隊を書き込めば少なくとも現状の安保法制を容認することになる。このように解釈によって、歯止めがきかなくなることが問題なのです。
――どうやって安全保障体制を構築するのか、それが伝わってきません。
【枝野】伝わらないのは当たり前で、大きく違わないからです。われわれも北朝鮮に対しては、対話以上に圧力が必要だし、万が一の場合に備えて、自衛力は強化すべきであると考えています。米軍との関係も強化すべきであると。これも自民党と変わりはなく、大きな方向性としては共通です。責任ある政党として、やみくもに与党に反対しているわけではありません。
――日米安保条約が日本の安全保障にとって軸になるとお考えですか。
【枝野】もちろんです。個別的自衛権の範囲内での自衛隊は合憲だし、日米安保は健全に強化すべきである。それが立憲民主の立場です。
――経済政策については、どのような施策をお考えですか。
【枝野】低賃金で人手不足の公的サービス分野に財政出動し、そのことによって賃金を引き上げる。2つ目、労働法制の規制を強化する。そのことによって格差の拡大防止と是正を図る。分配なくして成長なしです。
――賃金引き上げなどの財源は。
【枝野】当面は公共事業の予算を回せばいいんです。公共事業の財源である建設国債を減らし、赤字国債で財源を調達する。赤字国債なら、そういうところに予算を投じることができます。現状で緊縮政策は取れません。今の消費不況の状況で、財政支出の規模を小さくすれば、それこそ不況が深刻化します。緊縮財政が取れないということは、増税、とくに大衆増税はできない。それは緊縮財政と同じことですから。
――2019年10月実施予定の消費増税については、「凍結」という立場ですね。
【枝野】凍結の1番の理由は、今は消費不況であり、しかも心理的な要因がすごく大きい。消費税率を引き上げたら、必ず消費不況を加速させるからです。消費不況から脱却して、消費が着実に右肩上がりになるような状況をつくらなければ、消費税率は上げられない。それから、法人税を減税しておいて大衆増税するのでは、納税者の理解を得られない。おカネに色はなく、増税で財政的な余裕ができると、結局、社会保障以外の分野にも予算をと、無駄遣いへと戻っていく可能性がある。
「総理を守り支える」という意味で、有能な菅官房長官
――枝野代表は現場感覚があると評価されることがあります。民主党政権時代には、官房長官を務め、東日本大震災も経験された。そういう経験から出てきているんでしょうか。
【枝野】現場感覚、そうですかね。それは、私のキャラクターだと思います。イデオロギーとか、空理空論とかに一貫して関心がないので。
時事通信フォト=写真
――菅義偉官房長官はどう映りますか。
【枝野】総理を守り支えるという意味では、大変有能な、歴代稀に見る、3本の指に入る官房長官だと思います。それが日本にとって幸せかどうかというのはまた別ですが。
――官房長官の仕事の難しさとは。
【枝野】霞が関の調整や、政府与党の調整などの総合的な調整です。それは場合によっては強引に結論を押し付けなければならないこともあります。また、それで不満が前に噴き出しすぎては困るわけです。そういったことを目配りしながら、結論をしっかりと出していっているという意味で菅長官は大変有能な人だと思います。ただ支え、守る対象である安倍晋三首相の向かう方向が間違っていると思うので、せっかくの能力が生かされていないと思います。
――福島第一原発の事故の際、当時官房長官だった枝野さんが全然寝ていないとネットで騒がれました。官房長官とはそれほど大変な仕事なのですか。
【枝野】震災と原発事故のときは特殊な状況ですから、ちょっと比較ができる状況ではないです。ただ、霞が関を総合調整するときの、各役所の癖があるわけですよね。この役所はこういうことに弱いとか、この役所はこういうふうに自分たちの主張を通そうとしてくるとか、そういう感覚は、あのときに知りました。役所によって全然感覚が違うのです。だから、相手を読んで先手を打つことを覚えました。
――今回の新党の立ち上げという大きな決断の中で学ばれたことは。
【枝野】今回の出来事で言えば、結果論ですが、やはりぶれてはいけないということ、その1点です。筋を通すことが大事である一方で、政治は“妥協”でもある。みんなが自分の主張を押し通し続けていたら、何もまとまらないので、基本的には妥協の芸術なんですね。だが、許される妥協の範囲と、越えてはいけない線があって、越えてはいけない一線を越えたら、筋を曲げた、ぶれたということになる。そのラインを見極めるというのは、政治家にとってものすごく難しいが、ラインを越えることになると思ったときには、ぶれないでやってきたつもりです。
――立憲民主党は女性に多く支持されているように見えます。
【枝野】民主党以来の懸案を、今クリアできているんです。圧倒的に男性のほうの支持率が高かったのが、初めて女性のほうが高くなったんですよね。
枝野幸男(えだの・ゆきお)
立憲民主党 代表
1964年、宇都宮市生まれ。東北大学法学部卒業後、24歳で弁護士。29歳で政治家に転身し、衆議院議員に初当選(以後、当選9回)。中学、高校と合唱部に所属し、現在も趣味はカラオケ。双生児の男児の父親。
「菅さんは歴代の3本の指に入る」
http://president.jp/articles/-/24078?display=b
野党第一党の党首となった枝野幸男氏の動向が注目されている。今年10月、総選挙投票日の20日前に民進党所属の枝野氏は、「立憲民主党」の設立を表明。小池百合子都知事率いる希望の党の惨敗を尻目に54議席を獲得。だが、国会では自民党とその他大勢という一強多弱の構図は同じ。立憲民主党の目指す道とは――。
「あれっと思ったのは結党の当日、10月3日です」
立憲民主党 代表 枝野幸男氏
――どなたが立憲民主党と命名されたのですか。
【枝野】私です。
――党名には、どういう思いがこもっているのでしょうか。
【枝野】立憲主義を守るというのが、結党の経緯で、重要な立ち位置・柱だと思いました。立憲主義があまりにも忘れ去られていることへの危機感が背景にあり、それで「立憲」という言葉を改めて掲げないと、という思いです。
――安倍政権では立憲主義がないがしろにされているという考えですか。
【枝野】明らかにないがしろにされていると思います。少なくともそれまで政府見解でも否定されていた集団的自衛権の解釈変更は、立憲主義で許されている範囲、憲法解釈の変更で許される範囲を超えている。立憲主義は憲法による権力の制約をしている。安倍政権では憲法に縛られている側(権力=政府)が自分を縛っている憲法の解釈を不合理に緩めたといえます。これでは縛っている意味がない。権力が権力たる正当性の根拠は、憲法で与えられており、その憲法を守らなければ、権力としての正当性がないということです。
――突然の結党で、準備不足だったと思います。選挙期間中に手ごたえを感じたのは、いつごろからですか。
【枝野】あれっと思ったのは、結党の当日、10月3日です。その前日に私1人で結党の記者会見をやり、翌朝、東京都の選挙管理委員会に総務省あての設立届を提出し、夕方、有楽町で初めての街頭演説をやりました。ほとんど準備も告知もしていないのに、たくさんの人が集まっていた。しかも幅広い層の人で、その熱がすごかったんです。僕はそのときに1番手ごたえを感じた。悲壮感でいっぱいだった記者会見から、頑張れば一定の結果を出せるという確信を持たせてくれました。
――選挙で多く支持された理由をどう分析していますか。
【枝野】国民の顕在化されていなかったニーズ――政治に対する不信・不満というものに応える、あるいは応えてくれるのではないかと期待される存在と、認めていたのではと思っています。
民進党などは政権を取ることが目的化しているかのように受け止められていたのだと思います。政党の合従連衡が繰り返される中で、それぞれの政党の主張、立ち位置があいまいになっていたのではないか。それに対して立憲民主党は明確な主張を掲げ、いわゆる野党同士の数合わせへのアンチテーゼの立ち位置にあると受け止められた。それが、国民の潜在的な期待に応えることにつながったと思っています。
「私は宏池会、石橋湛山の流れにある。“左派”ではない」
――立憲民主党の理念あるいは立ち位置を、再確認させてください。
(右)菅義偉官房長官(共同通信イメージズ=写真)
【枝野】1つ目は立憲主義を回復させる。2つ目は、いわゆる草の根の民主主義、まっとうな民主主義を取り戻す。民主主義とは、たまたま議会で多数派を取った者が、選挙民から白紙委任をされたことではないのです。個別のテーマになると、議会の多数派の意思と民意がずれるのはむしろ普通なのだから、しっかりとその草の根の声に耳を傾けて、政治を進めるべきです。3つ目は、トリクルダウン型(富裕層がさらに豊かになれば、しずくがこぼれ落ちて全体も豊かになるという考え方)の経済社会運営ではなくて、ボトムアップ型の経済再生を図る。
――立ち位置というと、どうしても右派、左派、あるいは中道という言い方のほうが、わかりやすい。そういう捉え方は古いのでしょうか。
【枝野】私は、そういう概念とは別次元に立っていると思っています。右か左かではなくて、上からか下からかというのが、国際的に見ても、21世紀の対立軸だと思います。
つまり、豊かなものをより豊かにしてトリクルダウンを起こすという考え方か、むしろ社会を下から支えて押し上げる。つまり、格差を小さくしていくことによって、消費も拡大していき、経済を成長させていくボトムアップ型かが、この対立軸だと思います。
――それならば「中道左派」みたいな言い方のほうが、わかりやすいのでは。
【枝野】日本における左派の定義は、国際的なものとは違うと思います。それに所得分配政策は、それこそ自民党の保守本流もやってきた。その分配政策に重要度を置くという意味では、私自身は宏池会(池田勇人元首相が設立した自民党の派閥)の思想的な流れにある。あるいは石橋湛山(第55代首相)の流れにあると、自分は思っています。彼らを左派とは言わないですよね。
――憲法改正論議が本格化します。これに対する基本的な姿勢は。
【枝野】憲法がいい方向に変わるのであって、なおかつ変える必要があるのであれば、それには積極的に取り組みます。悪く変わることに対しては、断固として戦います。少なくとも憲法第9条違反の法律をつくってそれを追認するようなことは、立憲主義論としてありえない。今の集団的自衛権の考え方は、自衛権行使の限界が不明確かつ広範にすぎる。したがって「立法論」としてもありえないという立場です。
自民と同じ「自衛力強化」「米軍との関係強化」
――国民の大多数が自衛隊の存在自体については認めていると思います。単純に自衛隊の存在を明記することにも反対ですか。
【枝野】単純に明記してしまうと、今回以上に解釈が変わります。例えば9条第3項に自衛隊なり自衛権を認めると書き込めば、1項、2項、ほとんど無効化します。したがって、フルスペックの集団的自衛権が可能になると解釈するのが、普通です。そもそもが、集団的自衛権の一部行使を認めているのですから、自衛隊を書き込めば少なくとも現状の安保法制を容認することになる。このように解釈によって、歯止めがきかなくなることが問題なのです。
――どうやって安全保障体制を構築するのか、それが伝わってきません。
【枝野】伝わらないのは当たり前で、大きく違わないからです。われわれも北朝鮮に対しては、対話以上に圧力が必要だし、万が一の場合に備えて、自衛力は強化すべきであると考えています。米軍との関係も強化すべきであると。これも自民党と変わりはなく、大きな方向性としては共通です。責任ある政党として、やみくもに与党に反対しているわけではありません。
――日米安保条約が日本の安全保障にとって軸になるとお考えですか。
【枝野】もちろんです。個別的自衛権の範囲内での自衛隊は合憲だし、日米安保は健全に強化すべきである。それが立憲民主の立場です。
――経済政策については、どのような施策をお考えですか。
【枝野】低賃金で人手不足の公的サービス分野に財政出動し、そのことによって賃金を引き上げる。2つ目、労働法制の規制を強化する。そのことによって格差の拡大防止と是正を図る。分配なくして成長なしです。
――賃金引き上げなどの財源は。
【枝野】当面は公共事業の予算を回せばいいんです。公共事業の財源である建設国債を減らし、赤字国債で財源を調達する。赤字国債なら、そういうところに予算を投じることができます。現状で緊縮政策は取れません。今の消費不況の状況で、財政支出の規模を小さくすれば、それこそ不況が深刻化します。緊縮財政が取れないということは、増税、とくに大衆増税はできない。それは緊縮財政と同じことですから。
――2019年10月実施予定の消費増税については、「凍結」という立場ですね。
【枝野】凍結の1番の理由は、今は消費不況であり、しかも心理的な要因がすごく大きい。消費税率を引き上げたら、必ず消費不況を加速させるからです。消費不況から脱却して、消費が着実に右肩上がりになるような状況をつくらなければ、消費税率は上げられない。それから、法人税を減税しておいて大衆増税するのでは、納税者の理解を得られない。おカネに色はなく、増税で財政的な余裕ができると、結局、社会保障以外の分野にも予算をと、無駄遣いへと戻っていく可能性がある。
「総理を守り支える」という意味で、有能な菅官房長官
――枝野代表は現場感覚があると評価されることがあります。民主党政権時代には、官房長官を務め、東日本大震災も経験された。そういう経験から出てきているんでしょうか。
【枝野】現場感覚、そうですかね。それは、私のキャラクターだと思います。イデオロギーとか、空理空論とかに一貫して関心がないので。
時事通信フォト=写真
――菅義偉官房長官はどう映りますか。
【枝野】総理を守り支えるという意味では、大変有能な、歴代稀に見る、3本の指に入る官房長官だと思います。それが日本にとって幸せかどうかというのはまた別ですが。
――官房長官の仕事の難しさとは。
【枝野】霞が関の調整や、政府与党の調整などの総合的な調整です。それは場合によっては強引に結論を押し付けなければならないこともあります。また、それで不満が前に噴き出しすぎては困るわけです。そういったことを目配りしながら、結論をしっかりと出していっているという意味で菅長官は大変有能な人だと思います。ただ支え、守る対象である安倍晋三首相の向かう方向が間違っていると思うので、せっかくの能力が生かされていないと思います。
――福島第一原発の事故の際、当時官房長官だった枝野さんが全然寝ていないとネットで騒がれました。官房長官とはそれほど大変な仕事なのですか。
【枝野】震災と原発事故のときは特殊な状況ですから、ちょっと比較ができる状況ではないです。ただ、霞が関を総合調整するときの、各役所の癖があるわけですよね。この役所はこういうことに弱いとか、この役所はこういうふうに自分たちの主張を通そうとしてくるとか、そういう感覚は、あのときに知りました。役所によって全然感覚が違うのです。だから、相手を読んで先手を打つことを覚えました。
――今回の新党の立ち上げという大きな決断の中で学ばれたことは。
【枝野】今回の出来事で言えば、結果論ですが、やはりぶれてはいけないということ、その1点です。筋を通すことが大事である一方で、政治は“妥協”でもある。みんなが自分の主張を押し通し続けていたら、何もまとまらないので、基本的には妥協の芸術なんですね。だが、許される妥協の範囲と、越えてはいけない線があって、越えてはいけない一線を越えたら、筋を曲げた、ぶれたということになる。そのラインを見極めるというのは、政治家にとってものすごく難しいが、ラインを越えることになると思ったときには、ぶれないでやってきたつもりです。
――立憲民主党は女性に多く支持されているように見えます。
【枝野】民主党以来の懸案を、今クリアできているんです。圧倒的に男性のほうの支持率が高かったのが、初めて女性のほうが高くなったんですよね。
枝野幸男(えだの・ゆきお)
立憲民主党 代表
1964年、宇都宮市生まれ。東北大学法学部卒業後、24歳で弁護士。29歳で政治家に転身し、衆議院議員に初当選(以後、当選9回)。中学、高校と合唱部に所属し、現在も趣味はカラオケ。双生児の男児の父親。
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